新型コロナ感染症に関するガイドラインを参照して在宅医療について考えます
2020年はオリンピックイヤーになると思っていた矢先に新型コロナウイルスのニュースが入ってきました。中華人民共和国(以下:中国)だけでなく世界中へ感染は拡がっており、2020年3月22日現在で国内感染者数は1055名(クルーズ船感染者を除く)、世界規模でみると1万人を超えています。日本国内では濃厚接触者の割り出しと健康管理を徹底することでパンデミックのような爆発的な感染者数となっているわけではありません。実際、イタリアでは5万名以上の方が感染し、4500名が亡くなっています。政府が中心となり、手洗いうがいの呼びかけや咳エチケットを呼びかけ、国民もそれを実行していることが功を奏していると想像できます。そこで今回は「新型コロナウイルスによる感染症に関する初期診療の手引き」というガイドラインを参考にしながら在宅医療のあり方について考えていこうと思います。
- 新型コロナウイルスの存在
新型コロナウイルスとは、2019年12月に中国・湖北省武漢市で最初の患者が発見されたとされる感染症の原因ウイルスです。ウイルスの中にあるコロナウイルスというウイルスの新しい型を持つもので、飛沫感染が主な感染経路となります。日本国内では同年1月16日に最初の患者が報告され、その後も急速な勢いで患者数が増加しています。病院内で感染者が相次ぐ「院内感染」だけでなく、街中で感染者が増える市中感染を引き起こしており、感染症を予防する上で新しい対策を講じなければいけない段階までになりました。
中国国内で新型コロナウイルスに感染した44672人のデータを見ると全体の致死率は2.3%でした。新型コロナウイルスだけでなく、病気全てに言えることですが高齢になればなるほど致死率や重症化率は上昇します。20歳代や30歳代は致死率が0.2%と低いですが、60歳代では3.6%、70歳代では8%、80歳代では14.8%となっています。全体の致死率は2.3%ですが高齢者になればなるほど致死率が上昇していることが分かりますね。新型コロナウイルスは年齢の他にも基礎疾患の有無で予後が分かれます。基礎疾患とは、糖尿病や循環器疾患・呼吸器疾患・高血圧などです。この中でも循環器疾患を抱えている方の致死率は10.5%と割合が高いことが特徴です。
▲新型コロナウイルスの症状
新型コロナウイルスに感染すると潜伏期間というものがあります。潜伏期間はおよそ14日間ですが、14日より前から症状が出る方もいれば14日以降に症状が出る方もいます。初期症状としては風邪のような症状で軽い咳や喉の痛みが特徴です。その後、病状が悪化すると肺炎のような症状へ移行します。呼吸困難や咳・痰が顕著に見られます。そして、さらに病状が悪化すると人工呼吸管理をしなければいけなくなります。
▲新型コロナウイルスが社会へ及ぼす影響
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、政府は2020年2月26日に全国的なスポーツやイベントなどについては大規模な感染リスクがあるとして中止あるいは規模縮小などで対応するよう要請しました。その後、同年3月10日・同年3月20日と相次いでイベントの自粛を要請しています。実際、多くのイベントが中止や順延になっており社会全体へ与えている影響は大きいと言えるのではないでしょうか。では、なぜ新型コロナウイルスがここまで社会へ影響を与えているのでしょうか。それは無症状で感染することがあることと、死亡する例があること、そして治療薬がまだ開発途上だということが関係しています。
■無症状で感染させるリスク
新型コロナウイルスの症状は前述で紹介したもの以外に、無症状で進行するものがあります。無症状なので患者さんの負担は少ないですが、ウイルスを保有しており他者へ感染させるリスクを十分に持っています。
■治療薬が開発途上
新型コロナウイルスの治療薬は開発途上です。HIV治療薬やエボラ出血熱治療薬が効果を示すという論文もありましたが、その有効性はまだ確認されていません。現在は世界各国の製薬会社が新薬開発へ力を入れています。
