高齢者に多い低栄養の原因とは?リスクや対策についても解説

「最近、なんだか痩せてきている気がする」

「食事の量が減ってきて、食事が美味しくない」

そんなふうに感じている高齢者の方や、ご家族はいませんか?もしかすると、それは低栄養のサインかもしれません。

年齢を重ねると、食欲が減退したり、食べ物に対する興味が薄れることがあります。特に、一人暮らしや持病を抱えている高齢者の場合、気づかないうちに栄養が不足していることがあります。低栄養は、ただ体重や筋力が低下するだけでなく、さまざまな症状を引き起こす原因となります。

本記事では、高齢者が低栄養になってしまう原因や症状、そしてそのリスクと対策について詳しく解説します。

低栄養とは

食欲がない高齢者

低栄養とは、体が必要とするエネルギーや栄養素を十分に摂取できていない状態を指します。

特にタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが不足すると、身体の機能が低下し、免疫力が弱まります。特に高齢者の場合、この低栄養は健康状態を悪化させる大きなリスクとなります。日々の食生活の中で、気づかないうちに栄養が不足していることがあるため、注意が必要です。

日本では65歳以上の約5人に1人が低栄養の傾向にあると言われており、年齢が高くなるにつれて、その割合が高くなっています。[1] 

高齢者が低栄養になる主要な原因

食欲がなく低栄養になりかけている

高齢者が低栄養に陥る原因はさまざまで、複数の要因が重なり合っていることが一般的です。ここでは、主な原因を7つに分けて解説します。

1.食欲の低下

加齢に伴って食欲が減少するのは自然なことです。嗅覚や味覚が鈍くなり、食事から得られる満足感が減少します。

昔は美味しかったものが、「味気なく感じる」「食べても楽しさを感じない」といった変化が、食事量を減らす要因となることがあります。

2. 消化・吸収能力の低下

高齢者になると、胃腸の働きが鈍くなり、食べ物を効率的に消化・吸収する能力が低下します。

その結果、必要な栄養素が十分に体内に取り込まれず、栄養不足につながります。

3. 咀嚼・嚥下の問題

歯や口腔の健康状態が悪化すると、固い食べ物を噛むのが難しくなります。歯が抜けたり、入れ歯が合わなくなることで、咀嚼を困難に感じてしまうのです。

また、加齢に伴い嚥下機能が低下すると、飲み込みやすい食べ物ばかりを食べるようになります。こうした食べ物は栄養価が低い場合が多く、同じものを摂取し続けると、栄養バランスが偏ってしまうのです。

