認知症の診断を受けられるのは何科?診療科の特徴や本人が受診を嫌がったときの対処法について解説

「家族が認知症かもしれないけど、どこに行けば診断を受けられるの?」

上記のように、ご家族の認知症が疑われる際に、どの診療科に受診をすれば診断をしてくれるのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、認知症の診断を受けられる診療科について解説します。それぞれの診療科を紹介すると同時に、ご家族が受診を嫌がった場合の対処法についてもお伝えします。

ご家族の認知症が疑われる場合、どの診療科に連れていけば良いのか悩んでいる方は、ぜひ記事を参考にしてください。 

そもそも認知症ってどのような病気? 

そもそも認知症ってどのような病気? 

認知症とは、思考や記憶、見当識などの脳の機能が、何らかの原因で障害が起きることで、日常生活に支障をきたす病気です。2025年には、65歳以上の5.4人に1人が認知症患者と予測されているため、現代の日本においては決して珍しい病気ではありません。[1

認知症になってしまうと、簡単なことを覚えられなくなったり、掃除や金銭管理などができなくなったりと、日常生活を一人で送ることができなくなります。しかし、認知症に関する研究も進んでおり、早期に発見、診断できれば、治療によって進行を遅らせることも期待できます。

認知症の診断を受けるには何科に行けばいい? 

認知症の診断を受けるには何科に行けばいい?

認知症を診断できる診療科はさまざまであり、以下が挙げられます。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 脳神経内科
  • 老年内科 
  • もの忘れ外来
  • 認知症専門医が在籍する機関

それぞれの特徴について解説するので、ぜひ参考にしてください。

精神科 

精神科は、認知症を含む心理的な症状を有する疾患に対応が可能な診療科です。認知症を専門に診ている精神科も多いため、どこに受診するか迷われている方におすすめです。また、精神科は心理的ケアが必要な患者さんが多く受診されているため、認知症患者さんに寄り添った診察を受けられるメリットがあります。

心療内科 

昨今の心療内科では、認知症の診断を受けることができる場所も増えてきています。本来、心療内科は心身的ストレスによる疾患を診察する診療科です。そのため、心療内科で診断を受けたい場合は、事前に認知症の検査に対応をしているのか、確認しておくとよいでしょう。個人クリニックの場合では、精神科医や精神保健指定医など専門知識を有する医師が開業している場合も多くみられます。  

脳神経内科

脳神経内科は、脳や神経、脊髄または筋肉などに関連した疾患の診察を受けられる診療科です。前述でもお伝えしたとおり、認知症は脳の機能低下がみられる疾患のため、脳神経内科でも対応できます。脳に関する専門的な検査や診察を受けられるため、認知症が疑われる場合にも、おすすめできる診療科です。

老年内化

老年内科は、高齢者に関連した総合的な医療を受けられる診療科であり、認知症による診断も可能です。認知症以外にも、高齢者によくみられる心身の不調や記憶または判断力の低下についても診てくれます。そのため、認知症なのか判断が付かない場合は、まずは老年内科に診てもらうのがおすすめです。

もの忘れ外来

もの忘れ外来は、診療科名のとおり「ここ最近で物忘れが激しくなった」方を対象とした専門外来です。専門的な知識を持つ医師が、認知症による物忘れなのか、または別の疾患による物忘れなのかを診断してくれます。認知症の診断に有効な心理学検査や脳画像検査に対応しているところが多いため、もの忘れ外来が近くにある場合は、優先的に検討をしてみましょう。

認知症専門医のいる機関

上記に挙げた診療科から探すのではなく、認知症専門医が在籍する機関から選択するのも、ひとつの方法です。認知症専門医とは、名称のとおり認知症の診察を専門としている医師であり、日本認知症学会のホームページから探せます。日本認知症学会が、認知症診療において充分な経験と知識を有した医師にのみ認定しているため、専門的な治療を受けたい方におすすめです。

認知症の診断を受けるための手順 

認知症の診断を受けるための手順 

認知症の診断を受けるためには、以下の手順が必要です。

  • 医師の問診を受ける
  • 認知症を診断するための検査を受ける

それぞれの手順について解説します。

医師の問診を受ける 

他の疾患と同様に、認知症を診断する際にも医師の問診を受ける必要があります。認知症の症状によって問診の受け答えが本人でできない場合は、同伴した家族の協力が必要です。

認知症を診断するための問診では、以下のようなポイントを聞かれるので、ある程度は家族の方が把握しておきましょう。

  • 出現している症状
  • 症状が出始めたタイミング
  • これまでに患った疾患
  • 症状がみられるきっかけとなった出来事や疾患の有無
  • 内服中の薬剤

また、認知症を疑われている患者さんに対しては簡単な記憶力チェックのため、「今日食べた朝食」や「どのようにして病院にたどり着いたのか」を確認する場合があります。しかし、認知症の診断に対して本人が前向きに考えていない場合、質問に答えてくれない可能性もあるので、その場合は家族がフォローをしてあげましょう。

