医療保険や介護保険を使って訪問看護を受けるには?介護保険との違いも解説
病気やケガなどは程度によって、入院や自宅での療養生活が始まります。入院の場合は医師や看護師など医療スタッフが常に身近にいます。しかし、自宅の場合は専門スタッフがいないため、訪問看護を利用することも珍しくありません。
しかし、訪問看護を利用する場合、いくらかかるか気になりますよね。そこで、役に立つ制度が医療保険です。ここでは、医療保険と介護保険を使って訪問看護を受ける方法や、医療保険と介護保険の違いもご紹介します。訪問看護を検討している方は参考にしてください。
医療保険と介護保険の違い
医療保険と介護保険があることを知っていても、違いまで知らないこともあります。まずは、医療保険と介護保険の違いを解説します。
医療保険とは
医療保険は「相互扶助の精神」を基本に考え、加入者している一人ひとりがお金を出し合う保険です。そして、医療費を多く使っている方の負担を軽減し、必要な医療を受けやすくすることが目的です。医療保険は「公的医療保険」と「民間の医療保険」の2種類があり、それぞれで役割が異なります。
公的な医療保険の種類は以下の3つです。
■国民健康保険
対象者:仕事を退職した方・自営業者・家族
保険者:特別区を含む市町村・国民健康保険組合
■健康保険
対象者:会社に属している従業員
保険者:健康保険組合・協会けんぽ・共済組合 など
■後期高齢者医療制度
対象者:職業にかかわらず75歳以上の方
保険者:広域連合
また、医療費の負担額は年齢で異なります。
6歳未満 :一般・低所得者(2割)・現役並み所得者(2割)
6歳~70歳 :一般・低所得者(3割)・現役並み所得者(3割)
70歳~74歳 :一般・低所得者(2割)・現役並み所得者(3割)
75歳以上 :一般・低所得者(1割)・現役並み所得者(3割)
ここまででご紹介した医療保険はあくまで「公的」な医療保険です。一方、「民間」の医療保険もあります。民間の医療保険は、公的な医療保険ではカバーできない部分まで保険の対象です。そのため、公的な医療保険だけでは不安な方が、民間の医療保険を検討することもあります。
介護保険とは
介護保険は平成12年4月からスタートした制度です。加入年齢は40歳からのため、39歳までは加入していない保険です。加入意思の有無に関係なく、40歳になると自動的に加入します。
目的は、介護が必要な方をサポートすることです。仕組みは医療保険と同様に加入者全員で保険料を払い、その保険料で介護が必要な方にサービスを提供します。また、自己負担額は原則1割です。ただし、前年度の所得に応じて2割または3割負担になることもあります
訪問看護を利用できる方の条件
自宅で看護が必要になった場合、訪問看護を利用すると便利です。しかし、自費で受けると医療費が高くなります。そこで、医療費を安くできる公的医療保険・公的介護保険を利用する方法をご紹介します。
公的な医療保険で利用するとき
公的な医療保険を活用して訪問看護を受けるには条件があります。
■40歳未満
利用条件:医師が訪問看護の利用を認めた患者
■40歳以上65歳未満
利用条件:医師が訪問看護を必要と認めた患者で①②のいずれかに該当する患者
①厚生労働省が指定している16特定疾病にり患していない患者
②16特定疾病にり患しているにもかかわらず、要介護・要支援どちらにも認定されていない患者
■65歳以上
利用条件:医師が訪問看護の利用を認めた患者で、①または②に該当する患者
①介護保険の要支援・要介護のどちらにも認定されていない
②介護保険を利用しない患者
■特例
利用条件:要介護・要支援の認定を受けていても、該当する患者は医療保険での訪問看護を利用可能
①16特定疾病にり患している
②病状が悪化し、医師が「訪問看護特別指示書」を出している患者
保険料を払っていても対象に該当しなければ、医療保険を使って訪問看護を利用できません。そのため、まずは利用できるか病院や行政の担当窓口などで確認をしましょう。
公的介護保険で利用するとき
公的な介護保険を使って訪問看護を利用する条件は下記の表のとおりです。
■40歳未満
利用条件:介護保険の対象年齢に達していないため利用不可
