自宅で最期を迎える人にとって、看護師がどのような関わりをしてくれるか
あなたは人生の最期をどのように迎えたいですか?
唐突にこんな質問を投げかけられたとき、即答できる人は少ないのではないでしょうか。人生の最期について考えたことはない方でも、家族や友人など身近な人の最期に立ち会うと自分の最期はどう過ごそうかと考えるのではないでしょうか。最近は、著名人が最後は自宅で家族に見守られながら旅立ったという報道を耳にする機会もあったりと、自分らしく住み慣れた場所で身近な人に囲まれながら、穏やかで安らかな満足した最期を迎えたいと考える方も増えてきています。
さて、今回は自宅で最期を迎えたいと考えている方にとって、訪問看護師がどのように関わっていくのかをご紹介していきます。
◼ 自宅で最期を迎える人はどれくらいいる?
2017年現在、年間死亡者数は約134万人です。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)、2007年にはすでに超高齢社会に突入した日本は、今後年間死亡者数も増加の一途をたどり2035年には約160万人を超えることが予測されています。この事態を政府は深刻に受け止め、医療のシフトチェンジを実施しています。それが、入院・外来医療から在宅医療への切り替えです。今後益々、日本の国民が在宅医療を受ける機会は増えていくと思われます。
- 最期を迎える場所
日本において人生の最期を迎える場所というのは年代によって変化してきました。高度経済成長前の1951年には自宅で最期を迎える人の割合は全死亡者数のうちの8割、病院で最期を迎える人は1割以下でした。1980年にはその割合がほぼ1対1となります。そして2009年のデータでは病院で最期を迎える人の割合が8割、自宅で最期を迎える人は1割へと逆転しました。この割合の変化には、日本の医療の進化や進歩が関係していました。
1951年は、病院の外来で受ける医療よりも医師が自宅に訪問する訪問診療が一般的で、多くの方が自宅で最期を迎えていました。その後、レントゲンやCT、MRIなど高度医療機器が導入され外来を受診する外来医療が中心になりました。また、外科手術や化学療法・放射線療法の進歩により入院医療で病気と闘う人の数も増え、病院で死亡する人の数が増加したとされています。
そのような時代の流れから最期を迎える場所は基本的に病院でという考え方が多くありましたが、近年では好きな場所で余生を過ごしながら看取られたいと考える方も増え、最期を迎える場所について柔軟な考え方が浸透してきているのではないでしょうか。
- 最期を迎えるにあたっての課題
自宅で最期を迎えるにあたって、いくつか課題が残っているのも事実です。そこで最期を迎える人やその周囲の人が抱える課題について紹介していこうと思います。
▶︎人手の確保
残された時間を自宅など住み慣れた場所で過ごすことは、本人と家族にとって安らぎになると同時に負担も確実に発生します。
在宅医療では原則として患者さんは24時間自宅で過ごします。食事や着替え、清潔、排泄や移動など日常生活の援助や服薬管理などのサポート、リラックスできるような環境を整えたりといった精神的な援助は、基本家族がサポート役の中心となるでしょう。介護による負担を軽減して本人と向き合うことに集中できるよう、介護サービスなどを利用して介護生活をプロにサポートしてもらいましょう。
そして患者さんが一番感じるのが家族への負担です。積極的に介護サービスを利用しプロの助けを借りるにしても夜間のトイレなどは家族のサポートが必須です。毎日サポートするとなると、患者さんも家族に申し訳ないと心苦しく感じてしまうことがあります。家族の中でも役割分担や、介護分担などを行い患者さんにとっても家族にとっても、誰かに負担が集中しないように介護サービス等を上手に使いましょう。
▶︎患者さんと家族の意見の相違
例えば病院で末期がんと診断されたとします。患者さんは余生を穏やかに過ごしたいと願い在宅終末期医療を選択しても、治療ができるなら可能な限り受けさせたいと家族が考える場合、在宅医療に二の足を踏むことがあります。
これらについては医師や看護師など医療職と患者さん、家族との綿密なコミュニケーションが必須となるでしょう。また、セカンドオピニオンを利用し、患者さんと一緒に相談することでお互いの治療方針が一致することもあります。
▶︎患者さん本人の意思と家族のサポート
患者さんが自宅で最期を迎えたいと思う気持ちが、ある日を境に急遽変わることがあります。例えば、身近な友人の死や配偶者の死・書籍、テレビドラマなど要因は様々ですが、「死」を受け入れられなくなることがあります。そんなときは無益な延命治療を望むなどトラブルが起きやすいです。もちろん患者さんの意見が治療には反映されますが、現状をしっかりと理解し冷静に判断するには患者さんの個人の考え方やどうしたいか、また家族がどう支えるかが大きく関係してくるのです。