認知症を診断するための検査を受ける

認知症を診断するための検査では、「一般的な身体検査」と「認知症検査」の2種類を受ける必要があります。一般的な身体検査で受ける項目は、以下のとおりです。

  • 血液・尿検査
  • 心電図検査
  • レントゲン検査
  • 感染症検査

一般的な身体検査は、認知症以外の疾患を考慮するために行います。他の疾患も関わっている場合は治療薬の処方も変わってくるので、重要なポイントと言えるでしょう。

認知症検査では、神経心理学検査と脳画像検査の2つがあります。検査を受ける病院またはクリニックによっても異なりますが、それぞれの検査項目は以下のとおりです。

神経心理学検査

  • 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDSーR)
  • ミニメンタルステート検査(MMSE)
  • 時計描画テスト

脳画像検査

  • CT
  • MRI
  • SPECT
  • VSRAD

細かく検査について把握する必要はありませんが、どのような検査を受けるのか、簡単に把握をしておきましょう。

認知症の診断を受けた後の治療について

認知症の診断を受けた後の治療について

認知症は、根本的な原因を改善できる場合もあれば、できない場合もあります。水頭症や硬膜下血腫などの疾患によって、認知症の症状が引き起こされている場合には、原因を取り除くことで状態の改善が見込めるでしょう。 

しかし、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの脳の異常による認知症は、現代の医療では根本的な治療ができません。そのため、薬物療法やリハビリを取り入れ、症状の進行を遅らせながら、疾患と向き合っていく必要があります。

<関連ページ>認知症に使用される代表的な薬とは?効果や注意点について徹底解説

本人が認知症を診断するための受診を嫌がったときの対処法

本人が認知症を診断するための受診を嫌がったときの対処法

本人が認知症の診断に前向きではない場合、受診を嫌がるケースも少なくないです。本人が受診を嫌がってしまった時は、以下の対処方法を検討してみましょう。

  • 怒ったり、否定したりしてプライドを傷つけない
  • 周囲で協力し合い説得をする
  • かかりつけ医に相談をする

それぞれ対処方法について解説します。

<関連ページ>認知症の方への上手な対応とは? 

怒ったり、否定したりしてプライドを傷つけない 

本人が受診を嫌がった場合には、怒ったり、否定したりしてプライドを傷つけないようにしましょう。認知症の症状により、物忘れがひどくなったり、今までできていたことができなくなっていたりと、本人も不安を強く抱えています。

不安を抱えた状態で、他の人から怒られたり、否定されたりしてしまうと、余計にパニックを起こしてしまいかねません。また、本人のプライドを傷つけるような表現も控えましょう。

ストレートに「認知症なのではないか?」と伝えられると、プライドが傷ついてしまう方もいます。認知症の受診を勧めるには、相手に寄り添う心を意識し、怒ったり、否定したりしないことが重要です。  

 

周囲で協力し合い説得をする

認知症の診断に対して前向きではなく、病院やクリニックへの受診を嫌がった場合には、周囲で協力し合い説得をすることもひとつの方法です。奥さんや旦那さんなどのパートナーや子どもに言われるだけでは、意地がでてしまい、受診してくれないケースも多くあります。

そのような場合には、親戚の方やお孫さんの力を借りることも有効です。たとえば、お孫さんから「おじいちゃん、おばあちゃんには長生きして欲しいから、治療を受けて欲しい」と話をしてもらうと、本人も治療に対して前向きに考えてくれるかもしれません。

そのため、家族間での説得が困難な時は、周囲の方々に協力を求めるようにするとよいでしょう。

かかりつけ医に相談をする

本人が受診拒否をしている場合には、かかりつけ医に相談をするとよいでしょう。家族から受診を促されると、意地をはってしまい、拒否されてしまうケースも少なくありません。しかし、専門的な知識を持つかかりつけ医から、受診を促してもらうと納得して前向きに検討してくれる可能性があります。

また、普段から状態を診てもらっているかかりつけ医とは、すでに信頼関係が築けているため、本人も耳を傾けやすいです。かかりつけ医がいない場合は、自身の地域に設置されている地域包括支援センターに相談をしてもよいでしょう。

<関連ページ>【1人で悩まないで】家族が認知症になったときに頼れる窓口はここ! 

まとめ

まとめ

認知症の診断を受けられる診療科としては、精神科や脳神経内科などが挙げられます。その他にも、老年内科やもの忘れ外来など、高齢者の疾患に特化した診療科もあるので、本人または家族が通いたい場所を選ぶようにしましょう。  

認知症について専門的な治療を受けたい場合には、認知症専門医の在籍する医療機関を受診するのもひとつの方法です。認知症専門医については、日本認知症学会のサイトから検索が可能なので、ぜひ調べてみてください。

また、認知症の診断については、かかりつけ医を見つけておくとスムーズでしょう。わたしたちメドアグリケアグループでは、関東を中心に一都8県31箇所に診療所を展開しているため、認知症について相談できるかかりつけ医を探している方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

<参考サイト>

[1]公益財団法人 生命保険文化センター/認知症患者はどれくらい?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報