看取りのガイドライン!議論が進むニュージャンル
人は必ず死にます。いつか必ず死ぬからこそ、人は今を生きて最期をどう迎えたいか考えるのではないかと思います。死ぬ瞬間を見守ることを、「看取り」といいます。2020年の年間死亡者数は137万人でした。2012年の124万人から比べると13万人増えていることになるのです。今後も日本の継続的な課題となるであろう看取りについて考えていこうと思います。
●死亡する場所がどうなっているのか
高度経済成長を機に日本はベビーブームを迎えました。ベビーブームの子供たちが第二次ベビーブームとなり、日本の成長へ大きな活力となったのです。しかし、ここ数十年の日本はどうでしょうか。全人口は減り続けて少子高齢化が進んでいます。2025年には超高齢化社会を迎えるとまでいわれており、ますます問題が山積み状態となっています。
総人口が右肩下がりを続けているということは、死亡者数が出生数を上回っている状態が続いているということです。その結果、2012年と2020年では死亡者数が変わっているという訳になります。
厚生労働省の推計では2025年に140万人を超えた年間死亡者数は2040年に年間160万人でピークを迎えると想定されています。その後、2060年まで140万人を超える死亡者数が推移すると推測しています。
▲死亡する場所を選べる時代
一昔前までは、死亡する場所=病院でした。しかし、病院で最期を迎える人が多いのは日本だけです。スウェーデンでは病院・施設・自宅とで均等な割合となっています。オランダも同様です。フランスでは半数が病院ですが、自宅で最期を迎える人も1/4程度存在します。日本ではおよそ80%が病院で死亡して、自宅で最期を迎える人は10%程度でした。これでも自宅で死亡する人は増えているのです。
平成27年人口動態調査をみると、1951年は自宅で亡くなる人が病院で亡くなる人よりも圧倒的に多いです。これは病院へ入院できる人が限られており、往診などで自宅療養している人が多かったからです。その後、病院の医療技術向上により病院の方が良い医療を受けられるとなり、1979年を境に病院と自宅で半数となりました。その後は、病院で亡くなる人の数が圧倒的に多くなります。自宅で最期を迎える人は少ないですが2007年を底打ちとして、徐々に増えているのです。
▲選ぶ範囲が広がった
昔は患者主体ではなく、医師主体の医療が行われていました。しかし、それでは患者の選べる範囲が少ないため患者の望む医療が行われないのです。また、平成18年には富山県射水市民病院において、人工呼吸器取り外し事件が起きました。いわゆる尊厳死のルール化へ議論が始まった事件でしたが、厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会」を設置しました。
●自分の人生を締めくくるガイドライン
厚生労働省は平成26年度に人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインを発行しました。人生の最終段階における医療及びケアの在り方と人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続で分けて紹介しています。
(以下、ガイドラインの概要)
▲人生の最終段階における医療及びケアの在り方
・ 医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされた上で、患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本として終末期医療を進めることが重要。
・人生の最終段階における医療の内容は、多専門職種からなる医療・ケアチームにより、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断する。
▲人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続
・患者の意思が確認できる場合には、患者と医療従事者とが十分な話し合いを行い、患者が意思決定をし、その内容を文書にまとめておく。説明は、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じてその都度行う。
・患者の意思が確認できない場合には、家族が患者の意思を推定し、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
・患者・医療従事者間で妥当で適切な医療内容について合意が得られない場合等には、複数の専門家からなる委員会を設置して、治療方針の検討及び助言を行うことが必要
患者の意思決定が優先されており、患者と医療者で話し合いを行い人生の最終段階を決めることが明記されています。患者の意思が確認できないような場合は患者の推定意思を尊重するとされており、最善の形で最期を叶える方向です。
●看取りの課題や介護との連携
人生の最終段階の医療の決定プロセスに関するガイドライン作成において、
・ 人生の最終段階における医療に関する意識調査結果を見ると、患者(入所者)との話し合いを行っていると回答した従事者の割合は、約7~9割であった。
・ 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインの利用状況をみると、3~5割の従事者がガイドラインを知らないと回答した。
・ 在宅ターミナルケア等に係る対応が診療報酬で評価されているが、ガイドラインを参考にすること等は示されていない。
・ 療養病棟や地域包括ケア病棟では、自宅等から患者を直接受け入れた場合に「救急・在宅等支援病床初期加算」が14日を限度として算定できる取扱いとなっている。
・ 機能強化型在支診等の施設基準では、看取りの実績要件を設けている。
・ 本人の意思に反した(延命を望まない患者の)救急搬送が散見されることから、関係機関間で患者の意思を共有するための取組が行われている。
という意見が出ました。実際、これらに関しては
○ 患者や家族の希望に応じた看取りを推進する観点から、ガイドラインを参考に行われる医療等の提供方針の決定プロセスについて、診療報酬上の位置づけを検討してはどうか。
○ 看取りについては様々な希望があることから、在宅で療養している患者が、在宅の主治医と病院との連携の下で、本人や家族の希望に基づき、最期を入院で看取った場合の評価を検討してはどうか。
という代替案が出て、いまだに論点としてしばしば問題となることがあります。
また、介護現場との連携においては
○超高齢社会の進展に伴い今後さらに死亡者数が増加することに対して、医療介護従事者や国民の看取りに関する理解がまだ不十分。地域包括ケアシステムを構築し、住みなれた地域でできるだけ長く暮らしながら看取りを迎えることができるように、必要性と地域性に応じて在宅、入院、外来医療及び在宅、施設介護サービスを選択して利用できる体制を整備する必要がある。
○ 人生最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインがほとんど浸透していないことが問題。 しっかりと広報・啓発を図っていくことが今後必要。
○ 患者や家族の看取りに関する希望が不明であるため、意思にかかわらず搬送されていることが、一番問題。国民の70%が意思表示を紙面で行うことに賛成しているが、3%しか行っていないという乖離を解消する必要がある。例えば、75歳になって後期高齢者制度に変わり保険証を渡す際、ガイドラインの説明を行う等、その時点で、人生の最終段階においてどのような医療等を希望するかについての考え方を確認することも一つの方法。
○ 在宅療養中で看取り期の患者や家族の希望と異なる救命措置等が搬送先で行われる例については、本人の意思が反映されないという問題と、それにより不必要な医療が提供されるという問題がある。介護職は利用者が急変した際、意思表示がなければ、まず救急車を呼ぶので、患者や家族の意思の確認が進むことが望まれる。さらに、その意思表示を連携する関係者が共有できる仕組みが必要。介護支援専門員が、 意思表示の確認に対して責任を持つことは難しいが、意思があるかないかについては把握する必要がある。
○ リビング・ウィルよりも、生前にかかりつけ医と十分話し合っていくことが重要であり、強調するべき。
○ リビング・ウィルが進んでいないが、意思がなくなったときの治療等について任せる人を指名する代理人
制度について検討するべき。
との意見が出ていました。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。