遺伝子疾患の中で難病とは?遺伝子検査や高齢出産について解説します
遺伝子と聞くと少し怖いイメージを持つ方がいるかもしれません。世間では遺伝子組みかえなど、技術の進歩はありますがあまり良いイメージを持っていないですよね。今回は遺伝子の中でも遺伝子が原因で発症する病気について紹介していこうと思います。また、遺伝子疾患の中には難病指定されているものがあります。それらについても紹介していきます。
●遺伝子疾患とは?
遺伝子とはデオキシリボ核酸(DNA)と呼ばれる細胞で構成されています。DNAの中にはタンパク質を作る設計図が含まれています。人間の細胞はタンパク質で作られているものが多いため、体を作る設計図と言っても過言ではないのです。DNAはコイル状の二重らせん構造をとっています。その中で4種類のヌクレオチドと呼ばれる塩基配列があります。塩基配列の組み合わせでアミノ酸を作っているのです。遺伝子が多く含まれている染色体は基本的に2対で1セットとなっています。2対が基本構造ですが、3対になるとトリソミーとなり、ダウン症の原因となるのです。染色体には、体を作る常染色体と性別を決める性染色体の2種類があります。
人間の細胞には染色体が含まれており、自己複製する能力があります。その際、細胞は分裂して数を増やしているのです。分裂をした後も細胞は大きく成長して、体を構成してくれます。細胞分裂する過程で、遺伝子が変異する「突然変異」が起きることもあります。多くの場合、放射線など外部刺激が原因となります。変異した細胞はガン化する事例もありますが、遺伝することはほとんどありません(ガンになりやすい・なりにくいという性質は遺伝子ます。ここでいう遺伝とは、母親がガンを罹患しているとき、生まれた子供の体内にガン細胞を遺伝させるという意味ではありません。)
▲遺伝における形質とは?
形質とは呼んで字の如く、形の性質です。人間では、身長や体重・食欲や筋力などが形質となります。髪の毛の色やくせの有無も形質です。遺伝子により一部の形質は決定され、遺伝子疾患に罹患することで形態異常が起きる可能性があります。
▲遺伝子疾患一覧
遺伝子疾患とは、主に遺伝子が原因となり発症する疾患です。しかし、遺伝するわけではありません。遺伝子が原因で発症するだけです。遺伝子が原因で発症する遺伝子疾患には次のようなものがあります。
■ダウン症
ダウン症とは、21番目の常染色体が2対ではなく3対となり発症します。軽度の知覚障害が特徴で、身体的な発達遅延もみられます。原因として有名なのは成長過程の細胞分裂とされています。
■エドワーズ症
エドワーズ症とは18番目の常染色体が2対ではなく3対となり発症する疾患です。ダウン症と成り立ちは同じですが臨床像として重度の心臓疾患が発生しています。生後すぐになくなってしまい、生後1年の生存率は10%程度となっています。多くの場合死産になることもあり、母体を守るか子供を守るか命の天秤にかけるケースも珍しくありません。
■パトウ症候群
パトウ症は13番目の常染色体が3対となり発症する疾患です。出産されるのは全患者の4%程度で残りの96%は死産や流産します。出生しても生後1ヶ月以内に80%の子供がなくなってしまいます。
■難病指定されているもの
遺伝子疾患で難病指定されているものの一部を紹介します。
・歌舞伎症候群
・アペール症候群
・オスラー廟
・ウィーバー症候群
・ウィリアムズ症候群
●遺伝子疾患と高齢出産
日本産婦人科学会では高齢出産の定義について「35歳以上で初産を経験する人」としています。経産婦でも40歳以上の場合は高齢出産としています。日本産婦人科学会では35歳から卵子の質が低下して染色体の数に異常がみられる傾向があると発表しています。また、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気を抱える女性も多く、高齢出産や高齢妊娠の人はリスクを十分に理解しなければいけません。
深井保健科学研究所では、高齢出産と遺伝子疾患の関係について発表しています。データの中では、妊娠率は35歳を超えると低下しますが、流産率は上昇することが判明しました。また、ダウン症など染色体異常の発生率は高齢出産とともに増加することも判明しています。ただし、染色体以上を除いた先天異常は母年齢と発生率に明確な関連はありませんでした。
