緩和医療を自宅で受けるために必要なことは?痛みや苦しみから解放されて自分の好きな場所で最期を迎える

厚生労働省の調べによると日本人の死亡原因第1位は悪性新生物(がん)です。1985年に比べると2015年にはがんでの死亡数は約2倍にも増加しているのです。この背景には寿命の延伸による国民の高齢化が関係しているといわれています。また、がんは生涯で2人に1人が罹患するとされています。がんは発生する部位によりますが強い痛みを伴うことがあるだけでなく、治療で使用する抗がん剤の副作用で辛い思いをする患者さんも珍しくありません。治療をどれだけ進めても改善する余地がない場合や、がんが発見されたときにはすでに末期状態になっていたという場合では、患者さんの希望で緩和医療を受けることができます。

そこで、今回は緩和医療とはどのような医療でどのようなことをするのか、そして自宅で緩和医療を受ける際にみなさんが心配することについて紹介していこうと思います。

■がん性の苦痛

がんと聞いても実際になったことがない人からすればどの程度の痛みや辛さなのかわからないと思います。がん由来の疼痛は腫瘍細胞により組織が損傷されたり、腫瘍に伴う様々な不快感に関連した苦痛全体を指します。この苦痛を評価するには、日常生活への影響や痛みの強さ・痛みのパターン・痛みの性状などを指標にします。日常生活へ影響するレベルで苦痛を評価し鎮痛剤を適切に使用することで痛みをコントロールでき、患者さんの生活の質(QOL)を向上させられます。

痛みが日常生活へ与える影響は、STAS-Jという評価尺度で評価されます。STAS-Jはイギリスで開発された評価尺度で、0〜4までの5段階で評価します。

0 なし
1 時折または断続的な痛みで、今以上の治療(薬剤による緩和等)を必要としない痛み
2 中等度の痛み。調子の悪い日は痛みが原因で日常生活に支障を来す
3 しばしばひどい症状があり、痛みの程度によっては日常生活や物事への集中力に支障を来す
4 持続的な耐えられない痛み。他のことを考えることができない。

このようにがんによる痛みは耐えられないほど強くなることがあり、また痛みは身体的な苦痛だけでなく、心理的・社会的・精神的にも大きく影響します。がん治療ではしっかりと痛みを緩和をすることが求められています。

  • 末期がんの定義は?

がんは進行性のがんや治療可能ながんがありますが、広義の意味では全て「がん」という一言で診断されます。末期がんと一般的に言っている状態であっても治療できる状態や進行状態である場合は、末期がんと定義づけるのは難しいです。そこで、厚生労働省は「がんの末期」について、「治療を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難または治癒不能と考えられる状態」と定義することにしました。ここで紹介する緩和医療は、末期がんだけでなく患者さんが治療を望まない場合など「患者さんの意思」によって行われる医療です。がんによる痛みや抗がん剤の副作用から解放されたい・してあげたいと考えている方は緩和医療を検討しましょう。

  • がん治療と生活の質の関係

がん治療は、外科処置・放射線治療・化学療法の3種類があります。この中でも生活の質に関係するのが化学療法です。化学療法とは、抗がん剤を使用した治療のことです。抗がん剤は、がん細胞だけでなく健康な細胞まで死滅させてしまうことがあります。これが副作用として現れるのです。副作用の中でも特に吐き気・嘔吐・だるさ・口内炎・四肢の痺れなどは患者さんにとって苦痛と感じ、生活の質の低下を招きます。

■緩和医療とは?

