レジオネラ菌が感染する原因とは?対処方法や予防方法についても詳しく解説
「レジオネラ菌って最近よく聞くけど、どんな菌なの?」
「レジオネラ菌に感染すると、どうなるの?」
レジオネラ菌に関してニュースや新聞で見かけることがあり、上記のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。国立感染研究所の発表によると、レジオネラ菌による感染の報告数は、夏と秋にかけて多くなると言われています。[1]
これから夏のシーズンに入り、レジオネラ菌感染による報告数が多くなると予測されるため、前もって知識をつけておくことが必要です。
この記事では、レジオネラ菌が感染する原因について詳しく解説します。その他、レジオネラ菌が感染した際の治療方法や予防方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
Contents
レジオネラ菌に関する基本知識
レジオネラ菌に関する基本知識について、以下2つを解説します。
- レジオネラ菌とは
- 潜伏期間
- 感染経路
それぞれについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
レジオネラ菌とは
レジオネラ菌は、元々は河川や湖水、または温泉や土壌などに生息している細菌であり、現在までにおよそ60種類以上が確認されています。レジオネラ症は、60種類ある中の1種である「レジオネラ・ニューモフィラ」と呼ばれる細菌が、人に感染することで引き起こされるのが原因です。
レジオネラ症に罹患すると、個人差はありますが、軽症から重症の肺炎を引き起こしてしまうことで知られています。特に、免疫力が低い高齢者や新生児は、レジオネラ症に罹ってしまうと、重篤な症状へと悪化するリスクが高いです。
また、自然界に元々存在するレジオネラ菌ですが、人間の管理区域外である自然界においては多量に増殖する可能性は低いです。レジオネラ菌が増殖しやすい環境として、水温20℃以上の冷却塔水(※1)や循環式浴槽水などの人間が管理している場所に増殖しやすいと言われています。
※1 水の蒸発を利用して、水を冷却する装置。ビルやショッピングモール等の大型施設の屋上に設置されていることが多い
潜伏期間
人にレジオネラ菌が感染した場合の潜伏期間は、2〜10日間が一般的であり、最大でも16日程度と言われています。人から人へと感染することはないので、感染予防対策を取る必要はありません。
レジオネラ菌に感染した初期には、症状として発熱や食欲不振、頭痛、消化器症状などの一般的な風邪様症状がみられます。そのため、症状だけではレジオネラ症と断定するのは難しく、病院またはクリニックで専門的な検査を受けることが必要です。
レジオネラ菌感染による病型には、レジオネラ肺炎型とポンティアック熱型の2種類があります。肺炎型の場合には、適切な治療を受けていない場合に限り、急速に病状が悪化し致命的な症状を併発するリスクもあります。
レジオネラ菌が感染する原因や感染経路
レジオネラ菌が人に感染する原因としては、以下の3つが考えられます。
- エアロゾル感染
- 吸引または誤嚥
- 土壌からの感染
レジオネラ菌が感染する原因として、最も一般的な感染経路は、エアロゾル感染です。エアロゾル感染とは、空中に浮遊する目に見えていない細菌またはウイルスを吸い込むことで感染してしまう経路を言います。レジオネラ菌においては、汚染した水場にある細かい水滴を吸い込むことで感染します。
エアロゾル感染の次に考えられる感染経路は、吸引または誤嚥によるものです。汚染した温泉や河川などの水が、間違えて肺に入ってしまうことで、レジオネラ症を引き起こします。
土壌からの感染も原因のひとつです。レジオネラ菌に汚染された土や粉じんを吸い込むことにより、レジオネラ症に感染する可能性があります。
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レジオネラ菌に感染した際に起きるリスク
レジオネラ菌に感染した際に起きるリスクとして、以下2種類の病型があります。
- ポンティアック熱
- レジオネラ肺炎
それぞれの病型について解説します。
ポンティアック熱
ポンティアック熱は、レジオネラ菌に感染したことにより引き起る病型であり、肺炎型と比較すると軽症である場合がほとんどです。潜伏期間は1〜2日間であり、発熱を主な症状としています。
発熱以外の症状としては、全身の倦怠感や寒気、頭痛、筋肉痛などが挙げられます。また、ポンティアック熱は肺炎症状が現れないため、通常は数日から1週間程度で自然治癒します。
インフルエンザと同じような症状をきたしますが、レジオネラ菌は人に感染はしないため、感染予防対策は必要ありません。
