感染症対策を紹介!高齢の方や高齢者がご自宅にいらっしゃる方は参考にしてください
感染症と聞くとどのような病気を思い浮かべるでしょうか。インフルエンザやノロウイルスなどを想定する方が多いのですよね。しかし、ここ数日で感染症という言葉の代名詞とも言えるウイルスが登場していますよね。新型コロナウイルスです。WHOはこのウイルスにSARS-Cov-2(新型コロナウイルス感染による病気はCOVID-19)という名称をつけました。新型コロナウイルス感染症については当法人でも取り上げておりますが、今回は高齢者における感染症対策について紹介していこうと思います。
- 感染症対策とは?
医療の現場では決まった感染症だけでなく、全ての感染症に対して対策をとっています。アメリカのCDC(感染症対策機関)の提唱している「スタンダードプレコーション」というのは感染症対策の基本となっています。患者さん持病の有無にかかわらず感染症に罹患しているかもしれないというリスクを意識しながら医療を提供しています。そこで最初にスタンダードプレコーションの例について紹介したいと思います。
▲スタンダードプレコーション(標準予防策)
スタンダードプレコーションとは、アメリカの感染症対策機関が発案した感染防御策のことです。患者さんの汗を除くすべての体液に感染源が含まれているという想定の元、対応をするようにしています。血液中はもちろんですが、唾液や涙液の中にもウイルスは含まれています。また、患者さんの手にウイルスが付着している場合は、患者さんが触れたものを介して口、鼻、目などの粘膜から接触感染することがあります。新型コロナウイルスでは、くしゃみや咳、会話時のしぶきを介して飛沫感染する他に患者さんの手の表面に新型コロナウイルスが付着しており、患者さんが触れた物を介した接触感染も報告されています。
医療機関においては患者さんに使用したものは原則滅菌して再利用しています。滅菌できないものに関しては使い捨てを採用して、衛生面を保っているのです。ここで登場した滅菌とはどのようなものか想像できますか?
みなさんにとって身近なのは消毒や除菌ですよね。消毒とは有害な菌を死滅させる、または影響のない状態にすることをいいます。一方、除菌とは有害な微生物を拭き取ることで有害物質を「取り除く」ことをいいます。では、滅菌はどのようなものなのでしょうか。滅菌とは芽胞も含む全ての微生物を殺滅し無菌状態を作り出すことでウイルスや細菌を問わずすべての生物を死滅させることを意味しています。つまり滅菌をすることでウイルスや細菌を限りなく 0 に近づけるというものです。
▲患者さんごとに使い分ける
スタンダードプレコーションとは「すべての患者さん」が対象となっています。
体液、分泌物、血液、排泄物を取り扱う際にはグローブ、エプロン、マスクの装着、処置前後の手指衛生が推奨されます。
患者さんの中には特異的に疾患を抱えている方やそうでない方がいます。例を出すと、HIVウイルスや肝炎ウイルスなどの保菌者(キャリア)の方でも発症していない方では通常の対応は特に健康な方と変わりありません。ただし、感染症キャリアの方の体液、分泌物、血液、排泄物を取り扱う際にはスタンダードプレコーションが求められます。他には結核、麻疹など空気感染、飛沫感染の代表的な疾患の場合も同様です。この場合は基本的なスタンダードプレコーション以外にもN95マスクの着用や陰圧室の設定など環境の整備も必要となっています。
- 高齢者における感染症対策
感染症対策という一言を出すと病院のみで行われていることのように思っているかもしれませんが、みなさんも現在は感染症対策をしていますよね?厚生労働省は新型コロナウイルスに対して手洗い・うがいを推奨しています。新型コロナウイルス感染症の流行とともにハンドソープや消毒液は品薄状態となり、手洗い・うがいを実施している人の増加を意味していますね。他にもマスクも品薄となり、街中でマスクを着用している人が増加しましたね。今や医療現場だけでなく一般市民にも感染症対策が広がっています。
みなさんはマスクの着用・手洗い・うがいなど一般的な感染症対策をしていることと思いますが、ここからは高齢者施設で求められる感染症対策について紹介していきます。
▲高齢者施設における感染症対策
高齢者施設は文字通り、高齢者が集団生活していることが多いです。また、生活をしていなくてもデイケアなどで一時的にでも集合します。高齢者は若い世代よりも感染症に対して抵抗力が弱くなっています。そのためより一層の感染症対策が必須となるのです。今回は厚生労働省の発行している高齢者介護施設における感染症対策マニュアルを参考に紹介していきます。
■注意すべき感染症
厚生労働省の高齢者介護施設における感染症対策マニュアルによると、高齢者が注意すべき感染症には以下のものがあります。
・ノロウイルス
・インフルエンザ
・結核
・腸管出血性大腸菌感染症
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
