終末期における患者さんとご家族の死への受容過程

終末期医療を取り巻く環境は非常にセンシティブです。患者さんはもちろんですが、ご家族の方も患者さんのことが心配で胸が張り裂けそうになる方もいるのではないでしょうか。今回は終末期医療においてご家族の方がどのように死を受け入れていくのか。患者さんはどのような受容過程を踏んで死を受け入れていくのかを紹介しようと思います。

  • 終末期医療の進み

末期がんなどで治療できないような状態になると、終末期医療を選ぶことができます。近年は、病院で行う終末期医療だけでなく自宅で受ける在宅医療もあります。終末期医療は別名:ターミナルケアと呼ばれており、人生の終末期を迎える時に延命処置をするか自分の生活を大切にするかの選択をすることになります。

ターミナルケアと似たような言葉で緩和ケアという言葉あります。緩和ケアはターミナルケアと同じではなく、がん患者さんのがん性疼痛など苦痛を緩和する治療です。苦痛を取り除くことで生活の質(QOL)を向上させます。ターミナルケアは治療をしませんが、緩和ケアは苦痛を取り除きながら治療を進めていくのが特徴です。

▲ターミナルケアの内容

ターミナルケアは大きく3つに分けることができます。

■身体的ケア

がん性疼痛など痛みを薬でコントロールするケアです。他にも身体へ栄養を与えるために食事内容の吟味や、経管栄養(鼻から胃や腸へ栄養を送る)の検討も身体的ケアに分類されます。身体を清潔にすることも身体的ケアに分類されます。

■精神的ケア

どこで療養しても普段と変わらない生活ができるようなサポートをするのが精神的ケアです。患者さんの好きな音楽を流す・好きな映画を見るなどリラックスできる環境作りを心がけましょう。ご家族が満足するのではなく、患者さんが満足できれば良いのです。

また、出来るだけ患者さんのご家族や仲の良い友人が近くにいると精神的な安定につながります。患者さんに孤独感や孤立感を与えないようにしましょう。

■社会的ケア

病院でも在宅でもターミナルケアをするにはお金がかかります。金銭的な負担は自治体によって異なりますが、助成金や補助金で対処できることもあります。医療費が負担になっている場合は自治体の窓口へ相談してみましょう。

  • 人の死と受容過程

人間は死を目の前に突きつけられると5つの段階を経て、死を受け入れるとされています。これを死の受容5段階と呼ばれており、死に向かっていく過程で大切なことです。

死の受容5段階を提唱したのはキューブラー・ロスという学者です。キュブラー・ロスはシカゴにある病院で2年半に渡り200人以上の「死を目の当たりにしている」患者さんへインタビューをしました。その中で、患者さんが死を受け入れるまで5つの段階を踏むことを発見したのです。

5段階は順に

「否認・孤立」

自らが死にせまっていることを否定して、医師や医療機関の検査が間違っていると感じる状態です。

「怒り」

死に対して否定してし続けても無理だと思うと、なぜ自分が死ななければいけないのかと怒りの感情が生まれます。他にも恨みの気持ちをはじめ、外部に対して感情を吐露する期間へ入ります。

「取引」

自分の行動一つで生死を分けるのではないかと思い、徳を積むような行為をします。

「抑うつ」

自分の良い行動をしても病状が改善しない場合などは喪失感が強くなり鬱のような症状が出てきます。

「受容」

死に対して抵抗する気持ちもなくなると憔悴し、感情がなくなります。最終的には今の状況から解放されたいという気持ちを抱く人が多くなります。

この過程のベースに「希望」の感情をもつ人もいます。人間はどれだけ絶望的な状況になっても希望を捨てない生き物で、死ぬ瞬間まで希望を持ち続けている人がいるようです。

▲死の5段階はなぜ起きる?

