訪問診療における看護師の役割とやりがい・仕事内容を解説します

訪問診療の数は増加傾向を示しています。これは患者さんが自分で医療を選べる時代へなっている証拠です。訪問診療では医師はもちろん、看護師も重要なキーパーソンとして治療へ参加しています。そこで今回は訪問診療における看護師の役割や仕事の内容について紹介しようと思います。

  • 看護師のやりがいとは?

看護師は医師の診療をサポートして、治療が円滑にできるようにするだけでなく患者さんに寄り添うことが主な仕事です。訪問診療においても看護師は重要なキーパーソンとなっています。看護師のやりがいについて話を進める前に看護師という職業が時代と共にどのような変化をしてきたのか紹介していきます。

▲看護師の登場

看護師という職業が登場したのは1850年代とされています。この時期には看護師として有名なナイチンゲールが登場したことで看護師という職業が確立したとされています。それまでは病人の看護や療養のサポートは、家族や親戚など身内によって行なわれていました。ヨーロッパ周辺においては病院がありましたが、そこで働いていた女性は教育をまともに受けておらず、現代でいう看護師とは大きく異なったのです。

ナイチンゲールの登場で、近代看護が確立されていきます。戦地から帰還したナイチンゲールは看護のあり方や考え方を「看護覚書」として発表しました。ちょうどこの頃、日本は明治時代で西洋医学が導入され始め、初めて「病院」という施設が存在するようになりました。また、病院の登場と共に職業としての看護師も登場しました。1915年には「看護婦規則」が制定されたことで日本で「看護婦」という言葉が定着していきました。看護婦規則では、看護婦の資格は女性でなければいけなかったと明記されているのが特徴です。

▲看護師教育の変化

日本で最初に看護師教育を始めたのは日本赤十字社です。救護看護師を養成するため、1886年に博愛社病院を設立しました。その4年後、1890年から救護看護師の養成を開始しています。救護看護師は1891年に発生した濃尾地震において救護活動を行い、多くの人をサポートしました。戦時中も看護師養成は続きます。日本赤十字社が中心となり、養成期間を3年として看護師養成を続けていましたが、太平洋戦争に突入すると養成期間を2年へ短縮して看護師養成を行います。実際、この当時の看護師は戦地において負傷した兵士や民間人の治療をしていたという記録が残っています。戦後復興も進み、日本国内各地に看護師を養成する看護学部が設立され、「女性だけ」の仕事だった看護婦は「看護師」という名称になり、男性でも就業できるようになりました。看護師というのは時代の流れと共に教育環境や役割が変化しているといえます。

▲看護師のやりがいも変化している

看護師の仕事内容などが時代の流れと共に変化しているように、看護師のやりがいも変化しているといえます。例えば、戦時中であれば負傷した兵士や民間人が回復することがやりがいでしたが、現代の看護師は患者さんが日常生活へ戻れるようになることなどです。他にも在宅医療が増えてきている現代では、医療知識がほとんどない患者さんの家族へ対して適切な医療の提供や知識面のサポートをするなど活躍の場面が増えてきています。

  • 訪問診療における看護師の役割

前述でも紹介しましたが訪問診療において看護師の活躍する場面が増えてきています。そこでここからは看護師が訪問診療においてどのような役割を担っているのか紹介したいと思います。

▲患者さんの治療サポート

訪問診療に限らず、看護師の仕事でメインを担うのが治療におけるサポートです。病院で長期療養している患者さんに対してはオムツ交換やベッドメイクなどもしている看護師が多いですが、訪問診療でも治療のサポートをします。

点滴をしている患者さんの点滴交換やカテーテルの交換はもちろん、検温や病状聞き取りなど健康管理にも大きな役割を担っています。

▲患者さんとその家族の心理的サポート

訪問診療をはじめとする在宅医療の利用率は増加傾向ですが、実際に在宅医療を利用した経験がある人は少ないです。その結果として心理的な負担を感じてしまう患者さんやご家族がいます。そんな方々の心理的なサポートも看護師の仕事の一つです。心理的サポートの中には日頃感じている治療に関する不安な点や不満に思っていることなどを聞き取り、医師や医療従事者間で共有することなどがあります。