4. 経済的な不安

定年後の収入が減少し、経済的な不安から食費を抑えてしまうことがあります。安価な加工食品やインスタント食品に頼ることが増え、必要な栄養素が不足しがちです。

5. 社会的孤立

一人暮らしをしている高齢者の場合、家族や友人との交流が減ると、一人で食事をする機会が増え、食事の楽しみが減少します。

食事を作ることや食べることへのモチベーションが低くなり、栄養の摂取がおろそかになることがあります。

6. 持病や薬の影響

多くの高齢者は、複数の慢性疾患を抱えており、これらの治療に用いられる薬の副作用が食欲を減退させることがあります。

また、糖尿病や高血圧、腎臓病などを患っている場合、食事制限が必要となるため、栄養バランスを保つのが難しくなります。

7. 精神的な要因

高齢者の中には、うつ病や不安症などの精神的な問題を抱えている人が多くいます。

精神的な疲労や無気力感から、食事への関心を低下させ、料理をすることや食べること自体が負担となる場合があります。

このような精神的な問題も、低栄養の大きな原因の一つです。

低栄養の症状

低栄養により体重が減っている

低栄養はすぐには目に見えませんが、体に徐々に影響を与えます。以下のような症状が現れた場合、低栄養の可能性があるため、早急に対策を取る必要があります。

体重減少

年齢とともに筋肉や脂肪が減少し、体重減少が見られます。特に短期間での体重減少は注意が必要です。

目安として、1年間で4.5kg以上または半年で3kg以上体重が減っていたら要注意です。

筋力低下

栄養不足は筋力の低下を引き起こし、特に高齢者にとっては深刻です。

筋力が衰えると、立ち上がりが大変になり、歩行でのふらつきも生じやすくなるため、転倒のリスクも高くなります。

疲労感・倦怠感

疲れやすく、何をするにもやる気が出ず、活動的でない生活を送るようになるため、さらに栄養が不足する悪循環に陥ることがあります。

免疫力の低下

栄養不足は免疫力の低下を引き起こし、風邪や感染症にかかりやすくなります。

高齢者の場合、特に肺炎やインフルエンザなどが重症化しやすいため、低栄養が原因で病気のリスクが高まるのは深刻な問題です。

皮膚のトラブル

低栄養は肌にも悪影響を及ぼします。肌が乾燥して荒れやすくなったり、傷が治りにくくなります。

特にビタミンやミネラルが不足すると、これらの症状が顕著に現れ、外見にも変化が見られます。

貧血

鉄分やビタミンB12の不足により、貧血が発生しやすくなります。

貧血になると顔色が悪くなり、息切れや動悸などの症状が見られ、高齢者になると、体力や免疫力のさらなる低下を引き起こす可能性もあります。

高齢者が低栄養になるとリスクも大きい

低栄養により体調が悪い高齢者

高齢者が低栄養状態になると、さまざまな健康リスクが高まります。

感染症になりやすくなる

免疫力が低下することで、肺炎や尿路感染症などの重篤な感染症にかかるリスクが高まります。

転倒や骨折のリスク増加

筋肉量が減少し、体のバランスが崩れやすくなるため、転倒しやすくなります。また、骨密度の低下により、転倒した場合に骨折しやすくなります。

高齢者の場合、一度の骨折から寝たきりになってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

浮腫(むくみ)が起きやすくなる

低栄養状態が続くと、体内のタンパク質や他の栄養素が不足し、浸透圧のバランスが崩れて、浮腫(むくみ)が生じやすくなります。

特に、足や足首、顔などにむくみが見られることが多く、これは体内の水分調整機能がうまく働かなくなるためです。

〈関連記事〉高齢者の浮腫(むくみ)の原因は?改善・予防する方法まで解説

褥瘡(床ずれ)の発生

長時間同じ姿勢でいると、皮膚に圧力がかかり、褥瘡(床ずれ)が発生しやすくなります。低栄養状態では傷の治りも遅くなります。

認知機能の低下

脳への栄養供給が不足すると、記憶力や判断力が低下し、認知症の進行が早まる可能性があります。

生活の質の低下

低栄養が原因で、体力や気力が低下し、日常生活の自立が困難になることがあります。結果として介護が必要になり、生活の質が大きく低下するリスクがあります。

これらの症状が見られる場合、早めに医師に相談するのも大切です。

わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に1都831箇所20247月現在)に訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。

低栄養にならないようにするための対策

低栄養にならないために、バランスの良い食事をしている

では、低栄養を防ぐためにはどのような対策が必要でしょうか。

バランスの良い食事を心がける

主食、主菜、副菜をバランスよく摂取し、たんぱく質やビタミン、ミネラルを十分に取り入れましょう。魚や肉、豆類、野菜、果物を積極的に食べることが大切です。

食べやすい形状にする

噛む力が弱い場合は、柔らかく調理したり、小さく切ったり、ペースト状にするなどの工夫をします。

今は配食サービスで、さまざまな食形態のものがあるため、検討してみるのも良いでしょう

少量多頻度の食事

一度に十分な量を食べられない場合は、1回の食事量を減らして、食事の回数を増やすことも考えてみてください。

口腔環境の改善

歯の健康状態の悪化や、入れ歯が合わないと食事にも影響を与えます。歯医者での定期的な口腔ケアや入れ歯の調整をすることで、口内環境の改善を図りましょう。

社会的な交流を増やす

家族や友人との食事の機会を増やし、食事を楽しむ環境を作りましょう。

可能であれば、地域活動に参加するのもおすすめです。一人で動くのが難しい場合でも、デイサービスやデイケアなどの介護保険サービスを利用すれば、社会的な交流を持つことができます。

〈関連記事〉デイケアを利用する目的とは?|〇〇な人におすすめ!

適度な運動

筋力維持のために、無理のない範囲での運動を取り入れましょう。これにより食欲増進や消化機能の改善も期待できます。

ただし、十分な食事を摂っていない状態で運動をしすぎると、体重が減少してしまう恐れがあります。まずは栄養をしっかり摂ってから運動をするよう心がけてください。

メンタルヘルスケア

うつ病や不安症などの精神的な問題によって、食事への関心が薄れ、低栄養になることがあります。精神的な問題が見られる場合は、専門家に相談し、適切な対応を取りましょう。

食事環境を整える

楽しみながら美味しい食事をするためには、環境を整えることも重要です。明るく快適な食卓や、食事に集中できる環境を作りましょう。

専門家への相談

急激な体重減少や、食事が摂れない状態が続く場合には、専門家に相談することを考えましょう。場合によっては、薬の副作用や他の病気が原因となっている可能性もあります。

〈関連記事〉高齢者の体重減少への対策5選|元気で食べているのに痩せる原因や体重を増やす具体的な方法を解説

まとめ

家族で楽しく栄養のある食事を摂っている

高齢者の低栄養は、さまざまな原因が重なり合って生じる問題です。しかし、バランスの良い食事や食事回数を見直すことで、改善が期待できます。

まずは、日々の食事を楽しみながらバランス良く栄養を摂取することを目指しましょう。必要に応じて介護保険サービスの利用や、専門家のアドバイスも活用してください。

わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に1都831箇所20247月現在)に訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。

〈参考文献〉

[1]厚生労働省  地域高齢者等を取り巻く 食環境の状況等について
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/index.html