訪問看護費用に適応できる医療制度をまとめて紹介

訪問看護を利用する背景には様々な要因があると思います。疾病の特殊性や家族の有無、ご自分の身体の自由度などが関係した上で訪問看護を利用しようとしたときにネックとなるのが医療費ではないでしょうか。先立つものはお金とよくいいますが、生活していくためには医療費だけでなく日常生活でかかる諸経費もかかってしまいます。

今回は、そんな医療費が気になっている方へ向けて、訪問看護に適用できる医療制度をまとめてご紹介していきます。医療制度を上手に活用することで、医療費を抑えることができるのではないでしょうか。

●訪問看護の利用できる公的保険制度別の条件
訪問看護は、公的保険制度の「介護保険」と「医療保険」(後期高齢者医療制度、健康保険・国民健康保険)が利用できます。公的な訪問看護は、利用料金の一定割合が保険から支給されます。
「介護保険」の場合には、利用する前に申請・審査・認定の手続きが必要で一定の期間がかかります。

利用するには要介護認定を受けている方で、40〜65歳未満では16特定疾患(主に加齢が原因の病気)の対象者である必要があります。なお、40歳未満は対象外です。医療保険と比べ介護保険のほうが自己負担割合が小さいというメリットもあります。(介護保険の自己負担割合はサービス利用額の原則1割、医療保険は1~3割)要支援または要介護と認定された方は介護保険を優先的に利用するよう制度上決められています。

ただし、介護保険には月額の支払い限度額があるため、介護が必要な方が十分に介護サービス使おうとすると介護保険での訪問看護サービスが必要なだけ利用できなくなることがあります。

一方「医療保険」には支給限度額がありません。年齢に関係なく介護保険が利用できない方や、介護保険の要支援・要介護の認定を受けた方でも、特に重い病気や症状の方(厚生労働大臣の定める難病の方、末期の悪性腫瘍の方、人工呼吸器など)、病状の悪化により医師の特別指示(特別訪問看護指示書)がある方など医師が必要性を認めた方は医療保険の訪問看護を利用することができます。
尚、介護保険の訪問看護と医療保険の訪問看護を同時に利用することはできません。

▶︎訪問看護が適用されるまでの道のりを解説
訪問看護を利用するためには、医師により「在宅において継続して療養する必要がある」と判断してもらう必要があります。医師により在宅による療養の必要性が判断されれば、子どもでも高齢者の方でも訪問看護を利用することができます。かかりつけ医だけでなく、訪問看護ステーションや地域包括支援センター、在宅介護支援所(ケアマネージャー)、市区町村の介護保険や障がい福祉関係の担当窓口に問い合わせることでも訪問看護の相談を受け付けています。

▶︎訪問看護の利用料金(令和元年7月現在)
訪問看護では、ある程度の利用料が決まっているため比較的明瞭会計です。
例えば、医療保険対応の訪問看護基本医療費は、看護師や保健師では1日5,550円・理学療法士や作業療法士では1日5,550円・准看護師であれば1日5,050円(自己負担割合は1〜3割:年齢や所得によって異なります)と決まっています。また基本療養費以外に諸療養費がかかります。週3回までであれば自己負担割合(前述同様 )で訪問看護を利用することが可能です。緊急事態の対応で、超えた回数分に関しては全額自己負担となります。

●訪問看護で利用できる医療制度
▶︎高額療養費制度(平成30年8月診療分から)
訪問看護を利用している中で、医療費が高額になってしまった場合に利用できるのが高額療養費制度です。これは、医療機関や薬局で月初から月終までに医療費として支払った総額が、決められた上限を超えた場合に適用される医療制度です。決められた上限を超えると、超えた分が全額支給されます。

ただし、保険外併用療養費の差額部分は対象になりません。
上限は個人と世帯ごとで異なります。また、収入や年齢によっても上限額が異なるので注意が必要です。69歳以下の場合は、世帯ごとに35,400円〜252,600円+(医療費―842,000円×1%)まで上限額が設定されています。これが70歳以上になると、個人の外来だけの上限は8,000円〜〜252,600円+(医療費―842,000円×1%) 、世帯ごとは15,000円〜252,600円+(医療費―842,000円×1%)の上限額に変動します。負担をさらに軽減する世帯合算や多数回該当の仕組みもあり、詳細はご自身が加入している公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合などにお問い合わせください。

◆高額療養費制度を利用するには
高額療養費制度を利用するためには、ご自身が加入している公的医療保険へ高額療養費の申請をする必要があります。このとき、訪問看護ステーションからの領収書を提出するように求められることがあるため領収書は大切に保管しておきましょう。

◆適用される範囲
保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となります。高額医療費制度は何にでも適応されるわけでではなく、生活する上で必要となる「食費」「居住費」「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」等、これらは一般的にも健康保険の対象外とされ高額療養費の支給の対象とはなりません。健康保険の適用となる範囲で上限過剰分を支給しています。訪問看護においては、週3回以内の療養費や諸療養費に関して毎月の上限を超過した分が支給されるということになります。

