認知症に使用される代表的な薬とは?効果や注意点について徹底解説
「認知症の薬には、どのような効果があるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。厚生労働省による認知症高齢者数の集計によると、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人は認知症になるといわれています。[1]
認知症の高齢者が増えるにつれて、薬剤を使用した治療の需要も増えてくることでしょう。そのために、まずは認知症薬の効果について理解しておくことが必要です。現代においては認知症の研究も進んでおり、薬によって症状の進行を抑えられる可能性があります。
本記事では、認知症に使用される代表的な薬について解説します。また、認知症薬の効果や使用する際の注意点についても紹介するので、ぜひ記事を参考にしてください。
Contents
認知症に使用される薬の効果とは?
認知症薬は、認知症による症状の進行を遅らせる効果が期待できます。近年では認知症の研究も進んできてはいますが、減少した脳の細胞を改善させる治療薬は開発されていないため、病気を根本的に治療していくことができません。
そのため、認知症になってしまうと、薬によって症状の進行をある程度抑えられますが、病状は少しずつ悪化します。しかし、早期の段階から薬を内服できると、認知症による症状の進行を遅らせられるため、健康的に過ごせる期間を延ばすことができる可能性もあります。
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認知症に使用される代表的な薬
認知症に使用される薬は、症状の進行を遅らせる薬とその他の薬で分けられます。
認知症の進行を遅らせる薬
認知症の進行を遅らせる薬は、以下4つが挙げられます。
- アリセプト
- レミニール
- イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ
- メマリー
それぞれの認知症薬について解説します。
アリセプト
アリセプトは、認知症の中でもアルツハイマー型認知症に効果があり、症状の進行を遅らせることが期待できる治療薬です。アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の減少を抑えることで、軽度から高度のアルツハイマー型認知症に効果が期待できます。
アリセプトは、1日に1回内服するだけで効果が期待できるため、何回にも分ける必要がなく飲み忘れも防止できるのがメリットです。また、現在の日本においてアリセプトは、レビー小体型認知症の治療薬として認められている唯一の認知症薬となります。
レミニール
レミニールは、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に効果が期待できる薬です。効果の仕組みはアリセプトと同じであり、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の減少を抑えることで、症状の進行を遅らせます。
人や場所、時間などが分からなくなってしまう見当識障害や記憶障害の症状を抑えられますが、継続して内服を続けることが必要です。また、アリセプトと比較すると1回の効果時間が短いため、レミニールは複数回に分けて内服する必要があります。
イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ
イクセロンパッチとリバスタッチパッチは、神経伝達物質の減少を抑えることで、認知症による症状の進行を阻害する効果が期待できます。軽度から中等度までのアルツハイマー型認知症に使用されることが多いです。
また、名称からも分かる通り、イクセロンパッチとリバスタッチパッチは、内服する薬ではなく貼り薬です。貼り薬による認知症薬を使用する際は、4.5㎎から開始し、徐々に9mg・13.5㎎・18mgへと増量します。また、継続的に貼り続ける必要があるため、肌が弱い方はかゆみや発疹がでる可能性があるので、注意が必要です。
メマリー
メマリーは前述で紹介した認知症薬とは異なり、グルタミン酸と呼ばれる神経伝達物質の働きを抑えることで、症状の進行を遅らせます。症状が中等度以上の認知症患者に使用されることが多い薬です。
グルタミン酸は、神経細胞を興奮させる働きがあります。そのため、メマリーは物を盗られる妄想や興奮して暴力的になってしまうタイプの認知症の方に処方されることが多いです。しかし、精神的な症状を落ち着けかせる効果がある薬のため、用量に注意しなくてはいけません。
認知症薬以外で使用される薬
認知症に使用される薬は、直接的な作用が期待できる認知症薬だけでなく、以下の3つも挙げられます。
- 睡眠導入剤
- 漢方薬
- 抗不安薬や抗精神病薬
それぞれの薬について解説します。
睡眠導入剤
認知症の治療において、睡眠導入剤は使用される場面が多い薬のひとつとして挙げられます。睡眠導入剤は、深夜の徘徊や不眠障害などの症状がみられる方に使用されることが多いです。
適切に睡眠導入剤を使用することで、認知症の方が夜に活動してしまうのを防ぎ、質の高い睡眠が期待できます。徘徊行動や不眠障害により、認知症をさらに悪化させるリスクを防ぐためにも、症状がみられる場合は睡眠導入剤の使用が必要です。
