在宅緩和ケアにおける実情と問題点を紹介します

在宅医療を利用される方の中には、緩和ケアを求める方がいます。実際に医療を取り囲む環境も緩和ケアへ向けて変動しており、地域包括ケアという名の下に、「住み慣れた地域で最期まで自分らしい暮らしができるような仕組み」作りに動いています。そこで今回は在宅医療における緩和ケアについて紹介していこうと思います。

  • 在宅緩和ケアとは?

在宅医療をしながら緩和ケアを受けることを在宅緩和ケアと呼ぶことがあります。また緩和ケアとは、治療途中の患者さんではなく「死」を受け入れた患者さんが行う行為でもあります。死を迎える場所は病院しかないと思っている方もいますが、家族や友人・知人など関わりのある人から共感や協力を得られれば、自宅などで最期を迎えることも可能です。

近年では、在宅で最期を迎える選択をする人が増えていますが、在宅緩和ケアでは様々な問題が発生しているのも事実です。

▲在宅緩和ケア時の患者さんの問題

在宅緩和ケアを進めていく中で患者さんや家族がどのような問題を抱えていたのか見ていこうと思います。患者さんの問題は主に身体的な問題と精神的な問題に分けることができます。身体的な問題の中で多かったのは「疼痛管理」と「食欲低下・経口摂食困難」です。全体の60%の患者さんが感じていました。他にも癌性疼痛を訴える患者さんも多いです。疼痛には痛み止めを使用することで痛みをコントロールできますが、薬の副作用として便秘を引き起こすことがあり、便秘を訴える患者さんの数も一定数いました。

患者さんの精神的な問題としては不安な気持ちや鬱のような症状が見られることがありました。また、患者さんの家族の問題としては介護の負担に関する問題や医療・介護に関する知識不足を訴える方が多かったです。

 

▲緩和ケアの定義

緩和ケアという言葉は最期を迎えるまでに発生する「苦痛」をできる限り取り除くことをいいます。死に対する不安な気持ちだけでなく、看取りをする家族のメンタルにも配慮をしたケアが特徴的です。在宅で緩和ケアを希望する方の割合は多く、例えば余命1ヶ月と宣告された患者さんのうち約44%は自宅で最期を迎えたいと希望しています。次点には病院が入りますが、残された時間は家族と水入らずに過ごしたいと考える方が多いようです。

 

緩和ケアと聞くと末期癌の患者さんしか利用できないのでは?と感じる方がいますが必ずしも末期癌である必要はありません。実際に末期癌患者に対して癌性疼痛の緩和や抗癌剤など薬の副作用に対する対応などが目立っているだけで、末期癌以外の患者さんにも緩和ケアは行われます。

 

  • 在宅緩和ケアで重要なこと

在宅で緩和ケアを受けるためには3つの大切なポイントがあります。この3つのポイントが整備されていなければ緩和ケアを十分に行えないこともあるのです。

▲患者さんや家族の希望

緩和ケアを希望される場合は、患者さんと家族の希望が重要です。今では少なくなりましたが、昔は患者当人へ病名の申告をしないことや治療方針を決めさせないことがありました。また、患者本人は治療をする気でいて家族の希望と合わないケースも珍しくありません。

さらに、家族が在宅ケアに協力的ではなく看取りは医療者へ任せてしまうという考え方を持っていても在宅緩和ケアが円滑に進まない阻害要因になってしまうのです。在宅緩和ケアは医療者の介入もありますが、日常生活に関しては家族の支えが大切になります。

▲医療システムの整備

緩和ケアを受ける患者さんは体調が急変することがあります。そんな緊急事態に備えて、24時間体勢で対応できる医療システムの整備が重要になってくるのです。医師だけでなく看護師や薬剤師などへ気軽に相談できる体制を整えるだけでなく、必要に応じて往診してもらえると家族の方も安心してサポートできるのではないでしょうか。

他にも在宅でケアできなくなってしまった場合などに備えて後方支援できる医療機関(病院)を確保しておくと家族は安心して協力できるのではないでしょうか。

▲他職種間で協力する

在宅で緩和ケアをしていても体調不良が起きると救急患者として、病院へ緊急搬送されることが少なくありません。地域の病院を含め他職種間で情報共有をすることで、看取りや緩和ケアに対して理解を深めることも重要です。

 

  • 在宅緩和ケアをする上の課題

在宅緩和ケアを利用する人の割合は増えてきましたが、在宅緩和ケアをするためにはまだまだ課題があります。実際どのような課題があるのか紹介していこうと思います。

▲医療環境の整備

在宅で緩和ケアを受けたいと考えている方でも、緩和ケアや訪問診療をしてくれる医療機関がなければ在宅緩和ケアを実施できません。皆さんの自宅の近くに緩和ケアや見取りまで対応してくれる医療機関がありますか?土日関係なく24時間体制でサポートをしてくれる医療機関はまだまだ少ないです。医療機関の増数だけでなく、それに従事するスタッフの確保も課題となります。

▲後方支援の強化

在宅緩和ケアをする上で、家族に万が一のことがあった場合、引き継いでくれる後方支援が必要になります。後方支援として代表的なものは病院がありますが、他の親族の方が協力するという方法もあります。

▲看取りに対する知識普及

「看取る」ということは特別なことだと考えている方が多いです。看取ることは最期を迎えることで、家族であれば誰でも行うことができます。また、看取りは病院でなければできないと思っている人がいますが、在宅でも看取れる環境が整いつつあります。看取りに関する正しい情報や知識を普及させることも課題の一つになるのではないでしょうか。

▲在宅緩和ケアの情報開示

在宅にて緩和ケアをしている方の割合は増加していますが、実際にどれくらいの割合がいて緩和ケアを行うのに毎月どれくらいの費用がかかったというデータが不足しているように感じます。在宅緩和ケアに関する情報開示件数が多くなれば、実際にどれくらいの費用がかかるのかなどがわかり在宅緩和ケアに踏み出しやすくなるのではないかと思います。

▲訪問看護師の業務拡大

厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」というガイドラインを制作しています。他にも全国国民健康保険診療施設協議会が「在宅での看取りに関する手引き」を作っています。

訪問看護師をはじめとする在宅緩和ケアに従事する人からしたら、このようなガイドラインの制定は業務を進めやすくしています。しかし、それと同時に訪問看護師など現場で主力として働く業種の人からしたら業務範囲が拡大していることも意味しているのです。

看護師の中でも看取りに特化した看護師の育成をする・看取りに特化したコメディカル職の育成をするなどが大切になります。

▲家族の協力

患者さんが在宅で緩和ケアを受けることを希望しても家族の協力体制が整っていないと緩和ケアを進められません。これは家族の仕事や居住地だけでなく、患者さんの家族構成なども関係してきます。

また、親子といっても子供の代に自分の面倒をみてもらうのは申し訳ないという考えを持っている方もいます。確かにその気持ちは分からなくないですし、実際に子供へ頼めないということで在宅での療養を断念される方がいますが、最期のお願いくらいしても良いのではないかと思います。

  • 在宅緩和ケアは進み続ける

2014年度から国を中心に地域包括ケアシステムを整備しようとしています。これは今後訪れる少子高齢化を見据えて、病院完結型の医療から地域密着型の医療へとシフトチェンジをしようとしています。さらに、「治す医療」だけでなく「治して支える医療」をしようと流れが変わっているのです。

在宅緩和ケアの目的は患者さんの病気を完治させることではなく、生活の質(QOL)を向上させることが目的です。個人の尊厳を守って、患者さんの意思に沿った治療を進めることで、最期まで自分らしく生きることができるのではないでしょうか。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。