高齢者に見られやすい傾眠傾向とは?原因や対策も解説
「最近、昼間なのにウトウトしてしまう」
「ずっとぼんやりしていて心配…」
高齢者の中には、「傾眠傾向」が見られることがありますが、単なる疲れと見過ごしてしまうことも少なくありません。傾眠傾向は、体力の低下や病気、薬の副作用など、さまざまな原因で引き起こされるため、注意が必要です。
本記事では、傾眠傾向の特徴や原因、具体的な対処法について詳しく解説します。大切な人の健康を守るためにも、ぜひ参考にしてください。
Contents
傾眠傾向とは
傾眠傾向とは、高齢者に多く見られる意識障害のひとつで、日中でもすぐにウトウトしてしまう状態を指します。
外部から軽い刺激(声をかけたり、肩に触れたり)を受けると、一時的に目を覚ますことができるものの、再びすぐに眠りに戻ってしまうことが特徴です。
この状態は、深い眠りではなく、浅い眠りの状態が続いているため、完全に覚醒することは少なく、ぼんやりとした状態が続きます。
傾眠傾向は、単なる眠気や疲れとは異なり、病気や加齢による変化が原因であることが多いため、適切な対処が必要です。
高齢者が傾眠傾向になったときの特徴
傾眠傾向は、高齢者に特に見られやすい症状であり、いくつかの特徴的な兆候があります。これらの兆候は、日常生活に支障をきたし、さらに悪化すると重大な健康問題に繋がることもあるため、早期の対応が重要です。
注意力が散漫でぼんやりした状態が続く
1日中ウトウトしており、目を覚ましてもぼんやりとした状態が続きます。
日中に活動していても、反応が遅く、会話や家事などで注意力が散漫になりやすいのが特徴です。この状態は、単に疲れているだけではなく、意識がもうろうとしている状態で覚醒していないため起こっている可能性があります。
自分がいる場所や時間がわからなくなる
傾眠傾向が強くなると、目覚めた後も自分がどこにいるのか、今が何時なのかといった基本的な情報を把握できなくなることがあります。
たとえば、ウトウトして目を覚ました際に、自分がいる場所を勘違いしたり、朝なのか夕方なのかを認識できないといった混乱が生じることがあります。
傾眠傾向ではこのような意識の混乱が頻繁に起こるのが、単なる居眠りとの違いです。
より重度の意識障害に陥るリスクがある
傾眠傾向は放置すると、さらに深刻な状態に進行する可能性があります。
最初は短時間の眠気やぼんやりとした状態が続く程度でも、悪化するとさらに重度の意識障害に陥り、医療機関での対応が必要になることもあるため、早めの対応が必要です。
傾眠により起こりやすいリスク
傾眠傾向が続くと、高齢者の日常生活に様々なトラブルが生じる可能性があります。以下に、傾眠が引き起こしやすい代表的なトラブルを紹介します。
食事中の誤嚥
傾眠傾向になると、食事中に眠気が襲ってきたり、集中力が低下して食事に注意を払えません。その結果、食べ物や飲み物を飲み込む際に、誤って気管に入り込んでしまう「誤嚥(ごえん)」を起こすリスクが高まります。
誤嚥は、肺に食物が入ると誤嚥性肺炎を引き起こす危険があり、特に高齢者にとっては命に関わる重大な問題です。
〈関連記事〉誤嚥性肺炎の原因!嚥下障害を徹底解説
転倒や転落
傾眠傾向の高齢者は、立ち上がり時や歩行時のふらつきで転倒のリスクが高くなります。また、椅子や車椅子に座っている場合でも、ウトウト寝てしまうことで姿勢が崩れ、そのまま椅子からずり落ちてしまうこともあります。
転倒や転落は、骨折や打撲といった重大なケガを負う可能性があるため、注意が必要です。
せん妄
傾眠傾向が長引くと、意識が混乱し、「せん妄」と呼ばれる状態に陥ることがあります。
せん妄とは、意識が混濁し、幻覚や錯覚を生じ、現実と非現実の区別がつかなくなる状態を指します。夜間に強く現れることが多く、家族や介護者に対して突然怒り出したり、不安定な行動をとることがあります。
傾眠傾向からこれらのようなトラブルが起こってしまう可能性があるため、医師の診察を受け、適切なケアを行うことが重要です。
わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都8県35箇所(2024年12月現在)に訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。
傾眠傾向になる原因
傾眠傾向は、以下のようにさまざまな原因で引き起こされます。
- 認知症
- 体力低下
- 脱水
- 内科的疾患
- 慢性硬膜下血腫
- 薬の副作用
それぞれ解説していきます。
認知症
認知症により「昼夜逆転」や「意欲低下」が見られ、これらが傾眠傾向の原因となります。
昼夜逆転は、夜に眠れず日中に眠気が強くなる状態です。これにより、日中に長時間ウトウトしてしまいます。また、意欲低下により、気持ちが落ち込んでしまい、活動が減少することで傾眠状態に陥りやすくなります。
体力低下
加齢によって体力が落ちると、疲れやすくなり、だるさを感じやすくなります。体が疲れてだるくなることが傾眠傾向になりやすくなる原因のひとつです。
特に高齢者は、夜の眠りが浅くなるため、日中に眠気を感じやすくなり、傾眠傾向が強まることがあります。
