高齢者の浮腫(むくみ)の原因は?改善・予防する方法まで解説
「最近、足がむくんでいる」「寝てもむくみが取れていない」こんなお悩みはありませんか?
浮腫(むくみ)は、心臓や肝臓などの「病気が原因」であるものと、座っている時間が長い・塩分の摂りすぎなどの「病気以外が原因」であるものがあります。
また、浮腫の原因が病気でなくても慢性化すると命に関わる危険があるため、早めの対処が必要です。
この記事では、「浮腫が起こる原因」と「浮腫を改善・予防する方法」について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
高齢者に起こる浮腫(むくみ)とは?
浮腫とは、「体の不要な水分が皮下組織に溜まること」をいいます。
本来、血液は心臓によって全身へ送られていますが、立っている・座っている姿勢が長く続くと、心臓から遠い足などにある血液は重力によって心臓へ十分に送り返すことができません。
そのため、浮腫にならないために「ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)」をポンプ代わりとして使い、足にある血液を心臓へ送り返しています。
しかし、何らかの原因でふくらはぎの筋肉が機能しなくなることで、浮腫が起こりやすくなります。
浮腫を調べる方法
浮腫を調べる方法は、「すねを親指で数秒間押す」だけです。
押した後に親指の痕が残っている場合は、浮腫が起きている状態です。
高齢者の浮腫の原因
高齢者が浮腫を起こす原因は、大きく分けて2つあります。
- 病気によって起こる浮腫
- 病気以外で起こる浮腫
以下で1つずつ解説します。
病気によって起こる浮腫
心臓や肝臓などの病気が原因で浮腫が起こります。
また、疾患によっては浮腫が片方の足のみに現れることもあります。
それぞれの原因となる病気は以下の通りです。
〈両足に浮腫がでる病気〉
- 心不全
- 腎不全
- ネフローゼ症候群
- 肝硬変
- 甲状腺機能低下症
- 低栄養(栄養障害浮腫)
- アレルギー性浮腫
〈片足に浮腫がでる病気〉
- リンパ浮腫
- 下肢静脈瘤
- 深部静脈血栓(エコノミークラス症候群)
- 麻痺性浮腫(片麻痺など)
浮腫の原因が病気である場合は、足以外にも顔や手の浮腫や息切れ、疲れやすいといった症状を伴うこともあります。
また、足の浮腫以外の症状がある方は、すぐにかかりつけ医へ受診しましょう。
薬の副作用で起こる浮腫
高齢者の場合、数種類の薬を飲んでいる方も多いのではないでしょうか。
その場合、薬が原因で浮腫となる場合があります。
特に降圧剤(血圧を下げる薬)や鎮静剤、睡眠導入剤などの副作用によって、浮腫が起こる可能性があります。
しかし、浮腫が起きていても自己判断で薬の中断はせず、かかりつけ医へ相談しましょう。
病気以外で起こる浮腫
浮腫は病気や薬以外にも原因があります。
それは、「生活習慣」です。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間座っている・立っている
- 塩分を摂りすぎている
- 加齢による筋力低下
- 身体の冷え
- ストレスを溜めている
- 過労
このような生活をしている方は、浮腫が起きやすくなります。
【高齢者】浮腫を放置するのは危険
「足の浮腫くらい大丈夫だろう」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、浮腫の放置は非常に危険です。
なぜなら、慢性的に浮腫が起こることで、病気を引き起こす可能性があるからです。
例えば、深部静脈瘤や深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などを起こしてしまう可能性があります。
特に深部静脈血栓症は、同じ姿勢などが長時間続くことで血栓(血のかたまり)ができます。
血栓ができることで血管が塞って血液が滞ったり、血栓が肺の血管に詰まって呼吸困難が起きたりする可能性があるため危険です。
最悪の場合、死亡してしまうリスクもあるため、浮腫が起きている場合は早めに対処しましょう。
また、病気から浮腫が起きている可能性もあるため、浮腫がある場合はかかりつけ医へ相談するといいでしょう。
高齢者の浮腫を改善・予防する方法
高齢者の浮腫を改善・予防する方法は5つあります。
- 同じ姿勢を長時間続けない
- 運動する
- マッサージする
- 塩分を摂りすぎない
- 弾性ストッキングを履く
以下で1つずつ解説します。
※持病などがある場合は、かかりつけ医と相談してから行うようにしましょう。
同じ姿勢を長時間続けない
立つ・座るなど同じ姿勢が長時間続くことが浮腫の原因となります。
なぜなら、ふくらはぎの筋肉を動かさないからです。
例えば、1日のほとんどの時間を座って過ごしている場合は、ふくらはぎの筋肉をほとんど使わないため浮腫を起こしやすくなります。
30分に1回立ち上がって少し歩くだけでもふくらはぎの筋肉が刺激され、浮腫の予防につながる可能性があります。
