変形性膝関節症には『運動療法』が効果的!
膝が痛みを理由に運動や外出を控えていたりしませんか?
50歳以降に多いとされる変形性膝関節症は、運動不足が原因で悪化してしまうかもしれません。
この記事の前半で「変形性膝関節症とはどんな病気か、運動療法が効果的な理由」について、後半で「自宅でできる運動療法」について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、関節のクッションの役割をしている軟骨がすり減り、骨がこすれて痛みが起こる病気です。
50代以降の女性に多く、膝に痛みを抱えている方は推定800万人とも言われています。
加齢や肥満、筋力低下などが原因でO脚 または X脚へと変形し、痛みや膝の曲げ伸ばしが制限されるなどの症状が現れるようになります。
変形が進行することで立ち座りや歩行、階段・段差の昇り降りなど日常生活動作が制限されていき、早めの予防・改善が重要です。
すでに膝に痛みを抱えている方や早めに予防しておきたい方も「運動療法」の実践がおすすめです。
変形性膝関節症における「運動療法」の効果とは?
日本整形外科学会や国際変形性関節症学会などのガイドラインでは「変形性膝関節症には関節の可動域拡大、筋力トレーニング、有酸素運動などの運動療法が効果的」とされています。
運動療法によって得られる効果は以下のようなものがあります。
- 痛みによって緊張した筋肉がほぐれる
- 関節の可動域が広がる
- 血行が改善する
- 筋力がつき、関節の安定性が高まる
- 体重が減り、関節への負担が軽減
適切な運動療法を行うことで、変形性膝関節症の予防・改善・進行を遅らせる効果があります。
しかし、普段よりも痛みが強い場合や体調が優れない場合は無理をせず、休息をとるようにしましょう。
安静のしすぎは膝痛悪化の原因
「膝に痛みがあるのなら安静にした方がいいのでは?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、安静にしすぎると痛みが悪化する原因となります。
なぜなら、運動をしないことによって筋力低下や肥満などが進行し、関節の負担が増えて膝の痛みが強くなるからです。
変形性膝関節症の主な原因は、加齢・肥満・筋力低下などと言われており、痛みがあるからと運動をしないことによって「運動不足により筋力低下と肥満が進行→関節の負担が増えて膝の痛みが強くなる→さらに運動をしなくなる」といった悪循環に陥ってしまいます。
そのため、痛みがあるからといって安静にするよりも、適切な運動療法を行うことで膝の痛みが改善する可能性は高くなります。
痛みが強くて運動できる状態ではない方は医師に相談し、薬物療法や物理療法、装具療法などを並行しながら運動を行うといいでしょう。
自宅でできる変形性膝関節症の運動療法
この章では『自宅でもできる変形性膝関節症の運動療法』を紹介します。
大きく分けて以下の3種類を紹介します。
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 有酸素運動
また、運動療法を実践する場合は以下の点に注意してください。
- 体調が悪い・普段よりも膝が痛い場合はしない
- 体調が悪くなったらすぐに中止する
- 運動量や負荷量はかかりつけへ相談する
- 運動と運動の間には休憩を入れる
- 水分を取る
体調管理には充分注意しながら、無理のない範囲で運動療法を続けていきましょう。
ストレッチ
変形性膝関節症の方は”痛みによって膝周りの筋肉が硬くなっている”ことが多いため、ストレッチから始めましょう。
ストレッチの方法は3つ。
- 膝の筋肉を伸ばすストレッチ
- 膝の曲げ伸ばし
- 膝のお皿を動かす
それでは1つずつ解説していきます。
膝の筋肉を伸ばすストレッチ
まずは「膝の周りの筋肉をほぐすストレッチ」です。
膝の痛みによって膝周りの筋肉が凝り固まってしまうことがあり、関節の動きを悪くしてしまう原因となります。
以下の手順で膝周りの筋肉をほぐしておきましょう。
- あお向けに寝ます
- 片方の膝または膝裏を手で持ち、もう片方の足は伸ばしたまま
- 反動をつけずに、胸に膝をゆっくり近づけます
- 両足10回ずつを1セットとし、1日3セットを目安に両足とも行いましょう
手で引っ張るのではなく、足の力で胸に引き寄せるのがポイントです。
膝の痛みがでない範囲で行うことでストレッチ効果を得ることができます。
膝の曲げ伸ばし
次の運動は「膝の可動域が広がる運動」です。
