認知症の方への上手な対応とは?
家族が認知症と診断されたら、どうしたらいいか不安に感じる方は多いのではないでしょうか。介護する上では、認知症の症状や正しい対応を理解することがとても大切です。
今回は認知症の方への対応について紹介します。対応について悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
認知症の症状はさまざま
認知症になると、さまざまな症状が表れます。最初は物忘れ程度でも、どんどん症状が進むと、介護者が大変になることがあります。
・記憶障害
同じことを何度も言う、数分前・数時間前のことを忘れてしまう、家族や知り合いなどの名前が思い出せない、同じものを何度も購入してしまう
・見当識障害
日付や曜日などがわからない、自分がいる場所がわからない、慣れた道でもわからない
・理解・判断力の低下
金銭管理ができなくなる、説明されても理解ができない
・実行力障害
物事の計画を立てられなくなったり、順序立てて行動ができない
・その他
意欲がなくなる、憂鬱で塞ぎがちになる、怒りっぽくなるなど
認知症の種類や進行具合など、人によって症状が異なります。事前に症状を理解することで、介護者も心構えができ、少し気持ちも楽になるかもしれません。
認知症による問題行動
認知症により、対応が難しくなる行動が出てくる場合があります。
・物盗られ妄想
記憶力や思考力の低下で、物事を覚えていられないことが増え、「物盗られ妄想」が現われる場合があります。
「お金を盗まれた」「泥棒に入られた」「周りの人に嫌がらせをされている」などの症状が見られます。家族やヘルパーなど、近くで接している方に対して見られることが多いです。
まずは否定せずに、本人の話を聞いてあげることが大切です。否定したくなる気持ちもわかりますが、否定しても解決するのは難しいです。被害妄想を訴えているときは、「気持ちを聞いてほしい」という思いが強く出ていることが多いです。丁寧に話を聞いて、本人が納得するまで一緒に探してあげるようにしましょう。
・徘徊
徘徊は、認知症でよく見られる症状の一つです。全国の警察に届け出が出されている「徘徊の行方不明者」は、令和2年だけで約1万8千人にも上っています。
警察に保護され、無事に帰宅できれば良いですが、途中で事故に遭ってしまう可能性もあります。
徘徊の原因は「慣れた道だが記憶力が落ちて、家に帰れなくなってしまった」「何かの目的を達成したい」「目的はなく、突発的な行動に出てしまった」「夕方から夜間にかけてせん妄や不安に襲われ、自宅を出たくなる」などさまざまです。
徘徊を直接止めるのは難しく、裸足で家を出たり、2階から飛び降りようとすることもあり、危険が生じやすいです。
徘徊に備えて、さまざまな対策を取っておきましょう。
- 本人が持ち歩く物に、名前や連絡先がわかる物、GPS機能がついたものを入れておく
- 玄関に音や光のセンサーを設置し、外に出たのがわかるようにする
- 近所の方などに事前に状況を伝えておく
徘徊を止めるのは難しいため、見守りができる体制を整えておく必要があります。
・暴言・暴力
全ての人に当てはまるわけではありませんが、介護者に対して手を出してしまう場合があります。理由としては、感情のコントロールが難しくなるためです。「状況がわからず混乱してしまう」「否定されたことに対しての怒り」「体調不良」などが暴言・暴力につながることがあります。
元々は温厚な性格だった方も、急に怒り出したりすることもあります。介護者は認知症で暴言・暴力が現れることを理解しておくと、焦らずに対応できるかもしれません。
まずは本人の話を丁寧に聞いたり、落ち着かない時は一旦その場から離れてみましょう。
暴言・暴力がエスカレートする場合、介護者にも危険が及ぶ可能性があるため、認知症専門外来などの受診も検討した方が良いでしょう。
・介護拒否
ある日、せっかく用意した食事を食べない、お薬を吐き出してしまう、お風呂に誘ったら怒りだしてしまったなどこうした現象を介護拒否ともいいます。介護拒否は、食事や排泄、入浴など日常生活での様々な場面やデイケアや通院のための外出の場面などで多く見受けられます。
介護者やご家族はこれまでの介護の苦労とこの先のことを考え、報われない、救われない気持ちになってしまうことも多いでしょう。
一方で、ご本人はご本人なりの切実さと理由をもって拒否をされていることが多いのです。
原因として、誰にも頼りたくないと思っていたり、本人の自尊心が傷ついてしまったことが、拒否につながる可能性が高いです。
時間がないと介護者が全てをやってしまいたくなりますが、本人ができるところはやってもらったり、本人の意志を尊重しながら介護することが大切です。
認知症にはどのように対応する?
