認知症による問題行動とは?それぞれの種類やご家族のための対処法を解説

「急に怒り出したり、話が通じないことが増えた」

「最近、問題行動が多くなってきた」

高齢の家族に見られるこうした変化は、認知症による「問題行動」かもしれません。認知症の進行に伴って、本人も家族も戸惑うような行動が見られることがあります。しかし、こうした問題行動には、認知症が引き起こす不安や混乱が影響しているため、家族だけで対処するのが難しい場合も少なくありません。

本記事では、認知症の問題行動の特徴や対処法について解説します。大切な人のために、少しでも穏やかで安心できる生活環境を整えるためにも、ぜひ参考にしてください。

認知症の「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」とは

認知症高齢者に中核症状が見られている

認知症には「中核症状」と「周辺症状」と呼ばれる2種類の症状があり、「周辺症状」はBPSDとも呼ばれます。

中核症状とは、脳の認知機能そのものの障害を指し、すべての認知症の方に見られる基本的な症状で、周辺症状は認知症の進行や環境・性格が影響して起こる精神的な症状や行動の変化で、周囲から「問題行動」と見なされることが多いものです。

中核症状と周辺症状について、それぞれの特徴を説明していきます。

認知症の中核症状

中核症状は、脳の変化による直接的な影響であり、認知症全般に見られる基本的な症状です。

具体的には以下のような症状が挙げられます。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 失語
  • 失行

これらの症状により生じた混乱や不安が「周辺症状」を生むきっかけとなり、これが結果として問題行動に繋がることが多いです。

認知症の周辺症状

周辺症状は、認知症による中核症状に周囲の環境や本人の性格が影響して起こる二次的な症状です。不安や混乱が引き金となって生じることが多く、家族や介護者にとって「問題行動」と見なされることもあります。

中核症状は全員に現れやすい症状ですが、周辺症状は個々による違いが大きく、認知症を発症しても必ずしも全員が問題行動をとるわけではなく、症状の現れ方や程度は人によって異なります。

問題行動が見られてお悩みの場合には、医師や近くのケアマネジャーに相談するのが良いでしょう。

もっと詳しく中核症状と周辺症状の違いについてはこちらの記事を御覧ください。

〈参考記事〉認知症で見られる周辺症状って何?中核症状との違いも解説

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問題行動をとる認知症の方に接する上での考え方

問題行動をする認知症高齢者に対してコミュニケーションをとっている

認知症の方が問題行動をとるのは不安や混乱など、何かしらの理由があるとされています。

まずは認知症の方の不安や混乱を取り除くための大切な考え方をご紹介します。

本人の気持ちに寄り添う

認知症の問題行動には、本人の不安や混乱が背景にあるケースが多くあります。

「自分の居場所が分からない」「なぜ介護が必要か分からない」といった不安が影響して問題行動に繋がっているのです。

このような時には、本人がどのような気持ちでいるのかを尊重し、不安を和らげる声かけを意識することが大切です。

自己肯定感を高める

認知症が進むと、「できないこと」が増えるため、自己肯定感が低くなりがちです。

そこで、簡単な作業や役割をお願いして、「ありがとう」「助かったよ」と伝えると、自信が持てるようになります。

こうした声かけや感謝の表現で「できること」に意識を向けてもらうと、穏やかな気持ちで過ごしてもらいやすくなります。

本人に合った環境調整をする

周囲の環境を整えることで、認知症の問題行動が軽減することがあります。

例えば、安心して過ごせるように家の中の目印を増やしたり、わかりやすい環境を作ってあげることで、不安や混乱は生じにくくなります。

本人が落ち着く環境を作ることが非常に大切です。

認知症の問題行動とその対応

問題行動をする高齢者に付き添う家族

ここからは、問題行動の具体的な例と対処法を解説していきます。

徘徊

「徘徊」は、目的もなくうろうろと歩き回ったり、自宅や施設から出て行ってしまう行動を指します。

認知症の方にとっては理由や目的があるものの、記憶障害や見当識障害により、どこにいるのかわからなくなったり、家に帰ろうとして迷子になったりすることがあります。徘徊は事故や行方不明のリスクがあるため、適切な対応が必要です。

「徘徊」の対処法としては以下のようなものがあります。

  • 本人の気持ちに寄り添い理由を聞く
  • 日中の活動量を増やし、適度な運動を取り入れる
  • 生活リズムを整える
  • 趣味や役割を持ってもらい、居場所づくりをする
  • GPSなどの機器を活用し、位置情報を把握する
  • 玄関にセンサーを設置して、外出を察知できるようにする
  • 地域や近隣の人々と連携し、見守り体制を整える