緩和医療とは、がんの痛みや治療の辛さから緩和する「緩和ケア」を目的として行う医療のことです。自然な流れを重んじて死を迎えられるよう、痛み止めや制吐剤を使用して日常生活を送れるようにします。

緩和ケアは医師・看護師だけでなく薬剤師や管理栄養士・心理カウンセラーやソーシャルワーカーなど多職種が連携して進められます。痛み止めや制吐剤の処方は医師が行いますが、「死」を意識してうつ状態や気分の落ち込みがある場合は患者さんや家族に心理カウンセラーが寄り添い心理的な立場からサポートしてくれるのです。

  • 緩和医療の現状

緩和医療はWHOの定めている「除痛ラダー」に基づき、段階的に痛み止めの処方量を増やし、確実にがんの痛みをコントロールしています。また、医療用麻薬の登場により強い鎮痛作用を得ることができ、ほとんどのがん性疼痛から患者さんを解放できるといっても過言ではありません。

このように痛みに対して成績を残している緩和医療も、国民の認知度は高くなっていますが利用している割合は決して高いとはいえません。さらに、緩和医療を選択した人のほとんどが病院で最期を迎えており、自宅で最期を迎えたいという考えを持っていても対応できていない課題も残っています。

  • ターミナルケアとの違い

緩和医療と同義語でターミナルケアというものがあります。緩和医療は、抗がん剤や放射線療法など治療を並行しつつも、苦痛から解放することを目的としています。一方、ターミナルケアはがん以外の疾患に対応していて、完全に治療をやめて最期を穏やかに迎えられるようにしてくれます。どちらも苦痛や痛みからの解放が目的にありますが、緩和医療はがんにだけ適用される言葉です。

■自宅で緩和ケアを受ける選択

自宅という空間は病院よりもリラックスできる療養環境です。病院で知らない人と同部屋で生活するに比べたら、住み慣れた自宅で最期を迎える方が良い思い出になるという方もいます。実際、厚生労働省が調査した結果によると終末期になったときに自宅で最期まで療養したいと回答した国民が約60%を超えているとされています。しかし、それだけの割合が自宅での療養を望んでいるのにも関わらず60%以上の国民が「最後まで自宅で療養するのは難しい」という見方をしていることで、国民のニーズと現実で乖離している部分があるといえます。近年では、入院医療ではなく在宅医療でも緩和医療を受けることができ最期を迎える場所を選べるようになりました。

  • 家族との時間を大切にした緩和ケア

自宅で最期を迎えるという選択は「家族との時間を大切にしている」といえます。自宅であれば一つ屋根の下で生活できるため家族と長い時間一緒に過ごせるのです。施設や病院でも最期を迎えることができますが他の患者さんや入居者に配慮する必要や、面会時間により時間的制限がかかってしまいます。

  • 患者さんの希望に沿った最期を迎えるために

前述でも紹介したように国民の約60%が自宅で最期まで療養したいという希望を持っています。その背景には、病院や施設より自宅の方が住み慣れた環境でリラックスできるからという意見が多いです。

さらに、緩和医療の場所を自宅へ移すことで患者さんの希望を叶えながら最期を迎えられます。例えば家族旅行や行きたかった場所へ行く・やりたいことをやるなど患者さんの希望を叶えられるのは自宅で緩和医療をしていることが大きく関係しているでしょう。

  • 医療のつながりは続く

自宅で緩和医療を受けるとなると、病院や施設と異なり医療とのつながりが途切れてしまうのではと心配される方がいます。前述の調査でも国民の60%以上が最後まで自宅で療養できないだろうと思っている背景に「急変時に対応してくれる病院がなさそう」という意見がありました。

しかし、緩和医療は医師や看護師だけでなくケアマネージャーやホームヘルパーとも協力しながらサポート体制を整えてくれます。また、往診している担当医などが急変時や緊急事態に対応してくれる医療機関を紹介してくれることも多いです。

このように自宅で緩和医療をしているからといって、病院から受診拒否されることはなく、患者さんの意思で自宅でも病院でも療養を受けられます。

■まとめ

がんによる痛みや治療の辛さから解放して、生活の質を向上させるためにも緩和医療は重要になります。緩和医療を開始するタイミングは医師ではなく、患者さんやその家族が決めることができるだけでなく、病院や自宅など場所を選ばないのが特徴です。自分の好きな場所で好きなことをしながら最期を迎えるということができる時代になってきているため、少しでも辛い治療から解放されたいという患者さんは緩和医療を検討して有意義な余生を過ごしてみませんか?

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。

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