膝関節の可動域が広がることで”関節内の動きや筋肉の動きが改善”し、痛みの軽減につながります。
以下の手順で、膝の可動域を広げてみましょう。
- 膝を伸ばした状態で床に座り、片方の踵にタオルを敷きます
- 手の位置はお尻のやや後ろ
- タオルを敷いている方の足を滑らせながら、ゆっくりとできる限り曲げます
- 曲がりきったら、足を滑らせながらゆっくりとできる限り伸ばします
- 両足10回ずつを1セットとし、1日3セットを目安に両足とも行いましょう
膝の痛みが出ない範囲で行うのがポイントです。
また、お風呂の中で同じ運動をすることもできます。
膝のお皿を動かす
膝のお皿(膝蓋骨)は太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)の力を発揮しやすくする役割を持っています。
膝のお皿(膝蓋骨)の動きが悪いと大腿四頭筋の力が発揮できなくなり、膝の安定性が低くなってしまいます。
以下の手順で、膝のお皿の動きを改善しておきましょう。
- 足を伸ばして床に座り、足の力は抜いた状態にします
- 両方の指で膝のお皿を掴み、上下・左右・斜めなど様々な方向に動かします
- 30秒を1セットとして、1日3セットを目安に行いましょう。
膝のお皿は、痛みのない範囲で動かすのがポイントです。
筋力トレーニング
変形性膝関節症に効く筋力トレーニングを紹介します。
筋力トレーニングの方法は4つ。
- 膝伸ばし運動
- お尻上げ運動
- お尻の外側を鍛える運動
- スクワット
それでは1つずつ解説していきます。
膝伸ばし運動
膝伸ばし運動は”太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)”を鍛えることができます。
大腿四頭筋は「膝関節を安定させるために重要な筋肉」で、変形性膝関節症の方の筋力トレーニングで最も推奨されている運動です。
- 膝を伸ばして床に座ります
- 運動する方の膝の下にタオルを敷きます
- 膝下のタオルを3秒間つぶします
- 両足10回ずつを1セットとし、1日3セット行いましょう
床に座っての運動が難しい方は、椅子に座った状態で膝を伸ばす運動を反復して行いましょう。
お尻上げ運動
お尻上げ運動は”太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)とお尻の筋肉(大臀筋)”を鍛えることができます。
- 膝を立ててあお向けに寝ます
- 3秒かけてゆっくりお尻を上げ、3秒かけてゆっくり下ろします
- 10回を1セットとし、1日3セット行いましょう
肩・お尻・膝が一直線になるようにお尻を上げるのがポイントです。
お尻が上がらない方は、両手で床を押してサポートしながら行ってみましょう。
お尻の外側を鍛える運動
お尻の外側にある筋肉「中臀筋」を鍛える運動です。
中臀筋は歩く時に骨盤を安定させる筋肉です。
骨盤が安定することで、”膝への負担を減らす”ことができるので鍛えておきましょう。
- 横向きに寝ます
- 下にある足は軽く曲げ、上にある足は伸ばしたままです
- 上半身や骨盤が捻れないように、膝を伸ばしたまま天井へ向かってあげます
- 20cmほど上げたら3秒間キープし、ゆっくり下ろします
- 10回を1セットとし、1日3セット行いましょう
上げる足は”上半身と一直線になるように上げる”のがポイントです。
この運動は立った姿勢で「足を開く運動」としても行えます。
スクワット
スクワットは足全体の筋肉を鍛えることができます。
安全に行えるように、壁や椅子を使うようにしてください。
- 椅子や壁に手を置き、足は肩幅に開いて立ちます
- 膝が90°以上曲がらないように、3秒かけてお尻を下ろします
- 3秒かけて足を伸ばし、最初の立った姿勢に戻ります
- 5回を1セットとし、1日3セット行いましょう
”椅子に座るような動き”を意識して行うと、正しいフォームで行えます。
5回が楽な場合は7回・10回と少しずつ回数を増やしていくといいでしょう。
有酸素運動
変形性膝関節症の方は「有酸素運動」も推奨されています。
有酸素運動を行うことで、脂肪燃焼(体重が減る)・筋力強化・体力の向上などの効果が得られます。
具体的な有酸素運動は以下の6つ。
- 散歩
- 水中歩行(プール)
- グランドゴルフ
- ラジオ体操
- 太極拳
- エアロバイク
膝の痛みや体調に合わせて無理のない範囲で行ってください。
痛みや体調に合わせて運動療法を行っていき、元気な体を維持していきましょう。