レジオネラ肺炎
レジオネラ肺炎は、比較的軽症のポンティアック熱とは異なり、急激に病状が悪化し命に関わるリスクもある病型です。肺炎による症状が進行すると、呼吸困難や多臓器不全などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。
レジオネラ肺炎では、発熱や食欲不振、頭痛、倦怠感などが主な症状です。主にみられる症状はポンティアック熱と似ていますが、レジオネラ肺炎の特徴的な症状として、軽度の咳や血痰、傾眠、腕や足の痙攣などが見られる場合もあります。
適切な治療を受けずに放置してしまった場合、致死率は60%にも上ると言われているのが現状です。しかし、適切な治療を受けることができれば、致死率は7%まで抑えられます。
レジオネラ菌に感染しているか判別するための検査方法
レジオネラ菌に感染しているのか判断する場合には、以下の検査方法を医療機関で受ける必要があります。
- 培養検査
- 尿中レジオネラ抗原検査
- 遺伝子検査(LAMP法)
- 採血による抗体検査
培養検査は、細菌感染の疑いのある方の痰や便の一部を採取し、痰の中に存在する細菌を育てて判別する検査です。病気の原因となる菌の種類を特定できるので、効果的な治療薬の選択にも役立ちます。
また、尿中レジオネラ抗原検査は、尿を採取し、レジオネラ菌の抗体がみられないか確認をする検査です。しかし、過去にレジオネラ症に罹ったことがある場合、検査結果が陽性になることもあります。
遺伝子検査(LAMP法)では、レジオネラ菌がもっている遺伝子を増やすことで、感染しているのかを判別します。
レジオネラ菌に感染した際の治療方法
前述でもお伝えした通り、重篤な症状に進行しやすいレジオネラ肺炎は、適切な治療を受けることでリスクを抑えられます。レジオネラ症による原因は、レジオネラ菌による感染のため、抗菌薬の使用により治療が可能です。
レジオネラ肺炎を罹患した場合に使用される抗菌薬としては、以下の3種類が挙げられます。
- マクロライド系
- ニューキノロン系
- リファンピシン
一方で、軽症であるケースが多いポンティアック熱は、抗菌薬を使用する必要はありません。発熱や頭痛がみられる場合には、解熱剤や鎮痛薬を使用するなどの対症療法を行います。
レジオネラ菌に感染しないための予防方法
レジオネラ菌に感染しないための予防方法としては、以下の2つが重要です。
- 家庭内での予防方法
- 入浴施設での予防方法
それぞれの予防方法について解説します。
家庭内での予防方法
レジオネラ菌は、家庭内でも発生する菌のため、以下の予防方法が必要です。
- 風呂の浴槽は毎日洗う
- 空調機の冷却塔を定期的にメンテナンスする(清掃や消毒など)
- 空調機にエリミネーターを導入する
- 使用頻度の低い蛇口も、定期的に掃除する
特に家庭内の場所でも、浴槽はレジオネラ菌が増殖しやすい環境であるため、定期的な掃除が必要です。掃除を怠ることで、浴槽内に汚れが溜まってしまい、レジオネラ菌が増殖してしまう原因にもなります。
その他、空調機にもレジオネラ菌が増殖する可能性があるので、定期的なメンテナンスを行い、菌の発生を防ぎましょう。エリミネーターと呼ばれる飛散水防止剤を取り付けることで、冷却塔からのエアロゾル感染を防ぐ効果も期待できます。
入浴施設での予防方法
入浴施設における予防については、施設管理者のメンテナンスにかかっており、利用者が行えることは限られています。レジオネラ菌から身を守るためには、入浴施設で以下を守るようにしましょう。
- 免疫力が弱っているときは利用を控える
- 定期的にメンテナンスがなされているか情報を確認する
- 水しぶきが多いところには近づかない
免疫力が低下している方は、通常よりもレジオネラ菌に感染するリスクが高いため、入浴施設の利用を控えた方がよいでしょう。また、家庭内の予防方法でもお伝えしたとおり、浴槽はレジオネラ菌にとって増殖しやすい環境です。
入浴施設においても定期的なメンテナンスがされていない場合、レジオネラ菌が発生してしまいます。そのため、入浴施設を利用する際には、定期的に清掃や消毒を行っているかを確認しておくとよいでしょう。
まとめ
レジオネラ菌は年中通して存在する細菌ですが、これから訪れる夏から秋にかけて増殖しやすいといわれています。特に高齢者は、加齢により抵抗力が低下しているため、レジオネラ菌の感染により命にかかわる病状に進行する可能性が高いです。
家庭内において、レジオネラ菌から身を守るためには、浴槽の掃除や消毒が重要なポイントです。また、入浴施設を利用する際には、身体の免疫力が弱っているときは利用を控えるようにしましょう。
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