▶︎小児慢性特定疾病医療費助成
慢性疾病を抱える子どもたちの療養と、子どもや家族を支える児童福祉法に基づく法制度です。世帯所得に応じた自己負担上限額が決まっていて、上限を超過した分の医療費が支給され、2019(令和元年)年7月現在16疾患群756疾病(包括的病名を除く)が対象となっています。ここでいう小児というのは18歳未満のことを指しますが、18歳を超えても引き続きの治療が必要だと認められれば20歳未満の人も対象となります。

◆小児慢性特定疾病制度を利用するには
小児慢性特定疾病医療費助成を利用するためには、都道府県や指定都市が指定した指定医療機関を受診して、助成制度対象の疾患・疾病であることを診断してもらう必要があります。その後、各自治体の窓口に診断書を提出して審査を受けます。そして、正式に助成制度適用の認定か不認定の通知があります。

◆適用される範囲
高額療養費制度と同様に、健康保険が適用される範囲が助成制度で支給される範囲となります。この他にも小児慢性特定疾病医療費助成では、自宅で使用する便器や寝台・入浴補助用具などにも助成金が給付されます。さらに、介助者が使用する器具などにも助成金が適用されるのが特徴です。

▶︎精神通院医療
精神通院医療は自立支援医療制度の一つです。主に統合失調症や気分障害・知的障害・自閉症・認知症・てんかんなど精神疾患が対象となります。しかし、これらの疾患に罹患したから精神通院医療が適用されるというわけではありません。医師が「精神疾患で長期的に療養する必要があり通院による継続的な治療が必要である」と判断した場合に限られます。また、主治医が判断し自治体が同意すれば精神通院医療が適用されます。制度の名称に「通院」という文字が入っていますが、訪問看護でも適用できる制度です。健康保険で訪問看護を利用する場合は、主治医からの指示書で訪問看護を利用できます。

一方、介護保険を使って訪問看護を利用する場合には精神科のある病院など医療機関の医師から指示書を記入してもらう必要があります。

◆適用される範囲
適用される範囲は、健康保険の対象と同一です。通院、医師の指示書によるデイケア・訪問看護などの医療は精神通院医療制度の対象となります。ただし、入院中の医療費などは適用されません。この制度は指定の医療機関・薬局で利用可能なものですが、通常3割負担の医療費が1割負担まで軽減されます。また世帯所得や治療内容に応じて月あたりの自己負担に上限が定められるため、原則として上限を超える分の医療費は負担しなくて良いことになっています。

▶︎更生医療
更生医療も自立医療制度の一つです。身体障害者手帳をお持ちの方が、その障害を取り除いたり軽減をするために手術等の治療を行う際に利用できる医療費助成です。実施主体は各市町村なので、福祉課などの窓口へ行くと相談に乗ってもらえます。

◆適用される範囲
更生医療には適用となる障害と治療法が決まっています。例えば、白内障に対する水晶体摘出術・心疾患に対するペースメーカー・小腸機能不全に対する中心静脈栄養法などです。訪問看護では中心静脈栄養の管理が行えます。小腸機能不全で中心静脈栄養を設置したという方はぜひ更生医療を適用してみませんか?

また、身体障害者手帳をお持ちで無い方でも、現在の状態が身体障害者手帳に該当する状態であれば、身体障害者手帳と更生医療を同時に申請できる場合もあります。詳細は各市町村窓口でご確認ください。

▶︎育成医療
育成医療も自立医療制度の一つです。18歳未満の身体に障害をもつ小児を対象にした医療制度で、更生医療の小児版というイメージを持つとわかりやすいですね。更生医療と同じで実施主体は各市町村となります。育成医療を検討している方は、各自治体の福祉課へ相談すると対応してくれるでしょう。

◆適用される範囲
育成医療でも適用される障害と治療法は決まっています。例えば、先天性奇形に対する形成術や心疾患に対するペースメーカー・小腸機能障害に対する中心静脈栄養法などがあります。医師の判断により、小児でも在宅医療を受けることができるだけでなく公的医療制度を受けることもできます。

●まとめ
訪問看護を利用しようと検討中の方がネックに思うのが利用料です。そこで、訪問看護で適用されている利用料の目安を紹介しました。外来へ通院することに比べると、利用料は明瞭という印象を受けるのではないでしょうか。また、各世帯や個人の収入・年齢に応じて毎月の上限が決められています。

お金がなくて医療を受けることができないという状況を生み出さないためにも、訪問看護で適用できる医療制度について理解を深めてご自身や家族の方にあう医療制度を利用するようにしましょう。訪問看護ステーションだけでなく、各市町村の福祉課などでも相談に応じてくれます。医師の判断によって誰でも利用できる訪問看護だからこそ、多くの方に利用していただきたいです。

日本の国民医療費は増え続け国の財政を圧迫している背景から、近年は入院しながら治療することが難しくなってきています。そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。

メドアグリケアからのメッセージ