老人性難聴の特徴とは?治療方法や症状がみられる方とのコミュニケーション方法についても解説

「最近、父母の耳が聞こえづらくなっているけど、これって老人性難聴?」

上記のような悩みを持つ、ご家族の方も多いのではないでしょうか。

現在の日本は世界一の長寿大国であり、平均寿命が84.26歳とされています。[1]そのため、高齢者の多い日本では老人性難聴は決して珍しい状態ではありません。 

本記事では、老人性難聴の特徴について詳しく解説します。併せて、治療方法や老人性難聴がみられる方とのコミュニケーション方法についても紹介します。

ぜひ記事を参考にしていただき、老人性難聴についての知識を深めましょう。

老人性難聴とは 

老人性難聴とは?

老人性難聴とは、加齢による聴力機能の低下以外に原因が認められない状態を指します。人とのコミュニケーションにおいて、音を感じ取る重要な役割を果たしているのが聴力です。そのため、老人性難聴により聴力低下がみられると、コミュニケーション障害を引き起こし、日常生活に支障がでる可能性があるでしょう。

近年の研究結果によると、中年期に難聴がみられると、更年期に認知症を発症するリスクが約2倍に上がるといわれています。[2]そのため、高齢者の多い日本では、老人性難聴がみられる方も多く、QOL(クオリティオブライフ)にも関わるため、注意しなくてはいけません。

しかし、人間の五感を担っている聴力は、一般的には加齢とともに機能も低下してくるので、老人性難聴は生理的変化とも言えるでしょう。

<関連サイト>認知症になりやすい人の特徴とは?原因と予防策を解説

老人性難聴の特徴 

老人性難聴の特徴

老人性難聴の特徴は、以下のとおりです。

  • 高音が聞き取りにくくなる
  • 人の話し声が聞き分けにくくなる
  • 小さな音は聞こえにくいが、大きな音はうるさく聞こえる
  • 症状に気づきにくい

それぞれの特徴について解説します。

高音が聞き取りにくくなる 

老人性難聴の代表的な特徴として挙げられるのが、高音が聞き取りにくくなることです。高音には、言葉を聞き取るために必要な子音成分が多く含まれているため、老人性難聴になると結果的に言葉の判別が難しくなります。

一般的に子どもは2万Hz、成人で1万6千Hzまで聞き取れますが、高齢者では聞き取れる音が5千Hzまで低下すると言われています。反対に、低音の言葉は高音より聞き取りやすいため、低くハッキリと話しかけると良いでしょう。

人の話し声が聞き分けにくくなる

老人性難聴になると、雑音のある環境から、自分が聞きたい音を聞き分けられなくなります。音を聞き分ける機能が低下しているため、会話中に雑音が入ってきてしまうと、どの音が話し声なのか分からなくなってしまうことが原因です。

また、聞こえてくる音が割れてしまったり、こもって聞こえたりしてしまうため、余計に言葉を聞き分けることが難しくなります。対策としては、できるだけ静かな環境で会話するのを心がけ、電話ではなく直接会話をすると良いでしょう。

小さな音は聞こえにくいが、大きな音はうるさく聞こえる

老人性難聴は、小さい音は聞こえにくく、大きい音はうるさく聞こえるといった特徴を持ちます。このような現象を「リクルートメント現象」と呼び、主に内耳に障害がある場合に起きやすいです。

高齢者の方に聞こえるようにと大きな声で話すと、「そこまで大きな声を出さなくても聞こえる!」と怒られてしまった経験はないでしょうか。過度に大きい音は、リクルートメント現象により、相手にはうるさく聞こえてしまいます。

一方で、小さい音は聞こえにくいため、老人性難聴の方には適切な音量で話しかける必要があります。

症状に気づきにくい

老人性難聴のもうひとつの特徴として、症状に気づきにくいという点も挙げられます。ある日突然聞こえなくなってしまう突発性の難聴と違い、徐々に耳が聞こえなくなってくるため、本人は自覚しにくいのが特徴です。

また、本人は気づいていても難聴になってきていることを認めたくなく、周囲が指摘するケースも少なくありません。もし、本人が老人性難聴に気づかずに日々を過ごしている場合には、周囲が伝えてあげることも重要です。

老人性難聴の原因と仕組み

老人性難聴の原因と仕組み

加齢により、内耳と呼ばれる箇所が老化してしまうことで、老人性難聴が起きると言われています。また、老人性難聴が起きる原因は、以下3つに分けられます。

  • 内耳にある感覚細胞の障害
  • 内耳の血管障害
  • 内耳の神経障害

内耳にある蝸牛と呼ばれる部位には、音を感じるために必要な感覚細胞が多く存在します。年を重ねていくと、感覚細胞が減少してしまうため、音が聞こえにくくなることが原因です。

また、高齢になると内耳の血管が硬くなっていくため、栄養のある血液が届かなくなり、機能低下を引き起こします。その他、内耳の神経障害により適切に音が脳に伝わらなくなるため、難聴がみられることもあります。