- 新型コロナウイルスと在宅医療
現段階では新型コロナウイルス検査で陽性となった患者さんは感染症指定病院などで入院し治療することが原則ですが、これから在宅医療で治療が可能となるかもしれません。そんなとき重要になるのは患者と家族の隔離・医療従事者の感染予防です。
▲院内感染同様に自宅内感染の予防
新型コロナウイルスの感染拡大で問題となったのが院内感染です。院内感染とは病院内で患者さんが医療従事者や別の患者さんへ新型コロナウイルスを感染させてしまうことです。患者さんを隔離することはもちろん、患者さんが使用した食器やタオルなど衣類を家族が使用しないことで自宅内感染を防ぐことができます。
他にも自宅内感染予防で有効なのが換気と消毒です。本来であれば病院の陰圧室という部屋で空気も閉じ込めることが望ましいですが自宅では陰圧室の環境が整っていないことが多いです。そこで出来るだけこまめに窓を開けて換気をしましょう。1時間に6回程度換気をすれば室内をより綺麗に保つことができます。
▲医療従事者の感染予防
医療従事者は患者さんの療養へ携わることから感染リスクが非常に高いとされています。実際に新型コロナウイルスは患者さんから病院内の医療従事者へと感染した事例や検疫官へ感染した例が多いです。在宅医療で新型コロナウイルスを治療する場合も同様です。医療従事者は飛沫感染予防としてゴーグル、マスク、手袋、ガウン、帽子を着用することが望ましくなります。また、サージカルマスクでも良いですができればN95マスクを着用することが求められます。基本的に使い捨てで患者さんの自宅外で着脱すると自宅内感染を防げます。
- 新型コロナウイルス感染症を自宅で治療できるのか
新型コロナウイルス患者の増加や、既に在宅医療を受けている方はどのような治療を受けるのが望ましいでしょうか。また、自宅で治療を受けたいと考えている方は自宅で治療を受けられるのでしょうか。結論からいえば自宅で治療を受ける場合は新型コロナウイルス感染症の症状の程度によると思われます。
▲風邪の症状が軽い場合
風邪の症状が軽症だった場合は自宅療養をしましょう。普通の風邪も新型コロナウイルス感染症も発症してから数日は区別がつきにくいです。発症後4日以上、37.5度以上の発熱があれば「帰国者・接触者相談センター」へ相談するようにという政府の見解はここから来ています。在宅医療を受けている方でも4日以上37.5度以上の発熱がある場合は、一度医療機関へ電話相談をしてください。
▲風邪の症状が重篤な場合
普通の風邪でも高齢者の方は肺炎を引き起こすことがあります。また、新型コロナウイルス感染症の症状が重篤化すれば肺炎の症状が強く出ることがあります。肺炎は発熱だけでなく、呼吸苦を自覚することが多いです。医療機関を受診すればX線で画像診断できますが、在宅医療を受けている方は一度医療を受けている医療機関へ電話相談をして指示を仰ぎましょう。
▲濃厚接触者になってしまった方
濃厚接触者になってしまった方は厚生労働省からの定期的な健康調査がありますので協力をお願いいたします。また、在宅医療もすでに予定しているスケジュールで伺えないことがありますのでご了承ください。濃厚接触者になった方は直近2週間で接触した医療機関スタッフがいれば申し出ていただけますと幸いです。
- 全て在宅医療ではカバーできない
在宅医療を希望している方でも2020年3月22日現在では発症が確認されれば病院へ入院する必要があります。その理由として家族の方へ感染を拡大させないためと徹底した医療設備の中で管理した方が良いからです。在宅医療でも酸素投与はできますが新型コロナウイルス感染症が重症化すれば在宅医療でカバーできないことが増えてしまいます。当クリニックでは患者様のことを考え、周辺医療機関や関係各所と連絡をとっていきたいと思っています。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。