高齢者がむせる原因とは?|予防策まで解説

「最近、食事中にむせることが多くなった……」こんなお悩みありませんか?

食事中のむせを放っておくと、誤嚥性肺炎を起こしてしまう原因にもなります。

高齢者のかかる肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎と言われており、年齢が高いほど死亡リスクも高くなると報告されています。

この記事では、高齢者がむせる原因と予防する方法を解説しているので、ぜひ参考にしてください。

高齢者がむせる原因

通常、喉頭挙上筋群が喉仏を引き上げて、喉頭蓋という弁が気管をふさぐことで、むせることなく食べ物が食道へ運ばれます。

この一連の動きが正しくできないと、「むせ」が起きてしまいます。

いったいなにが正しい動きを阻害しているのでしょうか。

その原因は、大きく分けて3つです。

  1. 機能的原因
  2. 心理的原因
  3. 構造的原因

以下で1つずつ解説します。

機能的原因

機能的原因とは、脳・神経・筋肉などの異常によって、食物を飲み込む動き(嚥下)に障害が生じることです。

主に脳血管疾患やパーキンソン病、加齢による筋力低下によって、喉頭挙上筋群や喉頭蓋を正しく動かせず、むせに繋がってしまうことが原因です。

「病院に行っても特に脳や神経などの異常はなかった」という方は、高齢による筋力低下の可能性が高いでしょう。

また、加齢に伴って唾液の分泌が減少するため、滑らかな飲み込みができなくなっている可能性もあります。

心理的原因

心理的原因とはうつ病や神経症、心身症、ストレスが原因で嚥下障害と同じような症状が起こることです。

心理的原因では、病院などで検査しても特に異常は見つからないことが特徴です。

また、精神に関わるお薬を服用している場合、薬の副作用として嚥下障害を引き起こしてしまうことがあります。

構造的原因

構造的原因とは、口から食堂までの通り道の間に、舌炎や口内炎、咽頭炎、歯周病などが問題で飲み込めないことです。

高齢者の場合は、歯の欠損や入れ歯の噛み合わせが悪いことも飲み込みが悪い原因となります。

むせに関連する病気

むせに関連する病気は「誤嚥性肺炎」です。

誤嚥性肺炎とは、食道へ行くはずだった水分や食べ物がなんらかの原因で肺に入り込んでしまい、肺に炎症が起こることです。

本来、「むせ」は肺に水分や食べ物が入らないようにするための反応です。

しかし、あまりにもむせが多かったり、嚥下機能低下が進行することで誤嚥するリスクは高まってしまうので注意が必要です。

また、高齢者は誤嚥性肺炎になったとしても、これといった症状が現れないことがあります。

「発熱している」「元気がない」「いつもより食事に時間がかかっている」など、普段と様子が違う場合は早めに医療機関へ受診しましょう。

こんな症状があればむせ予防必須

「時々むせる」という方も、以下のチェックポイントに当てはまる場合は予防が必要です。

〈自覚症状チェックポイント〉

  • お吸い物などを食べるとむせやすい
  • 飲み込んだのに、食べ物が口の中に残っている
  • 食事の後、声がガラガラになっている
  • 発熱を繰り返す
  • 食事や飲水していなくてもむせることがある
  • 食事していると口から食べ物がこぼれる

