訪問診療と往診で何が違うのか?その差って何か解説します
在宅医療という言葉にも市民権が与えられるようになりました。多くの方が「自宅で医療を受けることを在宅医療という」という認識でいるのではないでしょうか。概ね的をえていますが、在宅医療という言葉の中には訪問診療と往診という2つの表現があります。今回はその2つの言葉の違いだけでなく、具体的にどこが異なるのかなども紹介していこうと思います。
- 訪問診療と往診の違い
在宅医療には訪問診療と往診があります。どちらも医師が自宅や入居している施設へ訪問し診察・処置を行うことをいいます。では、2つの言葉はどのような違いがあるのでしょうか。
▲訪問診療と往診
訪問診療と往診の大きな違いは「定時」か「緊急」かです。定時というのは訪問する日時をあらかじめ決めておくことで、「隔週火曜日の17時から」などと取り決めされているものを指します。一方、緊急時とは体調の急変やトラブルが発生したときのことです。
訪問診療は診療スケジュールが組まれていることが多く、ここでは「定時」に分類されます。往診は患者さんの体調が急変した際やトラブルが起きたときに利用され、「緊急時」に対応することが分かりますね。言葉だけの意味にはこのような違いがあったのです。
▲往診の歴史
一昔前まで往診は日本の医療のベースとなっていました。江戸時代などは原則、医師や歯科医師はいたものの、病院や診療所と呼ばれる「医療機関」は建っていませんでした。治療が必要な患者さんがいれば患者さんの病床へ出向き必要な処置をしていたのです。明治時代になると病院など医療機関が建設されましたが、往診の文化は根付いたままです。昭和初期でも、多くの家庭で往診を利用していたのではないでしょうか。医療機器の充実に伴い、病院で受ける医療へとシフトしていき、平成時代の医療とは医療機関で受けることがメインとなっていました。
▲訪問診療の開始はいつから?
元々往診がありましたが、これは緊急事態だけに限局していました。一度体調を崩し、その後1ヶ月程度患者さんの自宅へ往診に通うことはありましたが、現代の訪問診療とは大きく異なります。訪問診療の歴史を紐解いていくと1980年代まで遡ります。病院で受ける医療が中心でしたが、病院のたらい回しや植物状態の患者さんへの対応などで問題視されることも多くなりました。そんな中、1981年に東京都や京都府・新潟県・長野県などの医師が中心となり定期往診というのを始めることになりました。その後、1986年に定期往診は「訪問診療」として保険診療の適用となりました。
実際、訪問診療を始めてみても患者さんやご家族の方からすれば24時間体制で対応してくれるのか気になるかと思います。24時間体制を整えながら、訪問診療を提供している医療機関は多数ありますが、多くの医療従事者が「24時間体制で医療を提供すること」へハードルを抱えています。24時間体制で医療を提供できるかどうかということが訪問診療の今後の大きな課題となっています。
- 訪問診療と往診の具体的な違い
訪問診療と往診の違いについて大まかな説明をしてきました。ここからは具体的に何が異なるのか紹介していこうと思います。
▲保険点数の違い
訪問診療も往診も健康保険が適用されます。訪問診療にかかる保険点数は以下のようになっています。
在宅患者訪問診療料Ⅰ(1日につき)
在宅患者訪問診療料1(週3回まで)
同一建物居住者以外:833点
同一建物居住者:203点
在宅患者訪問診療料2(月1回、6ヶ月を限度)
同一建物居住者以外:830点
同一建物居住者:178点
「在宅患者訪問診療料Ⅰ」とは、一般的な訪問診療のことを指します。従来であれば1患者につき1医療機関しか算定できませんでしたが、複数の医療機関が訪問診療を行った場合に「Ⅱ」というのが用意されています。例としては、在宅時医学総合管理料などを算定している医療機関から紹介された患者さんへ「Ⅱ」は算定することになります。
在宅患者訪問診療料Ⅱ(1日につき):144点
「在宅患者訪問診療料Ⅱ」は6ヶ月を限度にして毎月1回だけ算定できます。これは「専属の医師・専門医などを取得している医師」でなければ治療が困難な診療などに適用されます。