漢方薬
体調不良の際に使用される漢方薬ですが、認知症の治療においても活用されることが多いです。認知症の治療において漢方薬は、日常生活動作を保ちつつ不安な症状のみを抑える働きが期待できます。漢方薬の中でもよく治療に使われるものは、以下のとおりです。
- 抑肝散
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
漢方薬は種類が豊富なため、認知症の症状に合わせて選べることも大きなメリットです。
抗不安薬や抗精神病薬
抗不安薬は、認知症による不安症状の軽減を目的として使用されます。認知症は、不安感や焦燥感、うつ状態などの周辺症状が現れるのが特徴の病気です。抗不安薬の使用により、不安で落ち着かない状態やイライラした状態の改善効果が期待できます。
また、暴言や暴力による興奮症状がみられる認知症の方には、抗精神病薬が使用されることが多いです。その他、抗不安薬や抗精神病薬以外にも認知症の症状に合わせて、抗てんかん薬や抗うつ薬なども使用されます。
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認知症薬にみられる副作用
認知症薬の種類によっても副作用は異なりますが、主にみられる症状は以下3つです。
- 消化器症状
- 不整脈
- めまいや眠気
それぞれの副作用について解説します。
消化器症状
認知症薬による消化器症状では、以下の症状がみられます。
- 吐き気や嘔吐
- 下痢
- 便秘
- 食欲不振
消化器症状は、認知症薬による副作用の中でも現れやすい副作用のひとつです。特に認知症薬を飲み始める際には、体が薬に対応していないため、吐き気や嘔吐が出現する可能性があります。
また、食欲不振の出現は内服して時間が経ってからであり、開始した直後にはみられません。その他、認知症薬以外に抗不安薬や抗精神病薬を使用する方は、便秘が出現する可能性も高くなります。
不整脈
認知症薬の中には、重篤な副作用として不整脈を起こすものもあります。そのため、既往の疾患に心臓病がある方は注意が必要です。しかし、他の副作用症状と比較すると、不整脈の症状が起こるのは稀です。
めまいや眠気
めまいや眠気は、認知症薬によって出現する副作用のひとつとして挙げられます。認知症薬を内服する方は、高齢な方がほとんどのため、めまいや眠気が出現した場合は要注意です。
めまいや眠気があると、足元がふらついてしまうため、転倒や転落するリスクが高まります。認知症薬を内服していて、めまいや眠気の症状が強く出る場合には、薬の量を減らせないか医師に相談をしましょう。
認知症薬で効果を得るための注意点
認知症薬を使用する際の注意点は、以下の3つです。
- 薬を飲み続ける必要がある
- 認知症を改善させる薬ではない
- 既往の疾患がある場合は使用できない可能性もある
それぞれの注意点について解説します。
薬を飲み続ける必要がある
認知症薬による効果を得るためには、薬を飲み続ける必要があります。すべての認知症薬は、1回の使用だけでは効果を得ることができないため、薬を内服または貼付が必要です。
認知症薬の内服を突然中止してしまうと、薬を使用する前の状態に戻ってしまう可能性もあります。そのため、副作用が出現した場合でも、自己判断で薬を中止してしまうのは避け、必ずかかりつけの医師に相談をするようにしましょう。
認知症を根本的に治す薬ではない
前述でもお伝えしたとおり、認知症薬を使用する際には、病気を根本的に治す薬ではないと理解しておきましょう。認知症薬を内服すれば改善すると思い込んでしまっていると、いざ内服した際に「効果がない!」と思われてしまう可能性もあります。
また、改善した効果が得られないという理由で、自己判断で薬をやめてしまうかもしれません。認知症薬の効果について不安や疑問点があれば、そのままにせず医師へ相談するようにしましょう。
既往の疾患がある場合は使用できない可能性もある
既往の疾患によっては、特定の認知症薬を使用できない可能性もあるので注意しましょう。認知症薬の副作用が既往疾患の症状を悪化させる恐れがあります。
特に認知症薬であるメマリーの重篤な副作用には、不整脈が挙げられており、心臓病の既往がある方は注意が必要です。
まとめ
現在の認知症治療では、認知症を根本的に治療するのは困難であり、症状の進行を抑えることしかできません。しかし、早期から認知症薬を使用できることで、健康でいられる期間を延ばすことも可能です。
日本でも使用されている代表的な認知症薬は、以下の4つです。
- アリセプト
- レミニール
- イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ
- メマリー
また、認知症薬以外にも睡眠導入剤や抗不安薬、漢方などを組み合わせて治療を行うことで、症状を抑えた生活ができる可能性もあります。もし、認知症薬で不安や疑問点があれば、自己判断で解決せずに、かかりつけ医師へ必ず相談するようにしましょう。
わたしたちメドアグリケアは、認知症を含めたさまざまな疾患への対応が可能であり、全国各地に診療所を展開しています。認知症薬の効果について不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。