在宅ケアにおける患者さんご家族が感じる看護のあり方と家族の看護
患者さんが自宅などで医療を受けることを在宅医療といいます。在宅医療を進めていく中で一番大変な思いをしているのは、病気療養をしている患者さん本人です。そんな患者さんを支えようと同居しているご家族や在宅医療を支えているご家族の方は日々尽力しているのではないでしょうか。そこで今回は患者さんが看護のあり方についてどのような思いを持っているのか、またご家族が看護にどのように介入していければ良いかなども紹介していきます。
- 終末期医療において患者さんご家族が求めるものとは?
医療現場ではたびたび患者さんサイドと医療者サイドで意見や認識の違いが起きます。これは医療の解釈が特殊なことも関係しています。例えば、飲食店であれば先着順に案内されますよね。しかし、医療はそうとは限りません。風邪で来院した患者さんと大量出血で来院した患者さんでは「優先度」が異なります。風邪の患者さんも症状は十人十色で、個人的に苦しいと感じる方は自分よりも後に来院した患者さんが先に処置を受けていることへ苛立ちを感じることがあるようです。医療を勉強している方や従事したことがあれば「順番」ではなく「病状」が優先されることが理解できるのですが、病気で苦しんでいる患者さんはそうはいきません。このように患者さんサイドと医療者サイドでは認識の違いがあるのです。
▲ご家族の思うあるべき看護
神戸市看護大学看護学部の安藤悦子氏が「終末期がん患者の家族が認識する望ましい看護」について調査をまとめていました。その調査結果を抜粋して紹介していこうと思います。
この調査は終末期がん患者のご家族を対象に、遺族として看護に対して何を重要視したのか集計しています。つまり、この調査結果をみると患者さんのご家族が求めているニーズがわかるのです。調査対象者は978名で、そのうち616名が返送してくれました。大まかな結果は以下の通りです。
看護師が患者さんと接する上で求める看護のあり方の中で意見が多かったものは
「いつも患者さんが清潔を保つよう援助する」
「体の苦痛を和らげるために努める」
「ケアや処置を行う際に苦痛がないようにする」
「患者さんが話せなくなっても思いを推しはかり丁寧に接する」
「心の苦痛を和らげるよう努める」
「患者さんの話をよく聞く」
「自尊心に配慮して排泄の援助をする」
「入浴やマッサージなど気持ちよく感じられるケアをする」
「患者さんの気持ちが和むような会話をする」
「日常生活の世話をする際に患者さんのペースを大切にする」
「患者さんの希望を取り入れた看護をする」
これらの回答は90%以上の人が「重要に感じる」または「とても重要に感じる」と回答した項目になります。
この他にも患者さんのご家族が看護師へ求める看護のあり方も調査していました。その結果は以下の通りになります。
患者さんのご家族が看護師へ求める看護のあり方で多かったものは
「ご家族の質問に誠実に答える」
「ご家族にその時々の患者さんの状態や治療について説明する」
「医師とご家族の仲介役をする」
「ご家族に患者さんの病状の変化などを説明していく」
「患者さんが今後どのような経過を辿っていくか前もって説明しておく」
「ご家族が不在の間に患者さんの状況を説明する」
「医師の説明をわかりやすく解説する」
「看取りできるように支援する」
これらの回答は90%以上の人が「重要に感じる」または「とても重要に感じる」と回答した項目になります。
▲実際にある看護師への不満
この調査では自由回答欄を用意して遺族の方が自由に明記できるようにしました。その中で具体的にこれが不満だったという意見がありました。「臨終前・後で家族として何をすべきだったのか教えて欲しかった」という意見や「無表情で仕事をする看護師に不快感を感じた」という意見、「他の患者さんの話をしながらケアをしているときは粗末にされた感じがした」などの意見が挙げられました。医療職であれば看護師という職業の忙しさや仕事の中でコミュニケーションをとる重要性などがわかりますが、そうでない場合は自分のことや家族のことしか考えられなくなる傾向が見られることもあります。
- 在宅医療で家族ができることはあるのか
最期を前提にした終末期医療での看護のあり方について紹介しましたが、次は在宅医療下における看護について紹介します。在宅医療でも看護師の介入は必須となりますがそれ以上に家族が患者さんを看護することが多いです。また、患者さんの最期が近づいていると感じたときは家族として何ができるのか・何かしてあげたいと思う方が増えます。そこでご家族ができることについて紹介いたします。
▲そばにいる
患者さんの一番の願いはご家族に近くにいてもらうことです。最期を迎える瞬間まで最愛の家族と一緒に過ごしたいと考えているのではないでしょうか。病院で入院している患者さんの中には死期迫る中、家族が一度も訪問してくれず最期を迎えるという方も少なからずいます。在宅医療最大のメリットは患者さんとご家族が水入らずに過ごせることです。ご家族の方は出来るだけ時間を作って患者さんのそばにいてあげましょう。
希望があれば近くにいる間にできることやしてはいけないことなどについても指導させていただきます。例えば、身体の拭き方や体位変換の方法などご家族が「してあげたい」と思う方法についてやり方です。これらを指導してもらえればご家族も進んで近くにいてサポートできるのではないでしょうか。
▲子供への対応
在宅医療は高齢の方だけが利用するわけではありません。働き盛りでまだ小さなお子さんがいる方も在宅医療で最期を迎えることもあります。患者さんの心残りであり、不安要素に小さなお子さんのことがありますよね。親の死を理解できない子供へ上手に対応するのもご家族の大切な仕事です。子供の年齢に合わせてわかりやすい表現で事実を伝えるようにしましょう。
▲疲れや感情の起伏へ対応する
患者さんは病気と闘っている中で体の状態だけでなく心理的にも優れないときがあります。そんなとき、ご家族へ強く当たってしまうこともあるでしょう。そんなときは優しく「大丈夫?」「何か欲しいものある?」など言葉をかけると良いでしょう。これも患者さんが求めているニーズの一つで、気付けるか気づけないかで大きく変わるのではないでしょうか。
- 看護師を上手に使おう
在宅医療において患者さんとご家族・看護師の関係は密であれば密であるほど良いとされています。その中で、良い意味で看護師を上手に使うと患者さんもご家族も看護に対して不満を抱きにくくなるのではないでしょうか。
▲次回訪問時までにできること
看護師さんへ病状のことで質問や不安なことがある場合、次回訪問時までにメモ書きなどでまとめておきましょう。話す内容を整理しておくと、看護師さんに伝えやすく限られた時間の中で建設的な話ができます。
▲医師への希望も看護師経由
医師へ治療に関する希望や要望を伝えるときも看護師経由で行うと良いでしょう。患者さんのご家族の中には、医師へ話しかけるのが苦手という方がいます。また、医療に関する知識は看護師を通したほうが円滑に伝わることが多いです。医療に関する希望なども看護師を上手に活用することで伝えやすくなりますね。
●在宅ケアにおける家族の看護は必要不可欠
看護師を上手に使うことは「看護」と異なるのではないかと感じる方がいるかもしれませんが、在宅ケアで看護の主体となるのは看護師です。そして、ご家族が看護する場合も看護師から知識や方法を教えてもらい、それを実行することが多いです。看護師を上手に活用し、看護師と良い環境を作ると「良い看護」につながるのではないでしょうか。看護師に何度言っても改善されない・看護師と患者さんが合わないなどのお困りごとがあればすぐに医療機関事務局などへ連絡しましょう。このような人間関係に関する「合う・合わない」はクレームではないので安心してください。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。