パーキンソン病の運動症状・非運動症状を詳しく解説
「パーキンソン病ってどんな症状がでるの?」こんなお悩みを解決できる記事です。
パーキンソン病は、ふるえやこわばりなどが見られる「運動症状」、睡眠障害や自律神経障害などが見られる「非運動症状」とさまざまな症状が現れる病気です。
この記事では、パーキンソン病における運動症状と非運動症状について、詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
パーキンソン病とは
パーキンソン病とは、「体を思い通りに動かせなくなる病気」です。
パーキンソン病の原因は、「体を思い通りに動かすために必要な神経物質『ドパミン』の減少」とされていますが、ドパミンが減少する理由については未だに解明されていません。
病状がゆっくり進行していく進行性の病気ですが、日常生活に支障をきたす病状が多く、厚生労働省が定める難病の一種に指定されています。
治療には、治療薬・手術・リハビリテーションなどが用いられ、早期から治療開始することが推奨されています。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状は、「運動症状」「非運動症状」の2つが現れます。
運動症状である振戦(ふるえ)や筋強剛(こわばり)、無動、姿勢保持障害は、パーキンソン病4大症状と言われており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本内科学会によると「嗅覚障害や便秘などの非運動症状はパーキンソン病を発症する20年前から発現する場合もある※1」と発表されているため、非運動症状についても理解しておきましょう。
以下で、運動症状と非運動症状について紹介するので、ぜひ参考にしてください。
※1引用:日本内科学会:「Parkinson病の新しい理解-非運動症状を含めて-」
運動症状
パーキンソン病で発症する運動症状は、以下のとおりです。
- 振戦(しんせん)
- 無動・動作緩慢(どうさかんまん)
- 筋強剛(筋固縮)
- 姿勢保持障害
以下で1つずつ解説していきます。
振戦(しんせん)
振戦とは、「手足がふるえること」です。
パーキンソン病の振戦(ふるえ)は、座る・寝るなど安静にした姿勢で手足のふるえが強くなり、動くとふるえが減少するのが特徴です。
手の指先は、丸薬を丸めるような動きとなり、1秒間に4〜6回規則的にふるえます。
また、日本神経学会によると、「100名のパーキンソン病患者のうち振戦が初期症状として現れた者は69%だった※2」と報告されています。
※2:参考:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」
無動・動作緩慢
無動・動作緩慢とは、「動きが遅くなる・動き自体が減る」ことをいいます。
最初は、「字が書きにくい」「箸で食べにくい」など細かい動きから始まり、歩きや寝返り、衣服の着脱などへと徐々に大きい動きに症状が現れます。
また、声量の低下や発語が不明瞭になる、表情が乏しくなるなどの症状も現れ、もっとも日常生活に影響がでる症状です。
筋強剛(筋固縮)
筋強剛(筋固縮)とは、「力を抜いたリラックスした姿勢でも、他人が関節を動かすと筋肉がこわばる状態」のことをいいます。
本人に自覚症状はありませんが、関節の動きが少なくなるため、さまざまな動作でスムーズさがありません。
また、他人が動かすと常に一定の抵抗感があったり(鉛管様現象)、カクカクと引っかかるような抵抗(歯車様現象)を認めるのが特徴です。
姿勢保持障害
姿勢保持障害とは、「体のバランス能力が低下し、転びやすくなる状態」のことです。
体を押されても、足が出るなどの反応がなく、バランスの保持がむずかしくなります。
この姿勢保持障害は、パーキンソン病の初期症状として現れることはほとんどなく、無動や筋強剛などよりも遅く出現することが多いと言われています。
非運動症状
パーキンソン病で発症する非運動症状は、以下のとおりです。
- 睡眠障害
- 認知・精神障害
- 自律神経障害
- 感覚障害・その他症状
以下で1つずつ紹介していきます。
睡眠障害
パーキンソン病で見られる睡眠障害は、以下のとおりです。
- 夜間不眠
- 日中過眠
- 突発的睡眠
- レム睡眠行動障害
- 下肢(足)静止不能症候群
一般的には、夜寝付けない・寝すぎる・急に眠くなるなどの症状が現れます。
また、深い眠りに入る直前で夢の内容に合わせた寝言や手足の動きが見られる「レム睡眠行動障害」や、寝る前の足の不快感や堪えがたい運動欲求によって足を動かしてしまう「下肢(足)静止不能症候群」などの症状が見られます。
認知・精神障害
パーキンソン病で見られる認知・精神障害は、以下のとおりです。
- 気分障害(意欲の低下、快感の消失など)
- 幻覚・妄想
- 行動障害(買いあさり、病的賭博など)
- 認知機能障害(記憶障害、注意障害など)
パーキンソン病を発症した約40%の方が”うつ症状”を発症します。
また、パーキンソン病の発症前・発症初期からみられやすいのも特徴です。
その他にも、予測を立てた行動ができなくなる「遂行機能障害」や注意が散漫となる「注意障害」、物体の認識がむずかしくなる「視空間認知障害」、記憶障害などが見られます。
自律神経障害
パーキンソン病で見られる自律神経障害は、以下のとおりです。
- 起立性低血圧
- 排尿障害
- 消化管運動障害
- 性機能障害
- 発汗障害
- 流涎(よだれが垂れる)
血圧の調整がむずかしくなり、急に立ち上がると立ちくらみやめまいが起こる「起立性低血圧」が見られます。
また、頻尿・尿失禁などの「排尿障害」や異常に汗をかく「発汗障害」などの自律神経症状が現れます。
感覚障害・その他症状
パーキンソン病で見られる感覚障害・その他症状は、以下のとおりです。
- 嗅覚障害
- 痛み
- 体重減少
- 疲労
パーキンソン病では、約90%の割合で嗅覚障害が起こります。
嗅覚障害はパーキンソン病の発症前に出現しますが、嗅覚障害を自覚している人は約40%程度と症状として気づかないことが多いと言われています。
パーキンソン病の診断と非運動症状
出典:日本内科学会:「Parkinson病の新しい理解-非運動症状を含めて-」
日本内科学会は、「個人差はあるが、パーキンソン病発症前に便秘やうつ、嗅覚障害といった症状が現れる」と報告しています。
そこで、「発症前に発見できるのでは?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
日本神経学会は、「レム睡眠行動障害・嗅覚低下・便秘はパーキンソン病の診断に有用か」という研究を行いました。
3つの研究結果は以下の通りです。
- レム睡眠行動障害:パーキンソン病の運動症状が1つでも発現している場合にレム睡眠行動障害が見られた場合、パーキンソン病である可能性が高い
- ただし、パーキンソン病でレム睡眠行動障害が発症する可能性は、30〜50%と低い
- 嗅覚障害:パーキンソン病診断前4年間においては、パーキンソン病との有意な繋がりがあった
- ただし、嗅覚障害の自覚があるものは約40%
- 便秘:パーキンソン病患者の多くで認めるが、一般人口の頻度も高いため、早期発見に繋げにくい
非運動症状は、本人・家族でも気づかないことも多くあるため、しっかり観察しておく必要があります。
もし、心当たりのある症状があれば、一度かかりつけ医に相談しましょう。
まとめ
この記事では、パーキンソン病の運動症状と非運動症状について紹介しました。
パーキンソン病は、進行性で厚生労働省より難病指定されている病気です。
しかし、治療薬などの進歩によって、早期から治療をはじめれば進行を遅らせることができる病気となっています。
もし、心当たりのある症状がある場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
※この記事は、厚生労働省・日本神経学会・日本内科学会などの情報を元に書いています。