 

▲訪問診療全体の調整

患者さんの治療サポートの中に含まれるような内容ですが、訪問診療のスケジュール調整や確認も看護師が関係しています。患者さんやご家族と電話などで密に連絡を取り合い、緊急時のスケジュール調整もしています。

他にも治療で使用する備品類を用意です。

  • 訪問診療における看護師のやりがいで一番大きいのはケア

ここまで訪問診療において看護師がどのような役割を持っているのかなどを紹介していきましたが、病院や診療所で働く看護師と大きく違うことは「ケア」に携わることです。ケアという言葉には身体的なケアや心理的なケアなど様々な意味が含まれていますが、訪問診療では心理的なケアが重要となります。そこでここからは訪問診療界隈でよく使われるグリーフケアという言葉について紹介しようと思います。

▲グリーフケアとは?

グリーフケアとは身近な人の死を体験してしまった人に対して、悲しい気持ちへ寄り添い悲しみから解放させることです。グリーフケアのグリーフとは「悲嘆」という意味をします。また、身近な人というのは親友や兄弟・姉妹・両親・子供など自分の精神的な支えとなっていた存在を指します。

グリーフケアが日本で行われるようになったのは1970年代からです。1970年代までは日本の医療水準は高いとはいえず、乳幼児の死亡率が高く、余命もそこまで長いわけではありませんでした。病院で行う「病院医療」が発展していくことで、余命は長くなっただけでなく、自宅で死にゆく姿や過程・看取るなどの習慣がなくなりました。その結果、突然家族が亡くなったという経験になってしまう人が多くなり、グリーフケアの必要性がでてきたのです。

また、1976年にリビングウィルという考え方がアメリカで法制化されたこともグリーフケアを進める要因の一つになりました。リビングウィルとは、延命治療の有無など最期の迎え方を自分で意思表示できるといったものです。アメリカで法制化されたリビングウィルの影響を受けて、日本では同年に安楽死協会という協会が設立されます。そして、末期がん治療の患者さんを対象にした、ホスピス病床の建設も行われました。このように1970年代は日本国内で「病気を治す」だけでなく「病気を受け入れる」ことが始まったといっても過言ではありません。

しかし、グリーフケアという言葉はあるものの実際にグリーフケアの実施は行われていませんでした。これは実際にグリーフケアが必要な遺族はいるものの、グリーフケアという言葉の存在は知らず、知っていてもどこでグリーフケアが受けられるか周知されていなかったことが原因です。そんなグリーフケアが世の中に大きく知られるきっかけとなったのが2005年に発生した福知山線脱線事故です。突然の家族や恋人との別れで精神的負担を感じる遺族は少なくありません。この事故以外でも日本では年間3万人近くの人が自殺を選んでおり、自殺未遂をした人の家族や自殺で家族を亡くした遺族・友人に対してもグリーフケアが重要という施策を国は策定しています。

▲グリーフケアが必要な症状は?

グリーフケアを実施すべき人には共通してある症状が見られます。

・突然おそう悲壮感や怒り、鬱症状、不安な気持ち、無気力感

・睡眠障害や食欲減退

・集中力の低下

このような症状が出ている場合はグリーフケアを受けるべきです。放置してしまうと外傷性ストレス障害(PTSD)やうつ病など精神疾患を発症してしまうことがあります。

▲なぜ看護師がグリーフケアをするのか

グリーフケアを専門とした認定資格などが存在しますが、なぜ看護師がグリーフケアをするのでしょうか。それは、看護師が訪問診療の中で家族と患者さんと医療従事者の架け橋となる存在になっているからです。

看護師は日頃の治療や健康管理を通じて、患者さんや家族と継続的な関わりをしています。その過程で信頼関係が構築でき、家族に寄り添ったグリーフケアができるのです。

  • 今後も増える訪問診療

今後も訪問診療の実施数は増加傾向となるでしょう。その中で看護師が活躍できる機会や感じることができるやりがいは多いです。看護師がやりがいを感じながら働くことで、患者さんやご家族のみなさんへ良質な医療が提供できるものと考えております。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。

 

 

メドアグリケアからのメッセージ