高齢者が不眠になりやすい原因と対処法
加齢にともない、睡眠に関するトラブルや悩みを抱えるようになった人は少なくないのでしょうか。
不眠は、そのままにしておくと身体への負担が蓄積し、病気の発症リスクも高まってしまうため、早期対処が重要です。
そこで今回は、高齢者が不眠になりやすい原因とその対処法について解説します。
高齢者の不眠の原因と特徴
まず、高齢者の不眠の原因と特徴について解説します。
加齢にともない睡眠自体が変化する
加齢により、体内時計に変化が起こります。
睡眠を支える血圧やホルモン、体温などの要素がすべて変化するため、睡眠の質が悪化しやすくなってしまいます。
また、脳の眠りである「ノンレム睡眠」が減少し、身体の睡眠である「レム睡眠」の割合が増加することも、眠りが浅くなる一因です。
不眠タイプは人それぞれ
不眠には、寝床についてから寝付くまでに時間がかかってしまう「入眠障害」や、十分な時間寝ているにもかかわらず熟睡感の得られない「熟眠障害」、夜中に起きてしまう「中途覚醒」、明け方早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」など、さまざまなタイプがあります。
なかでも、高齢者に多くみられるのは、中途覚醒と早朝覚醒です。
頻尿
中途覚醒の原因になりやすいのが、頻尿です。
男性の場合は前立腺肥大による影響を受け、頻尿になりやすくなります。
男女関係なく起こるのが、過活動膀胱や尿路感染症などによるものです。
持病の症状や治療薬による影響
狭心症や心筋梗塞などによる息苦しさなどの症状や、関節リウマチなどによる身体の痛みなどの症状も、眠りに影響を及ぼします。
また、高血圧や脂質異常症治療薬の副作用で、睡眠障害が起こることも。
認知症による影響
認知症を患っている高齢者の場合、生活リズムが崩れやすく、眠りはさらに浅くなることがわかっています。
重度の認知症の場合は、入眠後1時間足らずで覚醒してしまうことがあり、本人にとっても家族にとっても苦痛が大きいものです。
最高体温の低下
人の体温には日内変動がみられ、朝目覚めてから体温は上昇しはじめ、日中の活動に備えます。
就寝後には再び体温が下がりはじめ、身体や脳を休ませるよう働きます。
しかし高齢者の場合は、最高体温が低下するため、体温を下げるために必要な力や時間も少なくなり、睡眠時間が短くなってしまうわけです。
活動量の低下
活動量の低下も、不眠の一因であるといえます。
高齢者は、家事や外出に対して自ら積極的に取り組まない限り、どうしても家でゆっくりと過ごす時間が増えてしまいがちです。
不眠が身体におよぼす影響
不眠は、単に寝られないことへの辛さだけでなく、心身に悪い影響を与えてしまいます。
不眠が心身におよぼす影響の例は、以下のとおりです。
- 免疫力の低下
- ホルモンバランスの乱れ
- 血圧・血糖値の上昇
- 精神的な不調
不眠による血圧や血糖値の上昇は、生活習慣病をはじめとするさまざまな疾患の原因になりえます。
また、不眠により気持ちが落ち込んでしまうと、うつ状態やうつ病を発症してしまうリスクも。
これらの疾患を防ぎ、高齢者が自分らしく健康に生活するためには、不眠を解決し、十分な質そして量の睡眠を確保することが大切です。
高齢者の不眠への対処法
ここからは、高齢者の不眠への対処法について解説します。
寝る時間と起きる時間を一定に
生活リズムを整えるためには、寝る時間と起きる時間を一定に保つことが重要です。
人間の身体は、一定の時刻に寝たり起きたりすることで体内時計が調整される仕組みになっています。
朝起きたら日光浴を
日光を浴びることで、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が活性化されます。
「セロトニン」は睡眠ホルモンである「メラトニン」の材料となり、体内時計を調節するのに役立ちます。
メラトニンは日光を浴びてから15時間程度で活性化することがわかっているため、朝起きてなるべく早い日光浴や散歩がおすすめです。
日中は横になりすぎず活動する
日中は、できるだけ活動するよう心がけましょう。
「やることがないから」と横になってばかりいると、生活にメリハリがつきにくくなってしまいます。
近所を散歩する、家事をする、趣味をするなど、日中は意識的に活動するようにしましょう。
適度な運動を心がける
適度な運動も、睡眠の改善に効果的です。
睡眠ホルモンである「メラトニン」を作るための材料である「セロトニン」は、リズム運動によって活性化されることもわかっています。
散歩やウォーキングなどの運動がおすすめです。
日々の生活に運動を取り入れれば、心地よい疲労感が得られ、睡眠の質の改善につながります。
ストレスを溜め込まずリラックスする
ストレスを溜め込まずリラックスすることも大切です。
家族や友人と話す時間を作る、趣味に没頭する、好きなテレビ番組を見るなど、自分にとってストレス発散となる行動を積極的に取り入れましょう。
入眠前にぬるめのお湯のお風呂につかることもおすすめです。
寝る3時間前以降はテレビやスマートフォンの使用を避ける
寝る3時間前以降は、テレビやスマートフォンなどによるブルーライトの光を避け、部屋を暗くするなど眠るための環境を整えましょう。
ブルーライトは睡眠の質を著しく低下させます。
カフェインを含む飲料の摂取を控える
カフェインには、利尿作用と覚醒作用があるため、入眠前の摂取は控えましょう。
カフェインは、コーヒーだけでなく、お茶にも含まれていることが多いため注意が必要です。
アルコールはほどほどに
「寝つきが良くなるから」という理由で睡眠前にアルコールを摂取する人もいるかもしれませんが、アルコールには眠りを浅くする作用や利尿作用があるため注意が必要です。
日常的にアルコールを摂取している人は慢性的な不眠に陥る可能性があるため、飲酒の頻度や1日の飲酒量を見直してみましょう。
禁煙する
たばこに含まれるニコチンには、カフェインと同様覚醒作用があります。
喫煙は、不眠以外にも身体にさまざまな悪影響を及ぼすため、頑張って禁煙してみましょう。
寝る前1時間以降の水分摂取は控えめに
高齢者は、脱水予防などの観点から十分な水分摂取が必要です。
しかし、入眠前に水分をたっぷりと摂取してしまうと、夜間に尿意で覚醒しやすくなってしまいます。
必要な水分量はできるだけ起床後~夕食時までに摂取するよう心がけ、寝る前に水分を摂りすぎないよう注意しましょう。
今回は、高齢者の不眠の原因とそれに対する対処法について解説しました。
不眠はさまざまな疾患の原因になるため、早めに対処することが重要です。
まずは、自分でできる取り組みからはじめてみましょう。
それでもなかなか症状が改善されない場合には、医療機関の受診をおすすめします。