在宅医療の抱える課題とその対策方法を紹介
在宅医療を受ける患者さんの数は年々増加傾向です。実際に厚生労働省が集計したレセプト件数は2006年で272,540件だったのが、2014年には645,992件となっています。単純に3倍弱増加していることがわかります。また、国民の意識も病院で受ける「病院医療」よりも「在宅医療」へと変革が起きています。そこで今回は増加し続ける在宅医療が抱えている課題と対策方法について紹介していこうと思います。
- 在宅医療の現状
在宅医療とは、自宅や入居している老人ホームなど「自分の安心できる」環境で受ける医療の総称です。在宅医療を継続して行うためには、4つの基本的な柱が重要とされています。まずは4つの柱について紹介していきましょう。
▲退院支援
現状、風邪を引いた・腹痛がするなどの自覚症状を訴えたときに第一選択肢として訪問診療を利用する人は少ないでしょう。多くの方は医療機関を受診して、検査・診断・治療を始めます。診断の結果、病院など入院下における医療が必要と判断されれば入院をして、手術や投薬治療などを行います。その後、退院してから定期検診や継続的な治療を選ぶときに在宅医療が関係していきます。在宅医療を開始するときは退院時から利用することが多く、病院と訪問診療を行う医療機関で連携が取れている必要があります。連携は病院と訪問診療を行う医療機関だけでなく、患者さんが利用している薬局や歯科医院・地域包括支援センターなどとも密な連携を取る必要があります。
▲療養支援
在宅医療で重要になるのが日常的な療養支援です。患者さんの疾患を把握して、重症度に応じた療養を包括的かつ継続的に提供していく必要があります。退院支援の項で触れたように、病院や薬局だけでなく地域包括支援センターなどの行政機関と連携して療養支援は行われる必要があります。連携を取ることで患者さんのニーズにあった療養を提供できるだけでなく負担軽減へつながり適切なサービスが行われるのです。
▲急変時の対応
在宅医療を受ける患者さんやその家族の心配事として急変時にどうしたら良いかわからないということがあります。病気は土日祝日や夜間という事情を汲んではくれません。時間に関係なく急変してしまうと家族の方はどういう処置をすれば良いかわかりませんよね。
▲看取り
在宅医療を利用する方の最終的なゴールは看取りではないでしょうか。いかに自分らしい最期を迎えられるか、いかに自分の希望する環境で最期を迎えられるかなどを個人が決められる時代になっています。在宅医療を語る上で看取りも重要な要素の一つになるのです。
- 在宅医療の抱える課題
このように在宅医療は4つの柱で構成されていますが、実際にこれら4つの柱がしっかりと立っているとは限りません。そこで実際にどのような課題が在宅医療を取り巻いているのか紹介していきましょう。
▲同職種スタッフ間の連携不足
医療職には様々な職種があります。医師・看護師だけでなく、歯科医師・薬剤師・理学療法士・言語聴覚士などです。同じ医療職という括りにはなりますが、それぞれの職種で連携が取れているかといわれればそうとは言い切れません。在宅医療の柱を紹介する過程でも地域と医療機関の連携が重要だと書きました。各地域においても地域特性に応じて医療職間だけでなく、他職種間で連携する必要があります。職種間での連携が疎になってしまうと医療と介護で地域にあったサービスが提供できなくなってしまいます。
▲多様な暮らし方へのアプローチ
日本社会は少子高齢化が進んでいます。結果として、生涯独身者の割合も増加しているのです。今では家族がいる方や子供がいる方が多いですが、これからは子供のいない家族の増加や未婚者(生涯独身者)が増えていくことで問題が起きるでしょう。持ち家がない人は新しく賃貸契約しにくくなります。また、高齢者の増加により入居できる施設数にも限界が出てきてしまいます。仮に施設数が増えたとしても、医療や介護と連携が取れていなければアパートで暮らしているのと変わりません。
全世界的に多様性が求められるようになってきており、日本でも例外ではありません。さらに多様性に富んだ暮らしができるようなアプローチが求められています。
▲認知症に特化した対応力の向上
現在、日本で増加傾向の疾患があります。認知症です。脳へタンパク質が沈着することで認知機能の低下を引き起こす「認知症」は治療よりも症状の進行を遅くすることしかできません。認知症が進行すると身内と他人の区別がつかなくなり、家族の方でさえサポートをするのが大変になってしまいます。現状では認知症が進行した方の入居できる施設には限りがあり、これも在宅医療を進める上で課題といえるのではないでしょうか。
▲専門医の在宅医療への参加
医師や歯科医師などには「専門医」という付与資格があります。医師免許・歯科医師免許を保持した上で専門分野について勉強すると専門医という付与資格が与えられます。簡単にいうと専門医を持っているとその分野について詳しいという証明になるわけです。
専門医は腎臓や肝臓・心臓・各種がん治療・整形外科分野など多岐に渡ります。しかし、専門医を持っている医療従事者は病院で勤務していることがほとんどです。患者さんの中には末期がんで発生するがん性疼痛に対して専門医の適切な処置を希望している方も少なくありません。専門医と連携した医療が実現できれば在宅医療がより良い医療へと変化していくのではないでしょうか。
▲家族の課題
親や親戚が在宅医療を希望したとしても、全ての家族が好意的な感情を持つとは限りません。また、在宅医療をする前提で家を建てている人は少なく、自宅が在宅医療をするに最適な環境だといえない人も多いですよね。在宅医療が必要になったときは高齢になっていることが多く、在宅医療に適した自宅にリフォームすべく新しくローンを組もうにも難しいことが多いです。居住環境など総合的にサポートをする必要があります。
- 課題への対処方法
在宅医療を取り巻く課題に対してどのような対処法があるのでしょうか。個人単位だけでなく自治体などにもアプローチが必要になりますが、対処方法をまとめていきます。
▲ケア付き住宅の整備
特別養護老人ホームへの入居希望者は年々増加傾向です。このようなケア付住宅は日本の高齢化をみて足りているとはいえません。だからといって施設数を増やしても良いというわけではありません。施設で働く介護スタッフの数も足りないのが現状です。このような問題を包括的に対処していくことで、在宅医療しやすい物件へ入居し、在宅医療を受けられる患者さんが増えると考えています。
▲見守りサービスの強化
例えば在宅医療に非協力的な家族がいた場合、患者さんが身の回りのことをできるのであればひとり暮らしをしても良いと思います。ただし、見守りサービスのように万が一起きたときに対応できるシステムを導入しておくべきです。また、見守りサービスはご家族がサポートしている時でもご家族を支える転ばぬ先のつえになりますので検討しても良いのではないでしょうか。
▲補助金などの利用
患者さんが自宅療養を希望するため、自宅をリフォームする場合、自治体によっては補助金が出ることがあります。このような情報は地域に地域包括支援センターや自治体の窓口で聞くことができます。制度を正しく利用して、暮らしやすい環境を作りましょう。
- 課題を見つけて対処する
在宅医療を取り巻く課題はいくつかありますが、その課題は患者さんやご家族により異なります。そして、その課題は一度に全てを解決しようとしても解決できません。課題が出てきたときにその都度対処して患者さんだけでなく、ご家族の方もサポートしやすい環境を作っていきましょう。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。