・信頼関係を築く
人と生活する上で、信頼関係を築くことは大切ですよね。認知症の方でも一緒です。
「人に頼りたくない」「認知症になった自分を他人に見せたくない」「弱いところを見せたくない」と感じる方が多いです。本当は手伝ってほしいと思っていても、恥ずかしさから家族でも頼ることができない場合もあります。
まずは日頃から信頼関係を築き、小さなことでも相談できる関係作りが大切です。何か困ったときに相談できる関係は、本人にとってはとても心強い存在になるでしょう。
・相手のペースに合わせる
認知症になると、計画を立てたり、順序立てて行動することが難しくなります。そのためできることが少なくなったり、ペースが遅くなったりします。
その際は急かすのではなく、本人のペースに合わせてあげることが大切です。
ゆっくり話しかけることで、本人も話を理解しやすくなります。
・余裕をもって対応する
介護者は時間にも気持ちにも余裕を持って対応するようにしましょう。介護者が困惑していたり、焦りながら対応すると、本人も困惑してしまいます。介護者のイライラが伝わると、本人も介護されることに不快感を覚え、介護拒否につながることもあります。急かしても、説明がうまく伝わらず、お互いイライラしてしまいます。
時間がかかるのは当たり前と思いながら介護をすると、余裕が生まれるようになります。
やってはいけない対応
認知症の方にやってはいけない対応があるのはご存知でしょうか?今回は3つ紹介します。
・物忘れを指摘する
認知症の方は「記憶にないことはやっていない」と思っていることが多く、物忘れを指摘することで、怒ってしまうことがあります。嫌がらせをされていると感じ、余計に拒否的になってしまうこともあるため、物忘れを指摘することは避けましょう。物忘れを指摘しても、何も解決しません。
・強い口調で対応する
介護者がイライラしてしまい、強い口調で指示してしまうことがあるかもしれません。しかし理解力が低下している中、強い口調で説明することは、余計に混乱してしまうだけです。
介護者に対して、負の感情が生まれる可能性があるため、強い口調で対応することは避けましょう。
・家に閉じ込める
徘徊の可能性があるからといって、外出の機会を減らすことは避けましょう。
「認知症になった姿を近所の人に見せない方がいいだろう」「他人と関わらない方がいいのではないか」と、介護者が良かれと思って家の中で過ごさせようとすることがあります。しかし他人と関わることは、本人の刺激にもなります。介護保険を利用し、通所サービスを利用するのも良いでしょう。
困った時はどうしたら良い?
・誰かに相談する
介護者が一人で抱え込まず、誰かに相談しましょう。家族・友人・近所の方など、自分が相談しやすい人で大丈夫です。
誰にも相談できず、ネグレクトに繋がってしまったというケースもあるため、誰かに話すことはとても大切です。
専門家へ相談するのも一つです。例えばかかりつけの病院のソーシャルワーカー、お住まいの地域の地域包括支援センターへ相談してみましょう。さまざまな視点でアドバイスをしてくれたり、必要であれば制度利用の提案をしてくれます。
・介護サービスを利用する
自分だけでの介護が大変になってきた時は、介護サービスを利用しましょう。介護保険を申請し、介護認定を受けることで、介護サービスを利用できます。ケアマネジャーとの関わりができることで、何かあれば相談できる窓口ができます。
認知症はさまざまな症状が現われるため、事前に症状を理解し、気持ちに余裕を持って対応することが大切です。
そして一人で抱え込まず、周りの人へ相談したり、サービスを利用することをおすすめします。