医療と福祉の現場で活用される連携医療
「連携をとる」ことは難しいことではありません。しかし、多くの事柄で連携の取れていないケースが見受けられます。連携とらなければいけない業種で有名なのは医療業界です。医療職は多くの業種が関わり、連携を取っているからです。そこで今回は医療における連携の重要性とともに医療業界が他業界とどのように連携とっているのか紹介していきます。
- 連携医療の重要性
医療業界では日常的に連携が大事になっています。特に病院では他科との連携をとるだけでなく、多職種間で連携をとっているのです。病院では医師や看護師だけでなく、薬剤師や理学療法士・作業療法士などが働いています。例えば、骨折した高齢者が入院したとします。医師を中心に治療を行い、看護師が日常的に看護業務を行います。退院後に自立した生活ができるよう理学療法士や作業療法士がリハビリを担当して、事務手続きは医療事務が対応するのです。ある意味、どこの病院でも行われていることですが、これこそ連携医療の基礎なのです。他にも専門科を跨いだ治療も連携医療の一つです。夜間救急で運ばれてきた患者が外傷を受けている場合、消化器や脳外科などの専門医と連携を取り対応します。これも連携医療といえます。
病院だけでなく地域でも医療連携は行われています。医療は病院だけでなく、クリニックや診療所と呼ばれる町の診療所でも行われています。大きな病気が疑われる患者や精密検査が必要な患者は病院へ紹介状を書きます。その後、患者へどのような検査を行いどのような診断を付けたのか病院は診療所へ返信することが一般的になっているのです。患者が希望すればその後のフォローをする形で診療所やクリニックへ通院して経過観察にすることも可能です。大きな病院へ通うことは患者やその家族にとって負担になることもあり、生活圏内の診療所でフォローできるのであれば、患者のためになるのは後者でしょう。
さらに地域医療では医療職以外の人も連携医療へ関わってきます。
▲連携医療が注目された背景
連携医療はなぜ注目され、国内で普及していったのでしょう。その理由にはある限界がありました。昔の医療制度は一国一城システムと略すとわかりやすいと思います。主治医の意見が絶対となり、患者は病気を少しでも放置して病院へ行けば「なぜここまで放っておいた」と怒られることも珍しくありませんでした。しかし、時代は変わり医師が中心となった「父権制度」から、患者中心の医療へと変わっていったのです。医療機関数の増加に伴い、患者が医療機関を選べるようになりました。また、患者が治療法を選択できるようになり、より高度な医療を選びたい・より精度の高い検査を受けたいと願う人も増えていきます。そうすると大きな病院や先進医療をしている病院に患者が集まり、待ち時間ができてしまう問題が起きます。そこで問題となるのが「医療資源」です。資源という言葉を使うとモノや材料などを想像する人が多いかと思います。ここでいう医療資源とは人・モノ・場所の3つです。人とは医療従事者全員のことで、医師や看護師・薬剤師など医療現場で活躍する人を指します。モノは薬やマスク・グローブなど患者の治療に使用するものを総合して指します。新型コロナウイルス感染症が流行した2020年にはマスクやグローブ・防護服など医療物資が枯渇するだけでなく、医師や看護師不足に伴い医療崩壊が騒がれていました。場所とは、病院の空き病床を指します。人・モノ・場所が偏ってしまうと医療資源の配分が上手にいかなくなります。そこで大病院などは経過観察だけの患者は診療所やクリニックで診てもらう方が効率が良いと考えているのです。
- 地域医療制度の改善
地域医療において連携医療を実践するため、1992年の第二次医療法改正で「地域医療における医療体制の構築と医療機関間の密な連携に関する施策」が明示されました。これにより、特定機能病院や療養型病床群が法律上で規定されるようになります。他にも病院や診療所・老人保健施設に責務として、他の医療機関へ患者の紹介や情報提供をする旨が盛り込まれました。さらに、実践するために厚生労働省は入院基本料各種加算算定が取れるように、急性期病院にとって連携すると旨味があるような診療点数改正を行なったのです。これにより病院では近隣診療所などと関係強化することに奔走しました。しかし、これは病院側のエゴであり、結果として紹介元への返信がない事例や急性期病院においては分院を作り紹介率を上げていたという事例も見受けられます。つまり、地域における医療連携は思うように進んでいなかったのです。
その後、2006年に診療報酬改定をする際、質の高い医療を効率的に提供することに重きをおきます。より連携を強めるために急性期だけでなく、回復期や慢性期・在宅医療へと切れ目のない医療を作るようなシステム作りが行われます。患者が早期に自宅へ戻れる環境を作ることで、生活の質を高めて、必要かつ十分な治療をするとトータルで治癒期間が短くなるのです。結果的に医療費削減と患者満足度を両方確保できるというのが厚生労働省の見立てです。第五次医療法改正では入院基本料加算が廃止された。紹介率の増減ではなく、連携しているかどうかという観点で診療報酬を評価する時代へとなったのです。
- これからの連携医療
2020年問題に直面している今、次に課題となるのは2025年です。2025年は在宅医療を必要とする人が29万人になると想定されています。これは今の人数よりも12万人多いことを意味するのです。また、医療職だけの連携ではなく医療と介護の連携が必須となっています。日本医師会総合政策研究機構「在宅医療の提供と連携に関する実態調査」をみると在宅医療における問題点として上位に「緊急時の入院・入所受け入れ病床の確保」「24時間体制に協力可能な医師の存在」「24時間体制の訪問看護ステーションの存在」がランクインしていました。
在宅医療、地域医療において重要なのが「ハブ」の存在です。ハブとは歯車の中心という意味があります。ハブとなる存在は本来、自治体や地域の医師会であるのがベストですが各地域で統一して同条件で設置できるわけではありません。
また、患者ひとり一人でニーズも違っていきます。介護が必要な患者はケアマネージャーにより介護職の調整や介護支援制度の活用を必須です。介護が不要な患者でも、家族の協力が得られない場合、地域の協力が必要です。医療職だけでなく、介護職とも連携することで地域課題の解決へ大きな一歩を踏み出せるのです。
厚生労働省「平成23年在宅医療連携拠点事業成果報告」では、多職種連携のために会議を行いそれぞれの課題について話し合っていました。今回はその中からケース勉強会参加者の声として実際に挙げられたものを紹介します。
・高齢者や障害者の不安には想像していた以上の課題があった
・病院が自己完結型な施設か実感した
・生活支援の大変さと複雑性を実感した
・在宅医療の現場で医師がどのような苦労をしているのか勉強になった
・医療的な知識が不足していた
・地域包括支援センターの職員は担当ケース対応に追われており、世帯支援に対応する余地がない
・公的な支援はもちろんだが、それだけでは人の支援をするのは難しい
- 医療連携は医療と福祉
医療機関の連携や医療職同士の連携はもちろんですが、医療と福祉の両団体で連携をとることは重要です。在宅医療となれば医療職よりも福祉職の方が患者と接する時間が長いため、細かな変化にも適応するのです。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。