徘徊は問題行動の中でも特に大きな問題になることがあります。徘徊対策についてもっと具体的に書かれた記事もありますので、お困りの方はこちらも参考にしてみてください。

〈参考記事〉認知症の徘徊対策5選|外出したがるのを放置できずお困りのご家族へ、家族だけで探さないなど具体策を解説

暴言・暴力

「暴言・暴力」は、介護者や家族に対して怒鳴ったり、叩いたりするなどの攻撃的な行動を指します。

これは、認知機能の低下による混乱や不安、フラストレーション、身体的な不快感などが原因で起こることがあります。本人にとっては自己防衛や意思表示の手段となっていることも多く、単なる性格の問題ではありません。

「暴言・暴力」の対処法としては以下のようなものがあります。

  • 穏やかな声掛けや表情で接するようにする
  • こちらは感情的にならず、冷静に対応するように心がける
  • 安全な距離を保つ
  • 本人の気持ちを理解しようと努め、共感的な態度で接する
  • 安心できる生活環境を整える  
  • 本人の関心を別のことに向ける

睡眠障害

「睡眠障害」は、昼夜逆転や不眠、夜間の徘徊などの症状として現れます。

高齢者の認知症の方には多く見られ、日中の活動量減少や、環境の変化などが睡眠障害を引き起こす原因となります。

睡眠障害は本人だけでなく、介護者の負担も大きくなりやすいです。

「睡眠障害」の対処法としては以下のようなものがあります。

  • 日中の活動量を増やし適度な運動を取り入れる
  • 規則正しい生活リズムを維持する
  • 日光を浴びる
  • 夕方以降のカフェインや刺激物の摂取を控える
  • 安心できる睡眠空間を作る
  • 夜間の排泄回数を減らすため、就寝前の水分の取りすぎに注意する
  • 必要に応じて主治医に相談し、睡眠薬の使用を検討する

食行動異常

「食行動異常」は、過食、拒食、異食(食べられないものを口に入れる)などの症状として現れます。

これらは、脳機能の低下による味覚や嗅覚の変化、満腹感の認識障害、食事の記憶喪失などが原因で起こります。また、不安や抑うつ、薬の副作用なども影響することがあります。

食行動異常は栄養状態の悪化や窒息のリスクにつながるため、適切な対応が必要です。

「食行動異常」の対処法としては以下のようなものがあります。

  • 規則正しい食事時間を設定する
  • 好みの食べ物や食べやすい形状を工夫する
  • ゆっくりと安心して食べれるように、落ち着いた雰囲気を作る
  • 異食を防ぐため、危険なものは手の届く範囲に置かない
  • 口腔ケアを行う

介護拒否

「介護拒否」は、入浴や着替え、服薬などの日常的なケアを拒むことを指します。

認知機能の低下により、様々なことに不安や恐怖を抱いたりしてしまいます。

介護者の負担も大きくなるため、基本的な対処法を知っておきましょう。

「介護拒否」の対処法としては以下のようなものがあります。

  • 無理強いせず、タイミングを見計らって声を掛ける
  • 本人のペースを尊重し、できることはご自身で行ってもらう
  • 介護に入る前に、介護の必要性を説明する
  • 好みの音楽を流すなど、リラックスできる環境を整える
  • 他に介護者がいる場合は、介護者を変えてみる
  • 日頃からのコミュニケーションを大切にする

問題行動の治療方法

認知症高齢者が問題行動に対する治療で運動療法をしている

認知症の問題行動に対する治療やケアには、非薬物療法と薬物療法の二つのアプローチがあります。ここでは、それぞれの方法について解説します。

非薬物療法

非薬物療法は、薬に頼らず問題行動の改善を目指す方法です。

周辺症状に対しては、薬物療法よりも優先的に非薬物療法を行うことが原則とされています。

非薬物療法には以下のようなものがあります。

  • 認知リハビリテーション
  • 運動療法
  • 音楽療法
  • 園芸療法
  • アロマテラピー
  • 回想法

本人の興味や好みに合わせて選択し、無理強いせずに楽しみながら行うことで、生活の質(QOL)の向上を目指します。

薬物療法

薬物療法は、認知症による不安や興奮、睡眠障害などの症状を緩和するために行われます。

抗精神病薬や抗不安薬、睡眠薬などが用いられることが多いですが、認知症患者には副作用が出やすいため、医師による慎重な判断が必要です。

問題行動で困ったら、まず医師に相談するようにしましょう。

わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都835箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。問題行動でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

まとめ

認知症の問題行動は、本人の混乱や不安が原因となっているため、家族だけで対応するのが難しい場合も多くあります。家族の負担が大きくなりすぎないようにするためにも、できるだけ早めに医師やケアマネジャー、専門の相談機関に相談することが大切です。

ケアマネジャーがいる場合は、ケアプランの見直しや、適切な介護サービスの利用についてアドバイスをもらえます。また、医師に相談することで、薬物療法やその他のケア方法について提案を受けられます。専門家のサポートを活用しながら、家族だけで抱え込まずに、適切なケア方法を見つけていくことが、本人と家族双方の安心につながります。

わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都835箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。