脱水
脱水状態になると、意識がはっきりしなくなり、傾眠傾向を引き起こします。
特に高齢者は、体内に水分を保つ機能が低下しており、水分不足になりやすいため、気づかずに脱水状態となり、意識レベルが低下してしまうことがあります。
内科的疾患
内科的疾患とは、肝臓や腎臓などの内臓に異常が生じたり、ウイルス感染や発熱などの病気を指します。これらの疾患が原因で、体が十分に機能しなくなると、疲労感やだるさが強まり、傾眠傾向が現れることがあります。
ただし、内科的疾患が改善し、体調が回復すれば、こうした傾眠の症状も自然に改善されることが多いです。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫とは、頭を打った後に、脳とその外側の膜(硬膜)の間に血が溜まり、脳を押しつけてしまう病気です。高齢者の場合、転倒時の頭部打撲などで発生する可能性があります。
血が溜まり脳への圧迫が強くなると、さまざまな症状が見られます。頭痛や歩行障害などの症状が現れることがあり、傾眠傾向もそのひとつです。
慢性硬膜下血腫は早めの対応が必要となるため、転倒後にぼんやりすることが増えた場合は、すぐに病院で検査を受けることが大切です。
薬の副作用
薬の副作用によって、傾眠傾向が引き起こされることがあります。たとえば、認知症の薬や抗てんかん薬は、副作用として軽い傾眠を伴うことがあります。また、花粉症対策に使われる抗ヒスタミン薬や、睡眠薬、鎮痛剤なども、眠気を引き起こしやすい薬です。
市販の薬にも傾眠を促す成分が含まれていることがあるため、傾眠傾向が気になる場合は、薬剤師や医師に相談し、眠くなりにくい薬を選ぶことが大切です。服薬に関して気になることがあれば、必ず専門家に確認しましょう。
わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都8県35箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。
傾眠傾向の対処法
高齢者に傾眠傾向が見られた場合、早めに適切な対処をすることが重要です。
- 積極的なコミュニケーション
- 食事や水分の適切な摂取
- 適切な運動
- 生活リズムを整える
- 薬の見直し
- 医師への相談
それぞれ解説していきます。
積極的なコミュニケーション
傾眠が見られる場合には、家族や介護者が積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
話しかけることで外部刺激が入るため、意識を引き戻し、眠りに落ちるのを防ぐことができます。また、会話を促して頭を使えば、意識がはっきりとしやすくなります。
食事や水分の適切な摂取
脱水や栄養不足は、傾眠傾向を悪化させる要因の一つです。
高齢者は、喉の渇きを感じにくく、水分摂取を忘れがちです。定期的に水分を取るよう促し、食事のバランスにも注意を払いましょう。特に、体力を保つために栄養価の高い食事が大切です。
〈参考記事〉高齢者が脱水を起こす原因|脱水症状を見逃さないためのポイントや対処法について解説
適度な運動
日中の適度な運動は、傾眠傾向を改善するために非常に効果的です。
運動は体力を維持するだけでなく、日中の覚醒度を高め、活動的な時間を増やすことができます。無理な運動をするのではなく、ご自身に合った運動をするようにしてください。
たとえば、高齢者で歩くのが難しい場合は立ち上がり運動や、立ち上がるのも難しければ両手を開いたり閉じたりする程度の運動でも効果があります。
生活リズムを整える
生活リズムの乱れは、傾眠傾向を助長することがあります。
毎日同じ時間に起き、食事や就寝の時間を一定にすることで、体内時計を正常に保つことができます。日中に過度な昼寝を避け、夜間に十分な睡眠を取るように心がけることが重要です。
薬の見直し
薬の副作用が傾眠傾向を引き起こすことがあるため、現在服用している薬についても確認してみてください。
眠気を引き起こす成分が含まれていないかなど、副作用を確認し、必要に応じて医師と相談して薬を調整してもらいましょう。
医師への相談
傾眠傾向が続く場合、単なる居眠りと軽視せず、専門医に相談してください。
特に、急に傾眠が始まったり、症状が悪化する場合は、内科的な疾患や脳の問題が隠れている可能性もあります。早めに医師に相談し、必要な検査や治療を受けることで、重篤な状態を防ぐことができます。
まとめ
高齢者の傾眠傾向は、加齢や病気、薬の副作用など、さまざまな要因で引き起こされます。傾眠が続く場合、生活の質が低下し、事故や健康リスクも増大するため、早期の対応が重要です。日常生活での観察や対策をしっかり行い、必要に応じて医師に相談することで、重篤な状態を防ぎ、健やかな生活を支えることができます。
わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都8県35箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。