在宅医療で実際にかかる費用を点数から計算してみる
在宅医療を利用する際に、毎月どれくらい利用料がかかるのか気になる方がいると思います。患者様やご家族の経済的な負担を考慮して在宅医療は提供されますが、ここで概算にはなりますが在宅医療にかかる費用を計算してみたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
◼ 在宅医療では医療保険が適用される?
在宅医療にかかるお金は①医療機関への支払い、②薬局への支払い、③介護保険の自己負担などが主にあります。①は訪問診療を提供する医療機関への支払いですが、原則として医療保険のみ適用されます。在宅医療と同じように医師が患者様のご自宅へ訪問し、健康管理や健康指導を行う居宅管理指導というのがありますが、今回は主題として医療保険の適用される訪問医療を紹介していきます。居宅管理指導は各市町村の介護認定審議会により、要介護認定や要支援認定を受けた人だけが使える介護保険が適用され、自己負担額が総費用の1割〜3割に抑えられるのが特徴です。
②院外薬局の場合は、薬局への薬剤費・調剤費などの支払いが生じます。薬剤費についても、使用する薬剤によって異なりますので、かかりつけ薬局にご相談ください。
③在宅ケアを受ける場合、多くの方は介護保険を利用します。この場合、医療機関に支払う医療費とは別に介護保険の支払いが生じます。介護保険の支払いは、要介護度とケア内容によって異なります。
医療保険が適用される在宅医療は、お子様から高齢の方まで幅広い年齢の患者様に適用される医療サービスです。そんな在宅医療の医療費は主に6つの費用で構成されています。
- 基本的な診療費
外来医療でいう初診費用や再診料にあたります。次項で詳しい点数を紹介していますが、訪問診療の基本的な費用として、在宅患者訪問診療科というのがあります。医療機関による往診や訪問診療のスケジュールにより点数が異なるためここでは割愛させていただきます。この基本的な診療費用は自宅で最期を迎えるターミナルケアなのか、そうでないかでも点数が異なります。
前からがんの治療をしており、自宅で最期を迎える前提があれば、在宅ターミナルケア加算で死亡診断加算も含まれます。しかし、心筋梗塞や脳梗塞・老衰・肺炎などで容態が急変して突発的な死亡となった場合は、往診料と死亡診断加算が算定されます。
- 緊急事態の診療費
往診とは、患者様の要請により当初の訪問計画とは別で患者様のご自宅や入居している施設へ医師が赴いたときに加算されます。往診は再診料の他に時間帯や休日などで加算点数があります。往診の他にも病状の悪化などが原因で、医師が呼びかけケアマネージャーや歯科医師・薬剤師、訪問看護師などを招集し今後の治療方針について話合い共同で療養上必要な指導を行った場合に「在宅患者緊急時等カンファレンス料」を加算することもあります。
- 各種検査費用
在宅医療を行うにあたり必要とされる各種検査をした場合に加算されます。この各種検査費用だけは在宅医療でも、外来医療や入院医療で加算される保険点数と同点で計算されるのが特徴です。
- 介護保険の適用範囲
患者様の中には、介護保険が適用される方がいます。そうした方は介護保険が適用され、介護用品のレンタルや居宅療養管理指導を受けます。介護保険が適用される範囲も大枠でみれば訪問医療に含まれるのです。
- 自費負担
在宅医療では事業所やクリニックから患者様のご自宅まで一定の距離がある場合、自費として交通費を負担していただくよう設定している事業所やクリニックもあります。交通費は1キロあたり50円程度と安価に抑えられているため、自費と聞いても高額なイメージを持つ必要はありません。また、当法人では交通費は頂いておりません。
余談になりますが、患者様の「死亡」は医師が死亡診断を行った時点が起点になります。つまり、医師の死亡診断までは保険診療が適用となりますが、看取り時や死亡後の処置で訪問看護を利用する場合は、自費扱いになります。
- これら以外にかかる費用
在宅医療は、訪問診療だけではありません。前述の介護保険の適用される介護用品のレンタルや居宅療養管理も在宅医療に含まれます。さらに、看護師により療養を提供してもらう訪問看護や薬局からの薬剤料なども在宅医療の費用に含まれています。また、留置カテーテルや気管内カニューレ交換で使用した材料費用もここに含まれます。
◼ 在宅医療で実際にかかる基本的な費用(基本点数)
ここからは在宅医療で実際にかかる主な費用を紹介します。保険点数として表記しています。保険点数は1点10円なので、各種点数に10円をかけていただきご自身の自己負担割合で計算すると概算で医療費を算出できます。
- 医療保険
※定期的に訪問している場合
▶︎訪問診療
在宅患者訪問診療料(同一建物居住者以外) 833点
(同一建物居住者) 203点
【加算】
診療時間加算(1時間まで) 0点
+(30分ごと又はその端数を増すごと) 100点
在宅ターミナルケア加算4,500点
在宅療養実績加算1 750点
在宅看取り加算3,000点
死亡診断加算200点
▶︎医学総合管理料