キューブラー・ロスの提唱した死の5段階はあくまで「防御反応の一つ」という解釈をしています。誰しも死を受け入れるには過程を踏み、その中で死に抵抗したくなるものです。もちろんこの死の5段階は患者さんだけでなく、ご家族の方でも起きます。自分の最愛の家族に「死」という避けられないイベントが近づいていると、ご家族の方も患者さん同様に心理的な動揺が起きます。

  • 家族の受容過程に沿った「その後」の手続き

患者さんのご家族もキューブラー・ロスの死の5段階を受容する過程で、「その後」の話を進めないといけません。その後とは、患者さんが最期を迎えた後のことで悲しみの中でもすべきことがたくさんあることを知ってもらいたいです。実際に人が亡くなった後にはこのようなことが控えています。

▲相続関係の手続き

故人の所有している土地や物件・金融商品など財産と呼ばれるものの相続について手続きを進めなければいけません。相続人がいれば相続人同士で集まり、必要書類を揃えましょう。生前に患者さんから「〇〇という風に相続しなさい」という指示があればそれに沿って相続の手続きを進めましょう。亡くなってから時間が経てばたつほど、相続問題は複雑になる傾向があります。悲しい気持ちの中では大変でしょうが、一つ一つ問題を解決していきましょう。

▲患者さんの意思に沿った葬儀

近年、家族葬を希望される方が増えています。中には通夜を希望しない方もいるほどです。葬儀に関して細かなことなど患者さんが希望を持っているのであればそれ通りにことが進むような手続きを踏むのもご家族の仕事の一つになります。

  • 死の兆候を知ろう

終末期において患者さんやご家族にとって大切になるのは「いつ最期を迎えるのか」です。実際は訪問診療している医師により残された時間がどれくらいかなどの予測が立てられますが、一般的に死の直前に見られる症状について紹介します。

▲力がなくなる

患者さんの手を掴んだときに握り返す力が弱くなると死期が近づいていると予測できます。他にも今まで自分でできていたことができなくなるなども、死期がせまっている兆候です。力がなくなり疲れやすくなることで、1日の大半を寝て過ごすようになりますが、患者さんが高齢の方だと寝ている時間は生理的に長くなります。

▲食事の量が減る

死期が近くなると食欲低下が現れます。食欲低下と同時に喉が乾きにくくなるのも特徴です。これは身体が栄養や水分を必要としなくなるから起きます。ご家族の方は本人が嫌がっても強引に食べさせようとしますが、拒絶反応が起きることがあるため無理に食べさせないようにしましょう。患者さんが希望すれば少量のアイスクリームや冷たいジュースなども良いと思いますが、基本的には患者さんの希望する量を摂らせてあげましょう。水が飲めなくなってしまったら、常用薬の形状を変える必要がありますので、お気軽に医師や看護師へお伝えください。

▲排泄の回数が減る

食事の量が減ることで排泄の回数も減少します。死期が迫っている患者さんの多くはオムツを着用していますが、この時期になると尿や便中の水分が少なくなるためオムツを着用していても不快感は少ないです。医療行為としては患者さんの身体を清潔に保てるお手伝いをメインで行っています。

▲血流が悪くなる

死期が近くなると血流が悪くなります。その結果、手足が冷たくなり色も青っぽくなります。指先や爪の色が青っぽくなると死期が近い知らせを意味します。血流は悪くなりますが、患者さん本人は寒さを感じることはなく、寒いだろうと布団を何枚もかけると重いと感じるかもしれません。

▲呼吸が変わる

人間は死期が近くなると呼吸が浅く弱くなります。だんだんと呼吸苦のような症状が出てきて、5秒程度無呼吸になる呼吸パターンが見られたら死期が近づいている証拠です。中には浅い呼吸を何度もすることがあります。最終的に患者さんの意識がなくなり、昏睡状態になるとゴロゴロという音を立てながら呼吸を始めます。ご家族からすれば苦しそうと感じますが、患者さんの意識はないため苦しいと感じてはいないことが多いです。

▲意識が薄くなる

死期が近づいてくると患者さんの意識が薄くなります。死の直前に見られる昏睡状態になるのが亡くなる数時間前の方もいれば数週間昏睡状態になる方もいます。幻想が見える方や独り言を呟く人もいます。このような死への段階を受容するのも家族の仕事の一つです。

  • グリーフケアが重要

患者さんの死に対して悲嘆することをグリーフといいます。これからの終末期医療では、患者さんのターミナルケアも重要ですが残されたご家族のグリーフケアにも力を入れる必要が出てくるでしょう。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。

 

 

メドアグリケアからのメッセージ