医療における地域格差の原因を考える

 

突然ですが、東京都と茨城県ではどちらの方がファッション文化が盛んだと思いますか?これはもちろん東京都ですよね。他にもおしゃれな飲食店や高級ブランド店なども茨城県よりも東京都内の方が多いです。これらは地域差と呼ばれ、地域の特徴を表すときに用いられる言葉です。今回は地域差の中でも医療に関する地域差を紹介していこうと思います。

  • 医療の地域差

医療の地域差をみるときの指標の一つに「医療費」があります。日本の国民医療費は約40兆円強です。年々増加し続けている医療費にも地域差があるのでみていきましょう。厚生労働省保健局調査課が調べた平成29年度「医療費の地域差分析」をみると各地域における医療費とその乖離がわかります。国内で医療費が高い都道府県は佐賀県・鹿児島県・長崎県・大分県・香川県です。その一方で、医療費が低く抑えられている地域は茨城県・千葉県・埼玉県・栃木県・群馬県でした。明らかに西日本と東日本で分かれていますよね。

このデータだけでなく、都道府県1人当たり年齢調整後医療費と1人当たり実績医療費で表を作るとさらに医療費の高低が明らかになります。全国平均と比較して、医療費が高い都道府県は先ほどの5県の他に山口県・島根県も追加されます。その逆で全国平均と比較して医療費が低い都道府県は先ほどの5県の他に沖縄県と東京都・神奈川県・愛知県などがランクインしました。

▲医療費と高齢化の関係

医療費が高いことは何を表しているかといえば「高齢化」です。今後日本は4人に1人が70歳以上という超高齢化社会へ向かっていきます。2020年現在、国民医療費はおよそ42兆円を超えています。そのうち65歳未満の人は約17兆円、65歳以上の人が約25兆円医療費がかかっています。このデータを見てわかるように国民医療費は65歳未満よりも65歳以上の人の方がかかるのです。この理由として以下のことが考えられます。

・疾患を抱えている

高齢者の方は若年層と比較して疾患を抱えている人が多いです。これは加齢により身体機能が低下することも原因となります。疾患を抱えている人は定期的な通院だけでなく、投薬をしていることも多いです。薬代も加算されると65歳以上の高齢者の方の方が医療費が高くなることがわかりますよね。

・病気に対する意識の違い

若い方は風邪をひいても「自然に治る」という考えを持っていますし、免疫力が高いため自然治癒することが多いです。しかし、高齢になればなるほど自分の体を気遣うようになります。高齢になれば免疫力が低下することをわかっているからですね。このように若い世代と高齢の方は健康に対する意識や病気に対する意識が異なるといえます。

・負担金の違い

この記事をご覧になっている方は窓口で何割負担をしていますか?多くの方は3割負担をしているのではないでしょうか。しかし、高齢になればなるほど自己負担金の割合は低くなります。一般的に小学生〜69歳までの健康な方は自己負担金が3割です。70歳〜74歳は前期高齢者と呼ばれ自己負担金が2割になります。75歳以降は後期高齢者と呼ばれ自己負担金が1割となるのです。もちろんこの自己負担金は収入によって異なります。

自己負担金が3割か1割かで医療への門戸も広さが違ってきますよね。自己負担金1割であれば少し風邪を引いても市販の薬より医療機関を受診した方が医師に診断してもらえて薬ももらえるのでこちらを選ぶ人が多くなるのではないでしょうか。

ここまで紹介してきたように高齢化が進んでいる地域では、必然的に医療費が高額になる傾向が見られます。医療費の高い都道府県を見ると首都圏というより郊外ですよね。一方で医療費が低い都道府県は郊外でも首都圏に位置しており、東京のベッドタウンになりうる都道府県が多いです。都道府県など地域における医療費の差は1.5倍〜2倍に及ぶとも言われています。さて、今までは医療費と高齢化の相関性について紹介してきましたが、他にも地域における医療費の格差を生み出す要因はあります。

▲医療サービスの平均と医療費の関係

医療サービスとは「どのような治療をしたか」です。それには都道府県別で見た1人あたりの国民医療費と病院における平均在院日数・医師数・病床数の相関関係を見ていきましょう。(厚生労働省大臣官房統計情報部「平成14年国民医療費」および「平成14年病院報告」より厚生労働省政策統括付政策評価官室作成資料・厚生労働白書参照)

 

 

この資料を見ると平均在院日数が長ければ長いほど、国民医療費が高額になっていることがわかります。これは在院期間が長ければ長いほど医療サービスを行う数が多くなることを意味しているのです。また、前述でも紹介したように日本の国民医療費のほとんどは65歳以上の高齢者の方たちが使用しています。高齢者医療費が増加する要因の一つに入院費があります。高齢者の方は病気になった際、若年者よりも重篤化しやすいという特徴があるため入院するケースが多くなります。入院医療費は高齢者のおける医療費の約5割を占めることもあり、在院日数の増加と医療費は関係性が見られます。

  • 医療格差の弊害

医療費を例にとり医療格差について取り上げてきましたが、実際にどのような弊害が起きるのでしょうか。ここからは地域間における医療格差が原因でどのようなことが起きるのか見ていきましょう。

▲医療を受けられないことがある

医療格差の弊害で最初に出てくるのは無医村や無歯科医村と呼ばれる地域です。医療過疎という言い方をすることもあります。茨城県内でも北部を中心に無医村地域が点在しています。医療を受けにくい環境ができてしまうと病気の早期発見・治療が難しくなってしまいます。また、首都圏の病院と比較しても医療機器が整っていないことが多く必要な検査を必要なときに受けられない事例もあるのです。

▲保険制度上平等であるべき

日本の医療はガイドラインと呼ばれる一定の枠組みの中で検査の手順や治療のステップを踏んでいきます。さらに、医療は健康保険があります。この制度は国民にできるだけ平等な医療を提供することを目的に整えられた制度です。保険制度上、医療は平等に受けられなければいけませんが同じ疾患でも入院できる期間が異なることや検査にばらつきが出てしまうと平等とはいえません。

  • 医療格差を減らす試み

医療格差の問題を解決しようと実際に動いている自治体があります。その試みを見てみましょう。

▲富山県

糖尿病患者数が増えている昨今、糖尿病をはじめとする生活習慣病へのアプローチは必須になります。生活習慣病を予防できれば定期的な通院費も治療にかかる薬代もかかりません。富山県では糖尿病ケア教室を開催して病院から紹介された患者さんへ指導を行うことにしました。他にもライフスタイルへのアプローチも欠かしていません。その結果を病院へ報告することで信頼を得られ、さらに患者さんを紹介してもらうという良いサイクルへとなったのです。患者さんの意識を変えて健康に近づけるプログラムのおかげで生活習慣病を大きく予防できました。

▲新潟県阿賀野市

新潟県阿賀野市は1989年に県内の市町村の中で最も脳卒中を発症した市でした(当時は平成の大合併前)。年間30名が脳卒中を起こしており、そのうち65歳未満の方が2割程度と若年者の発症も目立っていたのです。これを解決しようと健康な人へも指導をして地域全体の健康管理意識を向上させていきました。この結果、医療費の伸び率が低下して県内でも指折りの健康自治体へとなったのです。

  • 健康は1日にしてならず

どんなことにも地域差は存在します。しかし、そのほとんどは自分1人の力ではどうにもならないことです。健康はどうでしょうか?健康は自分の問題で自分で解決することができます。実際に医療格差が大きな地域では人一倍健康に気をつけなければいけないでしょうが、医療機関が近くにあるからといって病気になっていいという話でもありません。ぜひ健康を意識して生活しましょう。

近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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