高齢者に多い心不全の特徴的な症状は?原因や予防法も解説
「歩くだけでも息切れするようになった」
「疲れやすいし、食欲もあまりわかない」
高齢者に見られるこうした体調の変化は、心不全の兆候かもしれません。心不全は、心臓の機能が低下して全身に十分な血液を送り出せなくなる状態で、急性の場合は命に関わる危険もあります。また、慢性心不全では、症状が徐々に進行し、生活の質に大きな影響を与えることがあります。
本記事では、高齢者に多い心不全の特徴や原因、症状、そして予防方法についてわかりやすく解説します。ご家族やご自身の健康を守るためにも、ぜひ参考にしてください。
Contents
心不全とは
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、体に必要な血液を十分に送り出せなくなる状態を指します。これは単一の病気ではなく、さまざまな心臓病が進行した結果として起こる「症候群」です。
心不全には、「急性心不全」と「慢性心不全」の2つのタイプがあります。急性心不全は、症状が突然現れる緊急事態で、即座の治療が必要です。一方、慢性心不全は症状がゆっくり進行し、長期間の治療と管理が必要な病気です。また、慢性心不全が急激に悪化して急性心不全を引き起こすこともあります。
急性心不全
急性心不全は、心臓の機能が突然悪化し、短期間で重篤な状態に至る症候群です。特に心筋梗塞や重度の不整脈などが主な引き金となります。
主な特徴
-
症状の急激な出現や悪化:突発的に息苦しさや胸部不快感が現れることが多いです。
-
緊急の医療介入が必要:適切な治療が遅れると、生命に危険を及ぼす可能性があります。
-
原因:冠動脈疾患、弁膜症、心筋疾患など、心臓そのものの疾患が主な原因です。
急性心不全は、迅速な医療対応が必要な危険な状態であり、発症時には迷わず緊急医療を受けることが重要です。
慢性心不全
慢性心不全は、心臓の機能が徐々に低下し、長期間にわたり症状が続く病態です。主に高血圧や冠動脈疾患、心房細動などの慢性疾患が背景にある場合が多く、高齢者で特に多く見られます。
主な特徴
-
症状が緩やかに進行:疲労感や息切れといった症状が少しずつ悪化していきます。
-
長期的な管理が必要:薬物治療や生活習慣の改善を通じて、症状の進行を抑える必要があります。
-
生活の質(QOL)に影響:活動量が制限されるため、日常生活に困難を伴うことが多いです。
慢性心不全は進行性の病態ですが、適切な治療とケアにより、症状をコントロールしながら生活の質を維持することが可能です。
高齢者は心不全のリスクが高くなる
高齢者が心不全になりやすいのは、加齢に伴う心臓や血管の変化が主な原因です。年齢とともに心臓の筋肉が硬くなり、血液を送り出す力が弱まります。また、血管の硬化により血圧が上昇し、心臓への負担が増えることもリスクを高めます。
さらに、高血圧や糖尿病、冠動脈疾患といった慢性疾患を抱えている場合が多く、これらが心不全を引き起こす大きな要因になります。特に慢性心不全は、高齢者特有の体の変化や基礎疾患が絡み合い、進行しやすい特徴があります。
高齢者の心不全に見られる症状
心不全の症状は、急性心不全と慢性心不全で異なります。急性心不全では命に関わる重篤な症状が突然現れ、迅速な対応が必要です。一方、慢性心不全は徐々に進行し、日常生活に支障をきたします。
高齢者の場合、慢性心不全が一般的です。しかし、慢性心不全が悪化すると急性心不全を引き起こし重篤となるケースも多くあります。
以下に、それぞれの主な症状を紹介します。
急性心不全の症状
急性心不全では、心臓の機能が突然低下し、速やかな医療対応が必要な状態になります。主な症状は以下の通りです。
- 呼吸困難:突然息苦しさを感じるようになり、特に横になると症状が悪化します。
- 胸痛:胸が締め付けられるような痛みや圧迫感を感じるようになります。
- 咳や痰:湿った咳が出ることがあり、血の混じった痰が見られる場合もあります。
- 冷や汗:皮膚が冷たくなり、大量の冷や汗をかくことがあります。
- 意識障害:意識が薄れ、重症の場合、混乱したり意識を失ったりすることがあります。
- 動悸・不整脈:不整脈が多くなり、突然の動悸が起こります。
- むくみ:足だけでなく手や顔、さらには腹部にまで急速にむくみが広がる傾向があります。
これらの症状は命に関わる可能性があるため、すぐに医療機関を受診することが重要です。
慢性心不全の症状
慢性心不全は、心臓の機能が徐々に低下し、日常生活に影響を及ぼします。主な症状は以下の通りです。
- 息切れ:軽い運動や階段の上り下りでも息苦しさを感じるようになります。
- 疲労感:日常的に疲れやすくなり、活動量が減少します。
- 体重増加:体内に水分が溜まることで、短期間で体重が増えることがあります。
- 食欲不振:胃腸の血流が減少し、食欲が低下します。