■40歳以上65歳未満
利用条件:16特定疾病のうち加齢が原因の病気にり患し、要介護または要支援いずれかの認定を受けている患者 (介護保険第2号被保険者)
■65歳以上
利用条件:要支援または要介護の認定を受けた患者
(介護保険第1号被保険者)
医療保険の場合は「特例」が認められていますが、介護保険に特例はありません。また、16特定疾病も「加齢が原因の病気」に限定していることが特徴です。
医療保険と介護保険のサービスの違い
医療保険と介護保険で訪問看護を利用する場合、対象に違いがあることをご紹介しました。
しかし、どちらの保険を利用しても、訪問看護のサービス内容は同じです。たとえば、服薬指導や健康観察はもちろん、処置や環境整備、相談窓口の案内などもサービスに含まれています。
医療保険と介護保険は、利用できる対象者とは別の項目にも違いがあります。以下の表に違いをまとめたため参考にしてください。
■医療保険
自己負担割合:利用した金額の1〜3割
※差額が発生した場合は、差額分のみ自己負担
※交通費やおむつ代などは実費
支給限度額 :なし
訪問回数 :3回/週まで。ただし、16特定疾病などの患者は医師が必要と判断した場合のみ4回以上/週の利用可能
1回の訪問時間:1回の訪問時間は30分〜90分
※医師が認めた場合に限り90分/回を超える利用も可能
■介護保険
自己負担割合:利用した金額の1~3割
※支給限度額を超えた分と保険対象外のサービスは全額自己負担
支給限度額 :あり
※介護度で支給限度額が異なる
訪問回数 :利用回数に制限はなし
※ケアプランで利用回数が設定されるため、決められた回数でサービスを受ける。
※支給限度額内に収まるように、利用回数が決まる
1回の訪問時間:①20分未満
②30分未満
③30分以上60分未満
④60分以上90分未満
訪問看護を利用するための手順
訪問看護を利用するためには手続きが必要です。ここからは、医療保険と介護保険のいずれかを使って訪問看護を利用するための手順をご紹介します。
医療保険の手順
大前提として医師が訪問看護の利用を「認めていること」です。医療保険を利用する場合、赤ちゃんから訪問看護を利用できます。まず、訪問看護を利用する場合の手順は以下を参考にしてください。
■訪問看護を受けるまでの手順
①下記のいずれかに相談をする
・かかりつけの医師や看護師
・病院や施設の医療相談室、地域連携室の相談員やソーシャルワーカー
・訪問看護ステーション
・ケアマネージャー(介護支援専門員):居住介護支援事務所
・地域包括支援センター
・市町村役場(在宅福祉関連の相談窓口) など
②かかりつけ医から「訪問看護指示書」が発行される
③訪問看護ステーションと契約
④訪問看護を受ける
医療保険を利用する場合、要介護認定を受ける必要はありません。
介護保険の手順
介護保険を利用する場合、医療保険のときよりサービスを受けるまでに必要なことがいくつかあります。まず、介護認定を受けていない場合は、申請をして介護認定を受けましょう。介護度が決まると、訪問看護を受けるための手続きが始まります。
■訪問看護を受けるための手順
①要介護認定を受けていない方は、要介護認定を受ける
②介護度が決まったらケアマネージャーへ相談
③かかりつけ医から「訪問看護指示書」を発行
ケアマネージャーから「ケアプラン」を発行
④訪問看護ステーションと契約
⑤訪問看護を受ける
訪問看護は自費でも利用できる
訪問看護は医療保険と介護保険ではなく、自費で利用することも可能です。ただし、保険を活用しないためサービスを受けるとその料金は全額負担となります。そのため、多額のお金が必要です。
さらに、民間の医療保険を利用するのも方法のひとつですが、訪問看護で受ける内容をすべてはカバーできません。もし、民間の医療保険を利用するなら、契約内容を事前に確認することが大切です。
医療保険を使って訪問看護を活用しよう
病気になると、入院がいつまでも続くわけではありません。状態によって家庭での看護に移行します。しかし、家族で全てを行うことは難しく、そのようなときに訪問看護が便利です。
訪問看護は医療保険や介護保険を使うことができるため、どちらかを活用して家庭でも必要な看護を受けましょう。