また、これら「Ⅰ」と「Ⅱ」に対して以下のものを加算できます。
在宅患者訪問診療料Ⅰ・Ⅱへの加算
乳幼児加算(6歳未満):400点
患家診療時間加算:100点
在宅ターミナルケア加算(Ⅰの1)
機能強化型の在支診・在支病(病床あり):6500点
機能強化型の在支診・在支病(病床なし):5500点
上記以外の在支診・在支病:4500点
在支診・在支病以外:3500点
在宅ターミナルケア加算(Ⅰの1以外)
機能強化型の在支診・在支病(病床あり):6200点
機能強化型の在支診・在支病(病床なし):5200点
上記以外の在支診・在支病:4200点
在支診・在支病以外:3200点
看取り加算:3000点
死亡診断加算:200点
患家診療時間加算とは、診療時間が1時間を超えた場合、30分またはその端数を増すごとに加算されます。看取り加算は死亡日に診断や訪問診療をし、在宅で患者を看取った場合に加算されます。その際に死亡診断書を書いた場合死亡診断加算がされます。
往診には以下の点数が加算されます。
往診料:720点
機能強化型の在支診・在支病(病床あり)
緊急往診加算:850点
夜間休日往診加算:1700点
深夜往診加算:2700点
機能強化型の在支診・在支病(病床なし)
緊急往診加算:750点
夜間休日往診加算:1500点
深夜往診加算:2500点
上記以外の在支診・在支病
緊急往診加算:650点
夜間休日往診加算:1300点
深夜往診加算:2300点
在支診・在支病以外
緊急往診加算:325点
夜間休日往診加算:650点
深夜往診加算:1300点
死亡診断加算:200点
現在の日本の保険システムでは、訪問診療料をベースにして往診をする度に往診料やそれに付随する加算点数を上乗せしていきます。
- 訪問診療と往診の課題の違い
保険点数や保険上の取り扱いの違いについて紹介しましたが、次に紹介するのは訪問診療と往診の課題です。
▲ご家族の協力の有無
訪問診療や往診を利用する場合、常に自宅で患者さんが療養していることになります。しかし、療養にご家族が協力的かどうかはそれぞれの家庭で異なります。いずれ介護が必要になってきたとしてもヘルパーさんが24時間体制でついてくれることは少ないですよね。患者さんは在宅医療を希望しているにも関わらず、ご家族の了承が得られないために断念されるケースも少なくありません。
▲病院から訪問診療をする医療機関の紹介
実際に一部の病院ではしているようですが、病院から退院するときに「〇〇〇〇」というところで訪問診療を受けてみては?というような話を進めるようです。親切心で紹介してくれているところもありますが、紹介してくれたら病院へいくらかマージンが入るようなシステムができてしまうと患者さんにとって良質な医療とはいかなくなります。訪問診療を行う医療機関は患者さんやご家族の方が決めるようにしましょう。
▲往診はスピード勝負
往診を利用する方は体調の急変やトラブルなど時間との勝負であることが多いです。大まかではありますが、患者さんの自宅へ伺うまでの時間は計算できます。しかし、交通トラブルなどが重なってしまうと往診でスピーディーに訪問できなくなってしまいます。要請があり、どれくらいの時間で患者さんの自宅へ伺えるかは今後も課題となりうるでしょう。
▲医療スタッフ間の連携不足
医療職には医師・看護師だけでなく、歯科医師・薬剤師・理学療法士・言語聴覚士など様々な職種があります。しかし、それぞれの職種で連携が取れているかといわれればそうとは言い切れません。密に連絡をとり、訪問診療や往診で引継ぎミスが起きないようにすることも課題となります。
- 違いはあれど必要な両者
訪問診療と往診は言葉的な意味合いや保険上の違いがありますが、今後の日本で必要な存在に変わりありません。2つの言葉の違いを十分に理解して、みなさんの中でどちらを利用するか選択してください。
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