廃用症候群の症状や原因は?今すぐできる予防法も紹介
「入院してから、体が思うように動かなくなった」
「退院したのに歩けなくなってしまった」
そんな話を耳にしたことはありませんか?あるいは、ご自身やご家族がそんな経験をして、不安を感じたことがあるかもしれません。
その原因の一つとして考えられるのが「廃用症候群」です。これは、長期間の安静や活動の制限によって筋力が落ちたり、心肺機能が低下したり、さらには精神的な不調が現れたりする状態を指します。身体的な衰えはもちろん、心にも影響を与えるため、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。
この記事では、廃用症候群がどのような症状を引き起こすのか、そしてその原因と予防法について解説します。ご自身や大切な人を守るために、ぜひ参考にしてください。
Contents
廃用症候群とは
入院や介護、あるいは病気やけがによってベッドでの安静が必要となった際に、体を動かす機会が減り、筋肉や関節が弱ってしまうのです。
高齢者の場合、小さなケガや体調不良から一気に活動量が低下して廃用症候群に陥るケースもあります。
廃用症候群は身体機能の低下だけでなく、精神的な面にも影響を与えるため、注意が必要です。
廃用症候群の症状
廃用症候群では、体を動かさないことによる身体的な機能低下だけでなく、精神的な面にもさまざまな症状が現れることがあります。
筋力低下
長期間、体を動かさずにいると、筋肉は急速に衰えます。特に、下肢の筋肉は筋力低下しやすく、歩行時にふらつきが起きたり、立ち上がり動作も難しくなります。
これは高齢者に限らず、年齢に関係なく起こります。たとえば、風邪で数日寝込んだ後に歩くとふらつきを感じた経験がある方もいるでしょう。
しかし、高齢者の場合、ふらつきから転倒に繋がることも多くなるため、より注意が必要です。
心肺機能の低下
持久力が著しく低下し、息切れがしやすくなったり、ちょっとした活動でも疲労感を覚えるようになります。これにより、日常生活に支障をきたすことが増えていきます。
骨密度の低下
体を動かさない状態が続くと、骨密度が低下し、骨粗鬆症のリスクが高まります。
骨密度が低下すると、骨折のリスクが高まるため、特に高齢者では転倒による骨折に注意が必要です。
関節拘縮
関節拘縮とは関節が硬くなり、動きが制限される状態です。
膝や肘、肩などの関節が動かなくなると、座る・立つといった基本的な動作が困難になり、介助が必要になるケースが増えます。
褥瘡(床ずれ)
寝たきりの状態が続くと、褥瘡(床ずれ)が発生する危険性もあります。
褥瘡は、長時間の圧迫によって体の一部の血流が悪くなり、皮膚や皮下組織が損傷を受ける状態です。
重症化すると治療に時間がかかり、場合によっては外科的処置が必要になることもあります。
食欲不振
体を動かさないことで代謝が低下し、食欲の減退が見られます。
食欲不振により、十分な栄養を摂取できなくなると、体力がさらに低下し、筋肉や骨が弱くなります。これが悪循環となり、廃用症候群の進行を助長してしまうのです。
便秘
体を動かさない状態が続くと、腸の動きが鈍くなり、腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下することで便秘を引き起こします。
長期間の便秘は、さらに腹痛や食欲不振を招き、全身の不調につながります。
<関連記事>【高齢者に急増⁉︎】便秘の原因と対処法を解説!