また、本人の意思でどうしたいかを決断できるのが理想的ですが、特に認知症の場合、意思確認が難しくなっていることもありその場合は家族が判断します。
そして、病気により死を宣告された人の心理状態は、「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」という5段階のプロセスをたどります。「否認」から「抑うつ」までの間には、「なぜ自分が」という怒りや、恐怖や不安、避けられない死への抵抗などが言動となって表れます。この時期は家族など周囲の人にとっても苦しい時期ですが、こうしたプロセスがあることをあらかじめ理解した上で、本人の心の整理を手助けし支えてあげる必要もあります。
▶︎自宅の環境
日常生活に介助が必要になってくると、食事や整容、清潔、排泄や移動などを手伝ってもらう必要が生じてきます。例えばトイレを例にとっても、身体を支える手すりの設置や、介助するのに必要なスペース、移動が困難になってくれば歩行器や車椅子の準備、ポータブルトイレの設置や便器などの自助具の利用、寝たきりになればベッド上での排泄介助などが必要になった場合には必要な物品を準備したりといった環境調整が必要になります。
これらは現在、在宅医療の課題としてあげられています。
◼ 在宅医療における看護師の役割
住み慣れた地域や自宅で療養する方のもとに訪問診療医に同行する看護師は、診療補助や必要に応じて医師の指示の下、採血や血圧測定を行います。また、主治医の指示書に基づき点滴の投与や医療処置、健康状態のチェック、利用者さんとそのご家族のサポートやアドバイスなどを一緒に行うのが訪問看護師です。
例えば、床ずれを防止するケアの方法や、夏場を快適に過ごすための工夫、自宅での看取りでは可能な限り肉体的苦痛を緩和し、コミュニケーションを取りながら不安を取り除くことで、本人の臨む最期を迎えられるよう利用者とご家族の精神的サポートも行います。医師と比較しても看護師の方が質問・相談しやすい人が多いため身近な医療従事者としてニーズが高まっています。
そして、主治医と患者さん、家族の橋渡し的な存在として、また地域に係る他職種の連携をスムーズに行えるような調整役としての役割も担います。さらに、薬剤師と連携して服薬管理や残薬管理をすることで薬の飲み忘れや重篤な副作用が起きていないかモニタリングするのも看護師の役割の一つです。
◼ 最期を迎える人にとって看護師とは?
在宅医療で最期を迎えようと考えている方や家族にとって看護師はなんでも相談できる医療専門職になります。特に看護師は医師・看護師・薬剤師など医療職で構成される医療チームの中でも療養生活支援の専門家になります。つまり、患者さんの生活に密接して患者さんが少しでも楽な状態で維持できるようケアする専門家です。具体的には次のようなことで家族や患者さんに寄り添ってくれています。
- 意思決定支援
終末期医療として最期を迎えることに関して、患者さんやご家族への意思確認を行います。また、患者さんだけでなくご家族との間で合意がなされているかもポイントとなります。もしものときに延命治療をするかしないかなど、今後のことについても患者さんと家族の思いをお伺いしながら情報提供を行い、主治医や他医療職と情報共有を行います。
- 心身のケア
患者さんの身体的なケアはもちろんですが、心身のケアも重要です。死を受け入れることができない人に寄り添い、不眠や恐怖心に寄り添うことが大切です。また、ご家族の抱えている心の負担に対しても必要に応じて心理カウンセラーと協力して寄り添っていきます。
- 看取りのための看護
最後が近づくにつれて、食事の量や水分摂取量、睡眠時間、楽に過ごせているかなどその人らしい生活の質が維持できているかを重点的に観察を行いサポートします。苦痛にならない範囲でバイタルサインのチェックを実施し、死が直前に迫った兆候が見られればご家族や医師へ連絡して、医療・療養に関わった全ての人が死と向き合えるためのお手伝いをするのも看護師の仕事の一つです。
◼ まとめ
総務省統計局の人口推計によると今後日本の年間死亡者数は増加し、出生率がこのままのペースで向上しないのであれば超高齢化社会の次は多死社会に突入することが予想されています。その中でも自宅で死亡する患者数は増加の一途を辿るとされています。在宅医療のニーズも今よりさらに高まることでしょう。
暗い話になってしまうかもしれませんが、近年は、入院しながら治療することが難しくなってきているのは事実です。病院難民になる前にみなさんの身近な理解者として看護師が活躍します。最期を自宅で迎える・終末期医療をしているという方は、療養に関して困ったことがあれば看護師へ相談してみるのはいかがでしょうか。もちろん私たちの医療コーディネーターである相談員へもお気軽にご連絡ください。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。