・緑膿菌感染症
(明記についてはここまでだが、この他にも新型コロナウイルス感染症が含まれる)
ノロウイルスやインフルエンザは季節性流行が認められています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症はMRSAと呼ばれています。黄色ブドウ球菌は本来、抗生物質により治療できますが抗生物質に対して抵抗性を持ったものがMRSAと呼ばれます。
■感染症に対する基本的な考え
感染症に対して3つの基本的な考えが提唱されています。
・病原体の排除
・感染経路の遮断
・宿主抵抗力の向上
一つずつみていきましょう。
★病原体の排除
病原体の排除とは前述でも登場したスタンダードプレコーションのことです。吐瀉物・排泄物・血液・体液などは素手で処理せず、グローブを着用して処理し、処理後はグローブを外し流水と石鹸でよく手洗いをしましょう。
★感染経路の遮断
感染症にはそれぞれ感染経路があります。くしゃみや咳、会話で発生する飛沫で感染する飛沫感染や、空気中に滞在しているウイルスや菌を吸い込むことで感染する空気感染、触った際や食品を介して感染する接触・経口感染などです。
それぞれのウイルス・細菌がどのような感染経路で感染するのかしっかり理解しておくことで感染経路の遮断へとつながります。例えば、飛沫感染するような場合はマスクを着用する、ノロウイルスが流行している場合は手洗いの徹底だけでなく食品の加熱をするなどです。
★宿主抵抗力の向上
ここでいう宿主とは高齢者や施設スタッフのことです。施設スタッフの方は若い方も多く、仕事や運動をしているため免疫力が保てていますが高齢者はそうはいきません。高齢者の方の多くは免疫力が低下しているため、免疫力向上に努める必要があります。具体的には十分な睡眠・バランスの良い食事・運動などです。これらは日常的にできる免疫力向上法ですが、免疫力を確実に向上させるにはワクチン接種も有効です。肺炎球菌ワクチンなど高齢者が接種すべきワクチンがあります。
■感染症対策をするのはスタッフと入居者
高齢者介護施設では施設内で生活している高齢者とその介助をしているスタッフの両名で感染症対策をしなければいけません。高齢者施設だから高齢者の方だけ予防していれば良いと思うかもしれませんが、介助スタッフを介して高齢者が感染してしまうこともあるのです。スタッフにおいても予防接種やワクチン接種のほか、毎朝の検温なども有効です。
■新型コロナウイルスの感染対策
新型コロナウイルスはまだワクチンも特効薬もないため、通常の感染症防止対策にに加えもう少し皆で留意しなくてはならない対策があります。
3密(3つの密)がかさなることで感染が成立しているとの調査結果から、3密(密閉、密集、密接)を回避するよう求められています。
まず、密閉の対策ですが、窓がある場合は風の流れができように対格の窓やドアを1時間に2回以上数分間開けることが大切です。家庭用エアコンでは換気は行われていないため、これらの対策は必要です。乗用車や電車・バスなどの公共交通機関でも窓開けによる換気に協力しましょう。
次に密集の対策です。他の人と互いに手を伸ばしても届かない十分な距離(2メートル以上、最低でも1メートル)を保つようにしましょう。飲食店などではすでに座席を減らしたり、離してくれているところが多いですが、その場合も真向かいに座らず互い違いに座る、対面に座らず横並びで座るなどがさらなる対策になります。
最後に密接の対策は、会話、発声、運動などの際に、十分な距離を保ち、マスクを着用することです。もちろん、運動をグループではなく少人数で行う、会話をビデオチャットにするなども対策となります。
■行政との連携
感染症予防には行政との連携も重要です。高齢者施設としての衛生管理が十分できているのか、地域においてどのような感染症が流行しているのかなどを把握することで感染症対策効果が期待できます。また、もし感染症が発生した際には保健所へ連絡をして地域の医療機関と連携を取る必要があります。
- 感染症に対して正しい知識を持つ
新型コロナウイルスが流行し始めた頃、インターネットを中心に間違えた情報が錯綜しました。38度以上のお湯を飲むと死滅させられる・高温多湿に弱いなどです。しかし、これらは誤った情報だとWHOや国立感染症センターからの報告で明らかになりました。
感染症が流行するとこのように誤った情報が錯綜することがよくあります。感染症について厚生労働省が発表している情報を入手しましょう。新型コロナウイルス感染症のように新しい感染症では情報が少ないこともあります。そのようなときは感染対策の基本である手洗い・うがい・マスクの着用を徹底しましょう。高齢者の皆さんやご家族に高齢の方がいる方はこの高齢者の感染症予防対策を参考に日々の感染症予防へ役立ててください。
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