在宅時 月2回以上訪問診療
〔末期悪性腫瘍、在宅療養指導管理等の患者〕
単一建物(診療患者1人)4,600点
単一建物(診療患者2~9人)3,780点
上記以外2,400点
〔上記以外の患者〕
単一建物(診療患者1人)3,700点
単一建物(診療患者2~9人)2,000点
上記以外1,000点
在宅時 月1回訪問診療
単一建物(診療患者1人) 2,300点
単一建物(診療患者2~9人) 1,280点
上記以外680点
【加算】
処方せんを交付しない場合300点
在宅移行早期加算100点
頻回訪問(4回以上の往診、訪問診療) 600点
包括的支援加算150点
在宅療養実績加算1 300点
※往診や要請があった場合の診療費用
▶︎往診
往診料(初診時) 720点+362点
往診料(再診時) 720点+72点
+(外来管理加算あり) +52点
【加算】
緊急往診650点
夜間(深夜を除く)・休日1,300点
深夜2,300点
診療時間加算(1時間まで) 0点
+(30分ごと又はその端数を増すごと) 100点
在宅療養実績加算1 75点
死亡診断時加算 200点
▶︎指導・指示費用
救急搬送診療料1,300点
在宅患者訪問点滴注射管理指導料100点
訪問看護指示料300点
【加算】
特別訪問看護指示加算100点
衛生材料等提供加算80点
介護職員等喀痰吸引等指示料240点
在宅患者連携指導料900点
在宅患者緊急等カンファレンス料200点
退院時共同指導料1 1,500点
※医療処置を実施または療養指導を受けた場合の診療費用
▶︎検査・処置
検査料(採血)
画像診断料
注射・点滴
処置料
上記検査・処置に関しては各項目の外来・入院時の点数と同点
▶︎特殊な医学管理
在宅自己注射指導管理料(複雑以外) 月27回以下650点
月28回以上750点
【加算】
注入器加算300点
注入器用注射針加算(1以外) 130点
自己血糖測定器加算(月90回以上) 1,170点
在宅酸素療法指導管理料(その他の場合) 2,400点
【加算】
酸素ボンベ加算(携帯用酸素ボンベ) 880点
酸素濃縮装置加算4,000点
在宅酸素療法材料加算100点
在宅中心静脈栄養法指導管理料3,000点
【加算】
在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算2,000点
注入ポンプ加算1,250点
在宅成分栄養経管栄養法指導管理料2,500点
【加算】
在宅経管栄養法栄養管セット加算2,000点
在宅人工呼吸指導管理料2,800点
【加算】
陽圧式人工呼吸器加算7,480点
人工呼吸器加算6,480点
陰圧式人工呼吸器加算7,480点
在宅悪性腫瘍等患者指導管理料1,500点
【加算】
携帯型ディスポーザブル注入用ポンプ加算2,500点
在宅気管切開患者指導管理料900点
【加算】
気管切開患者用人工鼻加算1,500点
在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料2,500点
在宅経腸投薬指導管理料1,500点
ここで紹介した保険点数はごく一部です。実際におこなう処置によって点数が異なるので注意しましょう。
◼ 例からいくらくらいかかるか計算しよう
ここまで訪問医療にかかる費用や、保険点数について紹介してきましたが実際にいくらかかるのか実際の症例を例にみていきましょう。
- 毎月3回の訪問診療を受けて、往診を1回受診した場合(院外処方あり、自宅まで往復4キロの場合)
このような状況では、患者様の自己負担額が1割負担か3割負担かで自己負担額は異なります。
▶︎1割負担の場合
在宅患者訪問診療料833円× 3 = 2,499円
在宅時医学総合管理料(月1回) 3,700円
在宅療養実績加算1 300円往診料(再診+外来管理加算) 844円
交通費108円× 6 = 648円 ※1回往復2キロまで無料の場合
月額費用の目安7,991円
▶︎3割負担の場合
在宅患者訪問診療料2,499円× 3 = 7,497円
在宅時医学総合管理料(月1回) 11,100円
在宅療養実績加算1 900円
往診料(再診+外来管理加算) 2,532円
交通費108円× 6 = 648円 ※1回往復2キロまで無料の場合
月額費用の目安22,677円
ここで紹介した症例や保険点数の計算方法はあくまで参考までにしてください。実際に患者様お一人おひとりで加算される点数は異なります。
◼ まとめ
在宅医療とは、訪問診療だけでなく訪問看護や治療に必要な薬代・居宅療養管理なども含まれます。毎月医療費としてかかりますが、医療保険が適用されるため個人の経済的負担は軽減されているのではないでしょうか。
今回は、実際の症例に模した保険点数の算出方法を紹介しましたが、各医療機関や健康保険の種類・自己負担の割合などによって、毎月かかる自己負担額は異なります。あくまで参考としていただき、在宅医療におおよそいくらかかるのかご理解いただけると幸いです。
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