老人性難聴の診断に必要な検査

老人性難聴の検査

老人性難聴を診断するために必要な検査は、以下の2つです。

  • 純音聴力検査
  • 語音聴力検査

それぞれの聴力検査について解説します。

純音聴力検査 

純音聴力検査は、最も基本的な聴力検査のひとつであり、難聴の有無や程度を調べることができます。音が耳に直接聞こえる「気導聴力」と骨に伝わって聞こえる「骨導聴力」の2種類を調べることが目的です。

125Hzの低い音から8000Hzの高い音までの全7周波数を測定し、難聴の有無と程度を確認します。老人性難聴だけでなく、耳の不調がみられた場合、最初に実施をする検査です。

語音聴力検査 

語音聴力検査とは、言葉の聞き取りやすさに焦点を当てた検査です。主な検査の目的は、以下3つに分けられます。

  • 難聴を起こしている原因部位の特定
  • 純音聴力検査の結果の信頼性確認
  • 補聴器の効果の推定

検査方法としては、ヘッドホンから語音が録音された音声が流れるため、聞き取った音をそのまま発音するか、紙に記入します。難聴の診断や治療方針を決定するための重要な検査であり、補聴器を使用した場合の効果も測定できます。

老人性難聴の治療方法

老人性難聴の治療

現在の医療技術では、根本的に老人性難聴を治すことは困難であり、できるだけ症状を抑える方法以外ありません。症状の進行を抑えるには、規則正しい生活を送り、耳に負担をかけないように長時間の爆音を避けるなどの方法が挙げられます。

しかし、老人性難聴が治らないからといって、極度に心配する必要はありません。治療による改善は見込めませんが、老人性難聴は補聴器の装着により、生活に必要な聴力を取り戻せる可能性もあります。

その他、聴力リハビリと呼ばれるトレーニングを受けることで、聴力に関わる脳を鍛えることができ、音の判別する機能改善も期待できます。

老人性難聴がある方とのコミュニケーション方法 

老人性難聴の方とのコミュニケーション

老人性難聴がある方とのコミュニケーション方法は、以下の5つです。

  • 音が聞こえやすい環境を整える
  • 注意を向けてからコミュニケーションをとる
  • 相手と向かい合って話す
  • ゆっくり、はっきりと話す
  • 身振り手振りをつけて話す

それぞれのコミュニケーション方法について解説します。

音が聞こえやすい環境を整える

老人性難聴がある方は、雑音があると声を判別するのが難しいため、音が聞こえやすい環境でコミュニケーションをとりましょう。雑音が聞こえない環境を作るには、部屋のテレビを消したり、外からの音が響かない部屋が理想です。また、相手との距離感も重要であり、補聴器をつけている場合は1〜2m程度の距離が理想と言われています。

自身に注意を向けてからコミュニケーションをとる

老人性難聴があると、音が発せられている方向がどこなのか分からなくなることがあるので、自身に注意を向けてから話しかけましょう。自身に注意が向いていないと、上手く会話が成立しなくなる原因にもなります。コミュニケーションを取るときは、相手の視界に入る、名前を呼ぶなどの工夫をしましょう。

相手と向かい合って話す

老人性難聴の方と会話をする際には、相手と向かい合って話すように心掛けましょう。難聴がある方は、後ろや横から話しかけられてしまうと、聞こえにくいことがあります。向き合いながら会話をすると、相手の表情や口の動きがみえるため、難聴の方にも伝わりやすいです。

ゆっくり、はっきりと話す

老人性難聴に話しかけるときは、言葉をゆっくり、はっきりと話すようにするとよいでしょう。前述でもお伝えしたとおり、老人性難聴は、小さい音や大きい音、早口言葉は聞こえにくいという特徴を持ちます。また、その他にもカ行・サ行・タ行・パ行は聞きとりづらいと言われています。

身振り手振りをつけて話す

老人性難聴の方と会話する際のポイントとして、言葉だけでなく、身振りや手ぶりを交えて話すと伝わりやすいでしょう。身振り手振りを交えると、視覚的にも理解できるため、老人性難聴の方にも話が伝わりやすくなります。また、老人性難聴の症状が重度の場合、紙やペンを使用し、筆談でコミュニケーションを取ることもおすすめです。

まとめ

まとめ

老人性難聴は、症状が徐々に進行するため、自身では気づかないケースも少なくありません。「こちらの話が伝わらない」や「声をかけても反応が無い時がある」などの異変を感じたら、早期に専門の病院またはクリニックを受診をしましょう。

本人が一人暮らしであり、なかなか家族も顔を出せず異変に気づけるか心配という方には、訪問診療がおすすめです。わたしたちメドアグリケアグループでは、関東を中心に一都8県31箇所(2024年7月現在)に訪問診療所を展開しています。

老人性難聴の症状を含めた全身状態の確認を自宅でも受けられるため、ぜひご検討ください。

急な体調の変化に対しても24時間265日対応が可能なため、お気軽にお問い合わせください。

<関連サイト>診療所 – メドアグリケア|茨城県つくばみらい市の有床診療所・ケアホーム・在宅医療・訪問介護・在宅ホスピス・在宅緩和ケア 

<参考サイト>

[1]外務省/平均寿命の長い国/https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/jumyo_t.html

[2]国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター/耳が聞こえにくいと認知症になりやすい?/https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/02.html