介護保険の法改正について|2021年度の制度内容を解説
介護保険は3年ごとに法改正が行われているのはご存知でしょうか。改正内容によっては、利用者にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
今回は2021年に施行された法改正について解説します。
介護保険法とは
介護保険法とは1997年に「介護保険制度」のために作られた法律で、2000年に施行されました。介護が必要な方やそのご家族に対して、国で支えていく制度です。
40才以上の方が加入者として保険料を納めます。保険料を納めると、要支援・要介護状態になった際に、介護保険サービスを利用できます。
対象になるのは、65才以上の要支援・要介護状態にある方、40〜64才で特定疾患・要支援・要介護状態にある方です。
介護保険は保険料と国の財源で賄われており、利用者は費用の一部を負担することで、介護保険サービスを利用できます。基本的には1割負担ですが、利用者の収入によって2〜3割負担になることがあります。
3年ごとに改定がある
介護保険は3年ごとに改定があります。介護保険の制度を運営するためには、情勢に合わせて都度制度の内容を変更する必要があるからです。前回の2018年法改正では、高所得の方は3割負担に設定されるなど、利用者にとっても大きな影響を与える改正が行われました。
そのため3年ごとの法改定は、私達も把握しておく必要があります。
【2021年4月施工】介護保険改正のポイント
2021年に法改正されたポイントは5つです。
①感染症や災害への対応強化
新型コロナウイルスや毎年のように起きる大災害に対して、利用者が継続してサービスを受けることができる体制づくりが必要です。
具体的には「感染対策の強化」「業務継続に向けた取り組みの強化」「災害への地域と連携した対応の強化」「通所介護等の事業所規模別の報酬等に関する対応」についての対応が求められています。
また介護保険のサービス事業所は、普段から委員会の開催や訓練・シュミレーションの実施が必要です。
②地域包括ケアシステムの推進
近年「地域包括ケアシステム」が求められています。「慣れ親しんだ地域から離れたくない」「最期まで自宅で生活したい」という方のために、住み慣れた地域で最期まで生活できるよう、サービスを切れ目なく提供する体制です。
具体的には「認知症への対応力向上に向けた取組の推進」「看取りへの対応の充実」「医療と介護の連携の推進」「在宅サービスの機能と連携の強化」「介護保険施設や高齢者住まいにおける対応の強化」「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」「地域の特性に応じたサービスの確保」についての対応が求められています。
認知症の方への支援向上のため、認知症介護基礎研修を受講するための措置の義務化などが必要になったり、PDCAサイクルを元に介護データベースを使用した地域支援を行う必要があります。
③自立支援・重度化防止の取組の推進
制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進することを目的とした改定が行われました。
具体的には「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化」「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」が求められています。
④介護人材の確保・介護現場の革新
高齢社会にあたり、介護人材の確保が大切です。そのため介護人材の確保・介護現場の革新に対応することを目的とした改定が行われました。
具体的には「介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進」「テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進」「文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進」が求められています。
業務効率化を図るため見守り機器やインカム等のICTの導入に関してや、介護職員の知識向上や、業務負担軽減を図る必要があります。
⑤制度の安定性・持続可能性の確保
現行のサービスを適切に運営するために具体的には「評価の適正化・重点化」「報酬体系の簡素化」が求められています。
⑥その他
・施設系サービスにおいて、事故発生の防止と発生時の適切な対応のための担当者設置の義務化(6ヵ月の経過措置あり)
・安全管理体制未実施減算、安全対策体制加算の創設
・全サービスに、虐待の発生・再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることの義務化(3年の経過措置あり)
・施設系サービス、短期入所系サービスにおける食費の基準費用額、現行1,392円から改定後1,445円への見直し
2024年の法改正はどうなるのか?
介護人材の確保や現場の生産性向上」「給付と負担のあり方」「保険者機能の強化」「自立支援・重度化防止の推進」などを改めて提示しています。
あわせて「介護サービスの基盤整備」「住まいと生活の一体的な支援」「医療と介護の連携強化」「認知症施策の展開」「家族を含めた相談支援体制の構築」「介護予防・社会参加活動の充実」なども上がっています。法改正は私達の生活に大きく関わる可能性があるため、注目しておく必要があります。