うがいの正しい回数と方法は?論文をもとにうがいを解説します
みなさん突然ですが手洗い・うがいをしていますか?手洗いとうがいは風邪予防や口腔疾患にも予防効果があるとされています。予防効果には有効性も証明されていますが、やり方になると話は違います。水やぬるま湯を口に含み、上を向き「ガラガラ」とうがいをするのが一般的なだけで、正しいやり方というのは誰も習得していないのではないでしょうか。今回はそんなうがいについてまとめてみました。うがいで悩んでいる方やうがいの仕方や回数がわからない方は一読ください。
●うがいの歴史
うがいは日本に伝統的に伝わるものとされています。そのルーツは神社にありました。昔から日本国内には神社が全国各地に点在していました。そこでは手を清めて、口を清めるという文化があったのです。日本人は神社へ集まることが多く、昔から手洗い・うがいの習慣がついていたと推測できます。現在では手洗い・うがいをすると感染症予防の意味合いが強くなりますが、昔は神社でのマナーでした。およそ2500年前の「古事記」にもこのことは記載されています。
諸外国ではどうでしょうか。諸外国ではうがいの文化がありませんでした。今でこそ新型コロナウイルスの流行により諸外国でもうがいをしていますが、このパンデミックが起きるまではしていなかったに等しいのではないでしょうか。個人的には日本でなぜ新型コロナウイルスの重症者が少ないのかという疑問の答えはうがいだと思っています。
▲うがいと薬
うがいという話を進める中で外せないのがうがい薬との関係です。後述でうがい薬については明記しますが、ある実験が興味深かったので紹介したいと思います。2002年に京都大学の川村孝教授グループが行った研究です。2002年から2003年の冬季に北海道から九州地方まで全国18地域でうがいについての研究をしました。この研究ではうがいの風邪予防効果を無作為割付で検証したものです。合計被験者387名を集め、くじ引きを行い「水うがい」をするグループと「ポピドンヨード液でうがい」するグループと「うがいをしない」グループに分けました。2ヶ月にわたり風邪の発症について調べた結果、「水うがい」グループは17人/100人が風邪を発症。「ポピドンヨード液でうがい」グループは23.6人/100人。「うがいをしない」グループは26.4人/100人が風邪を発症するという結果になりました。水でうがいをしたグループについては、水により喉の粘膜へ付着していたウイルスを物理的に排除できた・埃のなかに含まれるウイルスと結合しやすくなるプロテアーゼという成分を排除できたなどが風邪を引きにくくなったのだろうと推測しています。
この研究で面白いのがポピドンヨード液を使ってうがいをしたグループはうがいをしないグループと大きな差が出なかったことです。このことについて川村教授グループは「ポピドンヨード液の殺菌力が高すぎたため、喉の正常細胞・正常細菌までも死滅させてしまったのではないか」と分析しています。
●うがい方法と適切な回数
うがい方法については冒頭でも述べたように自己流が蔓延しているといって良いでしょう。誰も正しいうがいの方法を習っていないし、うがいのフィードバックを受けていません。フィードバックについて少しだけ話をします。例えば歯磨きができているかできていないかのフィードバックは、小学校・中学校のときにやった染め出しで確認できます。歯を染め出すことで汚れの付着部位を確認するのです。このように自己流でもそれが効果のある方法なのか否かを判断できればうがい効果に大きな影響を与えると思います。
さて、そんなうがい方法についてフィードバックをした実験があるので紹介したいと思います。1998年と少し古い情報ですが関西医科大学附属香里病院の耳鼻科・薬剤部共同で発表した論文があります。タイトルは「うがい効果の検討:第一報」。
この論文の中でうがいで大切なのは「機械的除菌作用」と「殺菌作用」と書いています。機械的除菌作用とは、うがいをしたときの水の乱流や泡・声帯の震えなどで喉粘膜に付着しているウイルスや細菌を取り除くことをいいます。殺菌作用とはポピドンヨードのことです。この実験では口腔内の硬口蓋・軟口蓋・頬粘膜・舌に紙を貼り付けうがいをしてもらいました。最初はブクブクうがいと呼ばれる唇を閉じた状態で行う、口を濯ぐうがいです。その後、顔を上へ向けたうがいと、さらに顎を上へ向けるうがいの2種類をします。つまり適切なうがい回数は3回ということです。結果として紙が取り除けていれば機械的除菌作用があると判断できるのです。
結果をみると硬口蓋の紙は取り除けていませんでした。被験者全員の硬口蓋に付着していた紙を取り除けなかったため、うがいにより硬口蓋はきれいにできないという結果になりました。そこで補助的に役立つのがポピドンヨードです。
ポピドンヨードとはワカメや昆布に含まれている「ヨード」と「ポリビニルピロリドン」という成分からできています。ポリビニルピロリドンは毒性を下げて水溶性を高める働きがあります。ポピドンヨードで一番有名なのは「イソジン」と呼ばれるうがい薬ですね。市販のうがい薬の中で認知度が高いです。そんなポピドンヨードは手術の際の消毒や創部の消毒に使用されます。しかし、着色性が強いため服に付着すると落ちにくくなります。ただし、殺菌作用は非常に高くアルコールよりも高い殺菌作用があるといっても過言ではありません。100%濃度のポピドンヨードは殺菌作用が強すぎるため、人体の常在菌も死滅させてしまうことがあります。うがいに適した濃度は0.23%〜0.46%とされており、それよりも高濃度な場合前述の「2002年京都大学川村教授の研究結果」と同じような結果になってしまうのです。この実験でも適正範囲の濃度でポピドンヨードを使用していたのは6.8%にしか過ぎず、多くの人は不適切なうがいを実施していたことが明らかになりました。
●うがい薬の種類
うがい薬として有名なのはポピドンヨードですが、それ以外にもうがい薬はあります。そこでここではうがい薬としてどのような効果があるのかを含め紹介していこうと思います。
▲ポピドンヨード
ポピドンヨードは殺菌作用が強い消毒薬です。うがいだけでなく、手指・皮膚消毒にも利用されます。うがいをする際には適切な濃度で使用しないと喉粘膜に常在している細菌も死滅させてしまい、結果的に風邪を引きやすくなってしまうのです。
▲アズレンスルホン酸ナトリウム
アズレンと呼ばれることもあります。アズレンスルホン酸ナトリウムには抗炎症作用があり、喉が腫れているような場合に出されるうがい薬です。毎日のうがい薬として使用しても問題ないですが、腫れているとき使用すると効果絶大です。近年ではアズレンスルホン酸ナトリウムを生理食塩水に溶かして、鼻うがいに使用する方もいます。副鼻腔炎などで鼻粘膜が腫れている人には抗炎症作用が働き鼻詰まりを解消する効果が期待できるのです。
●まとめ
風邪の原因ウイルスは今世間の話題を集めているコロナウイルスだけでなくアデノウイルス・インフルエンザウイルスなど様々あります。それらは常に誰かの体を宿主として生存しており、毎日誰かへ感染しています。その度に私たちの体の中では免疫反応が起きるわけですが、できれば体の中へ侵入する前に手洗い・うがいで取り除きたいですよね。うがいは水で十分です。うがい薬を使用するよりも出先から帰ってきたらしっかりと手洗い・うがいをするという習慣づけをした方が予防効果は高いです。風邪は年間患者数が多く、風邪の治療だけで年間6000億円も費用がかかっているというデータがあります。水でも良いのでうがいを続けることで国の医療費圧迫を少しでも解消でき、健康維持にもつながるのではないでしょうか。
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