- 睡眠障害:横になると息苦しくなり、夜間に何度も目が覚めることがあります。
- 動悸:動作時に動悸が起こります。
- むくみ:足元のむくみが見られ、ゆっくり進行します。
動悸やむくみはどちらでも見られる症状ですが、急性心不全の場合、突発的に見られて急速に進行する傾向があります。
むくみについての原因や予防法についてはコチラをご参考ください。
〈関連記事〉高齢者の浮腫(むくみ)の原因は?改善・予防する方法まで解説
これら慢性心不全の症状は、慢性的に進行するため見過ごされがちですが、日常生活の中で気づく変化を記録し、早めに医療機関で相談することが大切です。
わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都8県35箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。
高齢者に多い心不全の原因とリスク要因
心不全はさまざまな要因が絡み合って発症します。高齢者では特に基礎疾患や生活習慣が影響することが多く、心不全のリスクが高まる傾向にあります。
心不全を引き起こす主な原因疾患
高齢者の心不全は、以下のような疾患が引き金となることが多いです。
- 虚血性心疾患(冠動脈疾患、心筋梗塞)
- 高血圧性心疾患
- 心臓弁膜症
- 不整脈(心房細動など)
- 心筋症
- 心筋炎
- 先天性心疾患
これらの疾患は、単独あるいは複数組み合わさって心臓が血液を送り出す力を低下させたり、心臓に過剰な負担をかけたりすることで、心不全を引き起こします。
心不全のリスクを高める要因
高齢者の心不全リスクを高める主な要因は以下の通りです。
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 高脂血症
- 運動不足
これらの要因は、心臓や血管に負担をかけ、心不全の発症リスクを増大させます。生活習慣や基礎疾患の管理によって多くは改善可能であるため、早めの予防と対策が重要です。
心不全の治療
心不全の治療は、症状の種類や進行度に応じて異なります。急性の場合は緊急対応が必要で、慢性の場合は病気の進行を抑えるための長期的な治療が中心となります。
急性心不全の治療
急性心不全の治療では、まず入院して心臓への負担を減らすことが最優先です。
酸素投与や薬物療法が中心で、利尿剤や血管拡張薬、必要に応じて強心薬が使われます。症状が重い場合には、補助循環装置など高度な治療が行われることもあります。
慢性心不全の治療
慢性心不全の治療では、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせることが基本です。
薬物療法は、心臓の働きをサポートするACE阻害薬や利尿剤などが使われます。生活習慣の改善は、塩分を控えた食事や軽い運動を取り入れ、症状の進行を抑えます。
心不全の予防
心不全の予防には、基礎疾患の管理と生活習慣の見直しが重要です。高齢者では特に、日常生活の中でできる小さな取り組みが予防につながります。
基礎疾患の管理
高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化といった基礎疾患を適切に治療・管理することが、心不全の発症を防ぐ鍵です。医師の指導に従い、定期的な検診を受けましょう。
生活習慣の改善
- 食事:減塩を心がける。野菜や果物も摂取して、バランスの良い食事を心がけましょう。
- 運動:ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲で運動をすることを習慣づけましょう。
- 禁煙:タバコは心臓や血管に大きな負担をかけるため、禁煙を目指しましょう。
- 飲酒の適正化:アルコールの摂取量を控えることも、心臓を守るために重要です。
体調管理
体重やむくみの変化、息切れなどの症状に注意し、異常を感じたら早めに医師に相談することが大切です。また、十分な睡眠やストレスの管理も心臓の健康を守るために欠かせません。
心不全の予防は、日々の小さな取り組みを習慣化することがポイントです。継続することで、心臓への負担を軽減し、健康を維持しやすくなります。
まとめ
心不全は、高齢者にとって健康寿命を左右する重要な疾患です。急性心不全では迅速な対応が、慢性心不全では長期的な治療と生活習慣の管理が必要となります。
早期発見と適切な対処が、心不全の進行を防ぎ、生活の質を守る鍵です。息切れやむくみ、疲労感など、普段と違う体調の変化を感じたら、すぐに医師へ相談しましょう。
わたしたちアグリーグループでは、関東を中心に一都8県35箇所(2024年12月現在)で訪問診療所を展開しています。急な体調の変化に対しても、24時間365日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。