遠隔医療の現在と在宅医療での立ち位置
遠隔医療という言葉も昔に比べるとよく聞くようになりました。へき地医療や医師不足で悩んでいる地域の方は遠隔医療に助けられていることが多いです。しかし、遠隔医療には昔から「医師法」に抵触するという見方がされていました。現在では様々な解釈のもと、遠隔医療が合法的になっています。在宅医療における遠隔医療がどのような立ち位置となるのか紹介していこうと思います。
- 遠隔医療の歴史と医師法
遠隔医療が初めて登場したのは1997年です。この年に厚生省健康政策局長通知として遠隔診療通知というのが出されました。1997年以前からも遠隔診療は行われていましたが医師や厚生労働省の職員たちの間には医師法に抵触していないかという問題があったのです。まずは遠隔医療でどのようなことが行われているのか紹介します。
▲遠隔医療の種類
遠隔医療と一言でいってもどのような形で医療サービスを提供しているのかで変わってきます。一般的な遠隔医療とはオンライン診療のことをいいます。テレビ電話やインターネット電話などを使用して、患者さんの顔・仕草などを見ながら医師が問診をします。必要に応じて患者さんに主訴となる部位を見せてもらうこともあります。他にはスマートフォンの普及に伴い、アプリで医療相談ができるものも増えてきています。医師が会員登録しており、ユーザーから投げかけられた質問に答えるというのが一般的です。もちろん血液検査や画像診断などはできないため主訴や現病歴から可能性のある疾患や緊急性の有無について答える形になっています。アプリを用いた医療相談に関しては遠隔医療かといわれれば医療ではないですが、医師が疾病に対して不安な気持ちを持っている人へアドバイスをするという意味では遠隔医療の枠組みの一つなのかもしれません。
遠隔医療は対象を誰にするかでも種類分けすることが可能です。例えば、専門医が総合医の診断をサポートすることは(Doctor to Doctor:D to D)と呼ばれています。その一方で、へき地医療などで遠方に住んでいる患者さんを診察することは(Doctor to Patient:D to P)と呼ばれています。
▲医師法と遠隔医療
医師に関する法律で医師法という法律があります。これは主に医師の仕事内容や身分を保証している法律ですが、その中にある一文があります。「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方箋を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。ただし、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りではない。」という医師法20条に記載されている内容です。医師は患者さんを診察しなければ治療ができないという法律なのですが、これが遠隔医療と関係してきます。遠隔医療は患者さんを「診察」しているのかという問題です。これに対して、厚生労働省としての解釈を公表したのが1997年に発表された厚生省健康政策局長通知でした。
診察とは従来、問診・視診・触診・聴診など様々な方法で行われることでしたが、現代医学の観点からすれば疾病の診断を下す際に使用することは全て診察となるという解釈だったのです。つまり、遠隔医療は診察に該当するという解釈となりました。ただし、留意点として初診や急患に対しては対面診療でなければいけないことや、どうしても医療機関の受診が難しい人にのみ提供することが望ましいという方針になっています。
▲遠隔医療を求められる地域
遠隔医療はどのような地域で求められるのでしょうか。基本的には医師不足で悩んでいる地域や専門的な治療をしたいけれど専門医がいない地域などで行われます。医師不足で悩んでいる地域とは、へき地や無医村と呼ばれる地域です。このような地域ではすぐに医師の診察を受けられないこともありますがオンライン診察ができる環境が整うと安心感が出ますよね。医療相談アプリでも同じことがいえます。医療をすぐに受診できない地域の人からすればすぐに相談できる環境があるだけでも安心できるのではないでしょうか。
- 遠隔医療のいま
遠隔医療は医師法で規定されている「無診察医療禁止」をクリアしているという解釈になりました。実際に遠隔医療を実施する施設数も増えているので施設数などについて紹介していきます。
▲遠隔医療実施施設数
2017年度現在で、遠隔放射線画像診断を実施している施設数は3710件・遠隔病理診断は560件・遠隔在宅医療は470件でした。この数字を見ると遠隔放射線の数が多いです。これはレントゲンやCT画像が電子化されてきており、データを介して画像の送受信ができるようになったのが大きいです。
▲遠隔医療でしていること
遠隔医療はテレビ電話などで会話をしながら遠く離れた場所でも医療を提供できることが強みでしたが、近年ではさらに様変わりしています。IoTという技術を使って患者さんの血圧をモニタリングしたり、スマートフォンなどを使用したオンライン診察があります。血圧のモニタリングに関しては、日々測定している数値を可視化できるため患者さんのモチベーション維持にも役立っています。
▲遠隔医療の問題点
遠隔医療が普及していくと便利なことが多いですがその反面、気をつけなければいけない問題点も浮き彫りになりました。遠隔医療を実施していく上で何を気をつけなければいけないのでしょうか。
■患者さんのプライバシー
オンラインを使った診察や画像・血液検査の結果など情報の授受では情報の漏洩に注意しなければいけません。例えば病院のパソコンをハッキングされて、検査結果が外部に盗まれてしまったということや、パソコンに入れて自宅へ持ち帰る途中でパソコンを電車の中へ忘れてしまいデータごとどこへいったのか分からなくなったなどの事例が起きないようにしなければいけません。紙カルテでこんなことが起きれば大問題です。電子カルテや電子データでも同様に情報の取り扱いには注意しなければいけません。
■医師の責任義務
オンライン診察をしていても医師には治療に対する責任があります。必要な検査・見なければいけない所見をオンライン診察だからという理由で見過ごしてしまってはいけません。オンライン診察には限界があることを患者さんと医師の両者が知っておく必要があります。
■医療の質を確保する
オンライン診察と比較すれば、対面式の診察の方が医療の質は高いです。実施したい検査はすぐにでき、レントゲン画像なども画質がそのままの状態で診断することができるからです。オンライン診察でも病院に準じた検査や診断ができますが、へき地・無医村問わずどこでも医療の質を一定にすることが求められています。
- 在宅医療における遠隔医療のあり方
在宅医療を受ける方の多くは病院へ通うことができない方です。寝たきりの方や車の運転ができない・医療機関までの距離が遠い方などが対象となっています。その中で遠隔医療はどのような立ち位置になるのでしょうか。
▲不安な方への安定剤
年齢を重ねるごとに自分の体調の変化に敏感になる方は増えます。しかし、何度も医師や看護師に来宅してもらうのは申し訳ないと感じている方へ遠隔医療としてのオンライン電話や医療相談アプリは有効になります。セカンドオピニオンとまではいかなくても、現在治療を受けている医師の治療方針と違う治療方針がないのかなどを知りたい方にも心を落ち着かせる「安定剤」のような立ち位置で遠隔医療を使っていただけます。
▲日頃の健康管理
血圧のモニタリングだけでなく、歩数計のデータも大きな枠組みで考えると遠隔医療といえます。このように日頃データとして見過ごしてしまうようなことを蓄積しておくだけで、健康管理につながるのではないでしょうか。血圧は日頃から測定しておくことで体調変化になった際、医師へ提示すると診断に役立ちます。
- 医療もオンラインの時代となっている
ここまで紹介してきたように遠隔医療も立派な医療支援サービスの一つとなっています。一昔前まではインターネットは恐ろしいところというイメージがあったかもしれませんが、今ではセキュリティを強化することで安全に使うことができます。特に在宅医療では遠隔医療を併用することで患者さんの満足度が上がるのではないでしょうか。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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