「認知症」と「もの忘れ」の違いは?|予防・進行させないために必要なことも解説
「最近、もの忘れが多いけど、これって認知症かな?」こんなお悩みありませんか?
内閣府は「2025年には5人に1人が認知症になる」と予測していることもあり、日頃からもの忘れがあると「認知症なのでは?」と疑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、もの忘れには認知症によるものと加齢によるものがあります。
この記事では「認知症ともの忘れの違い」について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
認知症ともの忘れの違い
もの忘れ、すなわち記憶力の低下は、認知症だけに起こるものではありません。
もの忘れは大きく分けて「認知症によるもの忘れ」「加齢によるもの忘れ」の2つに分けられます。
具体的な2つの違いは以下の通りです。
このように、認知症ともの忘れは大きく異なります。
以下で「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」について、もう少し詳しく解説します。
加齢によるもの忘れ
加齢によるもの忘れは、忘れたことを理解しているのが特徴です。
本来、記憶には「覚える(記銘)・覚えた情報を留める(保持)・思い出す(想起)」の3ステップがありますが、加齢によるもの忘れは思い出す(想起)の機能が衰えることで起こります。
そのため、記憶の一部だけ思い出せないことがほとんどです。
〈加齢によるもの忘れの具体例〉
- 友人と約束した場所は覚えているが、時間が思い出せない
- 自分で財布をしまったのは覚えているが、場所が思い出せない
- 買い物に来たが、なにを買いに来たか思い出せない
加齢によるもの忘れにはこのような症状がありますが、ヒントを与えることで思い出すことができます。
また、判断力や理解力は保たれているため、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
認知症によるもの忘れ
認知症は、病的な脳細胞の減少・脳の萎縮によって起こります。
また、自分が体験したこと自体を忘れてしまうのが特徴です。
〈認知症によるもの忘れの具体例〉
- 約束したこと自体を忘れる
- 食事や入浴したこと自体を忘れる
- 今の時間や日付、場所がわからなくなる
- 忘れていることがわからないため、自覚がない
- 自覚がないため、他人を疑うことがある
認知症が原因のもの忘れは、記憶の3ステップである覚える(記銘)・覚えた情報を留める(保持)・思い出す(想起)の中で、覚える(記銘)ことができない状態です。
また、性格が変わることもあり、「物がなくなると他人を疑う」「些細なことで怒る」など、他人を巻き込むためトラブルとなる可能性もあります。
トラブルなどによって日常生活に支障をきたしてしまう場合があるので、「認知症かもしれない」と思ったら早めに専門医やかかりつけ医へ相談しましょう。
認知症によるもの忘れ|原因と種類
「認知症」といっても複数の種類があります。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
- アルコール型認知症
- 混合型認知症
など
しかし、認知症の約7割が「アルツハイマー型認知症」、約2割が「脳血管性認知症」です。
ここでは、認知症の約9割を占める「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」の2つについて紹介します。
アルツハイマー型認知症
認知症の中でも約7割は「アルツハイマー型認知症」です。
そのため、「認知症=アルツハイマー型認知症」として説明されることがほとんどです。
アルツハイマー型認知症となる原因は、アミロイドβ・リン酸化タウというたんぱく質が脳の神経細胞に蓄積することで発症すると言われています。
アミロイドβやリン酸化タウが蓄積する原因については、加齢や遺伝が影響していると言われていますが、明確なことは分かっていません。
また、最近では「高血圧や糖尿病の方はアルツハイマー型認知症になりやすい」と言われているため、予防のためにも生活習慣の見直し・改善が重要です。
脳血管性認知症
認知症の中でも約2割は「脳血管性認知症」です。
アルツハイマー型認知症とは違い、記憶などがまだらに保たれているのが特徴です。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因で発症します。
また、脳卒中の原因は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病であるため、予防のためにも生活習慣を見直し、早めに改善しておくことが重要です。
認知症やもの忘れの予防・進行させないために必要なこと
認知症や加齢によるもの忘れを進行させないためには、「生活習慣の見直し・改善」が必要です。
以下を生活に取り入れることで、認知症やもの忘れを予防・進行抑制になる可能性があります。
- 運動する
- バランスの良い食事を摂る
- 1日7時間以上の睡眠をとる
- 人とコミュニケーションをとる
以下で、1つずつ解説していきます。
運動する
認知症やもの忘れを予防・進行抑制するためには、ウォーキングなどの運動を生活に取り入れましょう。
なぜなら、運動をすることで全身の血流改善や筋力強化、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の予防ができるからです。
また、運動によって脳に血液・酸素が行き渡るため、記憶力・判断力・集中力の改善につながります。
厚生労働省は、1日1万歩のウォーキングを推奨していますが、いきなり1万歩からはじめるのではなく、1日5分など無理のない範囲ではじめてみましょう。
また、持病などをお持ちの方はかかりつけ医へ「どのくらいの運動であれば可能か」を相談してからウォーキングに取り組みましょう。
バランスの良い食事を摂る
バランスの良い食事を摂ることも認知症やもの忘れの予防・進行抑制につながります。
生活習慣病には、高血圧・糖尿病・脂質異常症などがあり、塩分や糖分を控えた食事を心がけることが重要です。
また、さばやいわし、さんまなどに含まれる「EPA・DHA」、緑黄色野菜や果物、ナッツ類に含まれる「ビタミン」、緑茶などに含まれる「ポリフェノール」などの栄養要素は、認知症やもの忘れに効果があると言われています。
塩分や糖分の摂取はなるべく控え、栄養が偏らないようにバランスのとれた食事を心がけましょう。
1日7時間以上の睡眠をとる
認知症やもの忘れを予防・進行抑制するためには、しっかり睡眠をとる必要があります。
なぜなら、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβは、ノンレム睡眠(睡眠が深い状態)の時に排出されるからです。
睡眠不足や睡眠が浅いことが続くとアミロイドβが脳細胞に蓄積するため、アルツハイマー型認知症の発症の原因となってしまいます。
「寝る前にテレビなど、脳の刺激になるものは見ない」「毎朝、必ず朝日を浴びる」などを心がけ、深い睡眠をとることで認知症やもの忘れを予防できます。
人とコミュニケーションをとる
人とコミュニケーションをとることで、認知症やもの忘れの予防になります。
なぜなら、人と会話をすると脳のさまざまな機能を使うからです。
例えば、会話は以下の脳の機能を使います。
- 話を聞く
- 話の内容を記憶する
- 話の内容から意見を考える
- 話す内容・言葉選びをする
- 相手の反応をみる
このように、複数の脳の機能を使うため、人とコミュニケーションをとるだけでも脳が活性化されます。
そのため、家族や友人、地域のコミュニティへの参加などでコミュニケーションをとる機会を増やしましょう。
まとめ
この記事では、認知症ともの忘れの違いについて解説しました。
2つの違いは「体験したこと自体を忘れてしまう(認知症)」と「体験したことの一部が思い出せない(もの忘れ)」です。
認知症の場合は、性格の変化などから日常生活への支障やトラブルの原因となる可能性があるので注意が必要です。
また、認知症は早期発見・早期治療が重要であるため、「認知症かも」と感じたら早めに専門医やかかりつけ医へ相談しましょう。