▲高齢出産の割合
厚生労働省「人口動態統計」の令和元年のデータをみると女性の出産年齢別割合がわかります。令和元年に出生した子供は約86万人でした。女性の出産年齢別区分をみると30〜34歳が全体の36%を占めます。初産以外の人を含め、35歳以上で出産した人の割合は全体の約29%を占めており、出産した人のうち3〜4人に1人が高齢出産といえます。平成12年の段階で高齢出産した人の割合は12%だったのでいかに高齢出産の割合が増えていたかおわかりいただけるのではないでしょうか。
●高齢出産のリスク
高齢出産をするにはリスクがつきものです。中でも最大のリスクといえるのが、遺伝子疾患など先天異常と呼ばれる疾患のリスクが高くなります。卵子の分裂異常は25歳で1351人に1人の割合ですが、40歳では112人に1人で起きるとされています。10倍以上発症リスクが高くなっているのです。先天異常に合わせて流産リスクも高くなっています。妊婦全体でも15%は流産するとされていますが、その倍以上のリスクを抱えてしまうのです。
子供のリスクだけでなく、母体へのリスクもあります。妊娠時には高血圧や蛋白尿がみられ、これらを「妊娠高血圧症候群」と呼んでいます。全身状態が良いとは言えず、母体の臓器障害や血管障害の原因となりかねません。妊娠高血圧症候群は年齢が上がるとともにリスクが高くなります。35歳未満の人と比べて、40歳以上の人では発症リスクが2倍あるのです。この他にも、妊娠中に糖の代謝異常がみられることを妊娠糖尿病と呼びます。これは20歳の人と比べて、35歳以上の人では8倍以上発症リスクに差があるとされています。
●子供の状態を知る!出生前診断
出産前に子供の疾患を知る出生前診断というものがあります。遺伝子疾患や奇形の有無などを事前に知る検査です。出生前診断を受けることで、生まれてくる赤ちゃんの状態を把握して最適な状態で分娩できます。また、療育環境を検討する材料にも使用されているのです。出生前診断には様々な種類があります。
▲エコー検査
超音波検査は母体の腹部へ機械を当てるだけの検査です。放射線など使用しないため、流産のリスクを低減できます。通常のエコー検査と胎児の内臓の形態・機能を調べるためのエコー検査と2種類の検査があります。
▲母体血清マーカー検査
母体から採血して、二分脊椎の確率を算定する検査です。この検査は確定診断ではないため、検査結果で高確率を示した場合、確定診断をしなければいけません。
▲NIPT
母体から採血して、胎児の染色体を調べる検査です。母親の体内には胎盤から漏れる胎児のDNAが流れています。そのDNAを採取してダウン症・エドワーズ症・パトウ症の診断を行います。実際にこの検査では、偽陽性(本当は陰性なのに検査で陽性が出ること)も出るため確定診断をするには再度、別の検査を実施する必要があります。
▲羊水検査
実際に子宮内の羊水を採取して、胎児の染色体やDNAを調べる検査です。確定検査ですが、流産や破水のリスクが0.3%はあるので慎重に検査の実施を決めましょう。
▲絨毛検査
母体の腹部へ針を刺して、絨毛を採取します。絨毛とは、胎盤を形成する前の胎児由来の細胞で、そこから染色体やDNAを調べるのです。羊水検査よりも早期に実施できる検査ですが、対応している医療機関が少ないという現状もあります。
●遺伝子疾患との付き合い方
子供が遺伝子疾患を抱えて生まれてきた場合、どのように接すれば正解なのかは誰にもわかりません。遺伝子検査で出産前に遺伝子疾患が疑われたとき、「産む前に知れてよかった」という声もあれば「知りたくなかった」という声もあります。すべての選択肢が正解であり不正解となる難題なのかもしれません。しかし、遺伝子疾患の中でも難病指定されているものであれば国の助成制度などが活用できます。遺伝子疾患と上手に付き合うといえば語弊がありますが、その人その人の個性だと思い生活を営んでいくのが良いと感じています。
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