また、座っている時でも「かかと上げ運動」を行うことで浮腫の予防が可能です。
同じ姿勢を長時間続けないように、意識しておきましょう。
運動する
浮腫を改善するためには、運動を取り入れましょう。
その理由は、運動してふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を鍛えることで、浮腫が改善される可能性があるからです。
ふくらはぎの筋肉がポンプとなり、足にある血液を心臓へ送り出してくれます。
そのため、足を使う運動がおすすめです。
具体的な運動方法は「ウォーキング」と「かかと上げ運動」の2つです。
以下で、1つずつ紹介します。
ウォーキングなど
運動の中でも特に「ウォーキング」はおすすめです。
なぜなら、筋力強化+有酸素運動の2つの効果が期待できるからです。
ウォーキングは浮腫以外の身体の不調にも効果があるため、毎日取り組むことをおすすめします。
厚生労働省は「身体活動と死亡率などの関連をみた疫学的研究の結果から『1日1万歩』の歩数が理想である」と発表しています。※1
しかし、最初から無理するのではなく、まずは5分からでもウォーキングを始めてみましょう。
※心臓などに持病をお持ちの方はかかりつけ医へ「どのくらいの運動であれば行っても良いか」を相談してからウォーキングに取り組みましょう。
かかと上げ運動
浮腫の改善・予防には、かかと上げ運動がおすすめです。
その理由は、かかとを上げる筋肉はふくらはぎ(下腿三頭筋)だからです。
立ち・座り姿勢どちらでもできるので、その場の環境に応じて行えます。
方法は以下の通りです。
- 椅子に座る、または壁や机などを持って立つ
- 両足のかかとを同時に上げる
- 両足のかかとをゆっくり降ろす
- 10〜20回繰り返す×3セット
まずは、1日10回から状態に合わせて回数を設定しましょう。
マッサージする
マッサージをすることで浮腫の改善・予防につながります。
浮腫に対するマッサージは、「リンパドレナージ」と言われており、揉みほぐすのではなく、ゆっくりと軽くさする程度のチカラ加減で行うのが特徴です。
実際に日本リンパ浮腫学会で推奨されている方法を紹介します。
〈足の浮腫に対するセルフリンパドレナージ〉※2
- 肩の後回し×10回
- 鎖骨の上にあるくぼみに手を当て、円を描くように回す×10回
- 腹部のドレナージ
- 全体を時計回りに優しくさする×2~3回
- 左右の脇腹に手を当て、おへそに向かってさする×各10回
- 腹式呼吸をする×5回
- 脇の下に手を当て、円を描くように回す×20回
- おしりの横側から脇の下まで軽くさする×10回
- 下腹部のドレナージ
- 下腹部から脇の下に向かって軽くさする×左右へ10回ずつ
- おしりのドレナージ
- おしりから脇の下に向かって軽くさする×10回
- 足のドレナージ×各10回
- 太ももの外側を膝からおしりの横側まで、上に向かってさする
- 太ももの前面を膝の内側からおしりの外側に向かってさする
- 太ももの後面を膝裏からおしりの外側に向かってさする
- 膝の前面・内側・外側を上に向かってさする
- 膝の真裏を上に向かってさする
- すねをなぞるように足首から膝まで、上に向かってさする
- ふくらはぎに沿って、かかとから膝裏まで上に向かってさする
- 内・外くるぶしの周囲を上に向かってさする
- 足先を持って、足首をまわす
- 足の甲を上に向かって、次に足指を上に向かって
- 足指までのドレナージしてきた順を逆に「4」まで、戻りながらマッサージする
※2:一般社団法人 日本リンパ浮腫学会「リンパドレナージ(マッサージ効果)」
塩分を摂りすぎない
塩分の多い食事は浮腫の原因となります。
高齢者になると味覚が感じにくくなるため、「気づいたら塩分を多く摂っていた」なんてこともあるので注意が必要です。
厚生労働省は塩分摂取量の目標値を「6グラム / 日」としています。※3
また、高血圧となる可能性も高くなることから、意識して塩分摂取量を調整するようにしましょう。
弾性ストッキング(着圧ソックス)を履く
弾性ストッキング(着圧ソックス)を履くことも浮腫の改善・予防になります。
なぜなら、弾性ストッキングによって足を圧迫することで、足の血流を促進させる効果があるからです。
ただし、市販の弾性ストッキングは人によって効果が得られない場合もあるため、医療用の弾性ストッキングがおすすめです。
また、弾性ストッキングを着用する場合は、かかりつけ医へ相談するといいでしょう。
まとめ
この記事では、高齢者に起こる浮腫の原因について解説しました。
高齢者に起こる浮腫は、「病気による浮腫」と「病気以外による浮腫」があります。
病気による浮腫の場合、心臓や肝臓などが原因の可能性もあるため、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
また、病気でなくても浮腫が慢性化している場合は、深部静脈血栓症などの病気を引き起こしてしまう可能性があるため非常に危険です。
運動や食事などの生活習慣を見直し、早めの予防・改善を行いましょう。