上記のような症状が見られる方は要注意です。

脳血管疾患などの病気の可能性も否定できませんので、早めに医療機関を受診しましょう。

高齢者がむせないための予防策

むせるときの予防策とは、いったいどのようなものがあるのでしょうか。

以下は、むせを予防する4つの対策です。

  • お口の体操をする
  • むせやすい食べ物は極力避ける
  • 1口で食べる量を知っておく
  • 水分にはとろみをつける

以下で1つずつ紹介します。

お口の体操をする

むせ予防のためには、お口の体操がおすすめです。

この記事では、以下のお口の体操を紹介します。

  • 首のストレッチ
  • 頬の運動
  • 舌の運動
  • パタカラ体操
  • 唾液腺マッサージ

以下で1つずつ紹介するので、ぜひ実践してみてください。

首のストレッチ

首の筋肉が凝り固まっていることで、飲み込む力をうまく発揮できない場合があります。

ストレッチで筋肉の柔軟性を改善させましょう。

※めまいなどが起きやすい場合、この運動は控えましょう

〈首のストレッチ手順〉

  1. 頭を前後にゆっくりたおす✖️5往復
  2. 頭を左右にゆっくりたおす✖️5往復
  3. 頭を大きく回す✖️5周
  4. 反対に回す✖️5周

深呼吸しながら、ゆっくり行うことが重要です。

頬の運動

顎・喉周囲の筋力を鍛える運動です。

〈頬の運動手順〉

  1. 口に空気を溜めて頬を膨らませる✖️5秒
  2. 頬を吸いつける✖️5秒
  3. 1・2を10セット

10セットがきつい方は、ご自身の身体機能に合わせて回数を設定し、実践してみてください。

舌の運動

舌はほとんどが筋肉でできており、食べ物を噛む・飲み込むをサポートしています。

舌の筋力をつけておくと飲み込みやすくなるので、普段から鍛えておきましょう。

〈舌の運動手順〉

  1. 舌を出し、上下に動かす✖️10回ずつ
  2. 口の中で左右交互に頬を押す✖️10回ずつ
  3. 口の中で舌を回す✖️10回ず舌先をできるだけ遠くに押し出すことを意識すると、より鍛えることができます。

パタカラ体操

パタカラ体操とは、「パ」「タ」「カ」「ラ」の4文字を発音し、誤嚥を防ぐために口・舌の筋肉を鍛える体操です。

方法は2つあります。

  1. パ・タ・カ・ラをゆっくり繰り返して発音する✖️10回
  2. 「パパパ・・」「ラララ・・」「タタタ・・」のように連続で発音する✖️各10回

準備体操として食事前に行うのがおすすめです。

唾液腺マッサージ

唾液腺を刺激することで唾液の分泌が多くなり、食べ物を滑らかに食道まで運ぶことができます。

〈唾液腺マッサージの手順〉

  1. 奥歯の後ろあたりを3本指で円を描くようにマッサージする✖️10回
  2. 顎の骨の内側を耳下〜顎下まで親指でマッサージ
  3. 両手の親指をそろえて顎の真下から天井の方へ押し上げる✖️10回

痛くない程度にマッサージするといいでしょう。

むせやすい食べ物を知っておく

むせやすい食べ物がどんなものか理解しておくことも大切です。

〈むせやすい食べ物〉

  • 水やお茶など
  • 味噌汁などのお吸い物
  • くだもの
  • パン・クッキー類
  • のり・ワカメ
  • お団子・あんこ
  • こんにゃく・ところてん
  • ごま・大豆
  • ゆでたまご
  • きなこ・砂糖類

以上のものはむせやすい食べ物といわれています。

しかし、調理方法などを工夫することで、飲み込みやすくなる可能性もあります。

1口で食べる量を減らす

1口で食べる量を減らすことも重要です。

なぜなら、一度にのどへ入る量が多いことがむせに繋がる原因となるからです。

小さいスプーンなどを使うことで1口量も均一化され、むせる可能性を減らすことができます。

水分にはとろみをつける

お茶や味噌汁などの水分にとろみをつけることでむせが改善される可能性があります。

ただし、適切なとろみの濃さを作る必要があります。

とろみが濃すぎると咽頭周囲に残りやすくなり、薄すぎるとむせてしまう可能性があるからです。

また、とろみ付きの水分を嫌う人もいるため、水分摂取不足にならないように注意する必要があります。

とろみを利用する際は、近くの医療機関に相談するといいでしょう。

まとめ

今回は高齢者のむせの原因・予防策について解説しました。

むせを放っておくと、誤嚥性肺炎となるリスクが大きくなり、高齢になるほど死亡リスクも高まります。

誤嚥性肺炎にならないためにも、むせに対する予防策を理解し、実践しましょう。

  • お口の体操をする
  • むせやすい食べ物は極力避ける
  • 1口で食べる量を知っておく
  • 水分にはとろみをつける

特に「お口の体操」は重要です。

できれば毎日体操を行って、むせない体を作りましょう。