意欲の低下
長期間にわたって体を動かさない状態が続くと、動く必要性を感じなくなり、次第に「動こう」という気力が失われていきます。
高齢者や長期入院者は、特に変化の少ない生活環境により、意欲を失いやすくなるため、早期に対策を取ることが重要です。
認知機能の低下
活動量が少なくなると、その分運動量の減少や人との会話も少なくなるため、記憶力や判断力などの認知機能が低下します。
高齢者では、こうした認知機能の低下が進むと、認知症のリスクも高まります。
うつ状態
廃用症候群からうつ状態に陥ることもあります。
外出や交流の機会がなくなると、無力感や孤立感が強まるため、心の健康が損なわれ、気持ちが沈みがちになります。
うつ状態になると、さらに体を動かす意欲が失われ、廃用症候群が悪化する悪循環に陥ることがあるため、精神面のサポートも大切です。
<関連記事>老人性うつとは?認知症との違い、対処法も解説
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高齢者が廃用症候群になる原因
ここまで、廃用症候群の症状を見てきました。ではなぜ廃用症候群になるのでしょうか。
以下が、主な原因になります。
- 長期の安静状態
- 活動量の低下
- 過度な介護
それぞれ解説していきます。
長期の安静状態
病気やケガなどで、体を動かさない期間が長くなると廃用症候群になってしまいます。
寝たきりの状態が数週間続くだけでも、筋力は大きく落ち込み、元の体力を取り戻すのが難しくなります。
特に高齢者の場合、病気やケガから安静状態が長期化しやすいため注意が必要です。
活動量の低下
活動量が低下することも廃用症候群の原因のひとつです。
高齢によって身体機能は低下しており、複数の慢性疾患なども抱えている場合が多いため、辛さや痛みによって活動量が低下しやすくなります。
活動量が低下すると、体力面だけでなく、社会とのつながりや人との交流が少なくなることで、認知機能も低下してしまう可能性があります。
過度な介護
過度な介護も、廃用症候群の原因になることがあります。
要介護者が日常生活のすべてを介護者に任せてしまうと、自分で体を動かす機会が減り、筋力や体力が衰えてしまうのです。
介護を受けることで安全が確保される一方で、自分で体を動かさない生活が続くと、廃用症候群が進行しやすくなります。
廃用症候群の予防法
廃用症候群を防ぐためには、日常生活の中でいくつかのポイントに注意し、体や心の機能を維持することが重要です。以下に、予防法として効果的な5つの方法を紹介します。
- 日常的な運動習慣
- バランスの取れた食事
- 社会参加の促進
- 心理的サポート
- 環境調整
それぞれ解説していきます。
日常的な運動習慣
日常的な運動習慣を取り入れることが、廃用症候群の最も基本的な予防策です。
筋力や心肺機能を維持するためには、定期的な運動が欠かせません。無理のない範囲で散歩をしたり、簡単な体操を行うようにしましょう。
自分の体力に合った運動を続けることで、転倒や筋力低下のリスクを減らすことができます。
<関連記事>認知症予防にウォーキングが有効な理由とは?効果的な方法や重要なポイントについても解説
バランスの取れた食事
バランスの取れた食事も、廃用症候群を予防するために不可欠です。
特に、タンパク質やカルシウム、ビタミンDなどの栄養素は、筋力や骨密度の維持に重要な役割を果たします。
適切な食事管理を行うことで、体力の低下を防ぎ、健康を維持することができます。
社会参加の促進
社会とのつながりを維持することは、心身の健康に大きく影響します。
廃用症候群を予防するためには、外出や趣味の活動、地域のコミュニティへの参加などを通じて、社会的な関わりを保つことが重要です。
人と交流することで、心の活力が生まれ、生活への意欲も維持されます。
特に高齢者は、家に閉じこもりがちになると、孤立感から意欲の低下やうつ状態を引き起こす可能性があります。定期的に友人や家族と過ごす時間を作ることで、生活に楽しみを作りましょう。
心理的サポート
心理的なサポートも、廃用症候群の予防に効果的です。
一人暮らしの高齢者の場合は特に、些細なことがきっかけで急に外出しなくなって引きこもりになってしまうことがあります。
こうした状況を防ぐために、家族や周囲の人々からの心のケアが重要です。
定期的に体の調子や感情について話す機会を設けるだけでも、ストレスや不安を解消しやすくなるでしょう。
環境調整
住環境の整備も、廃用症候群を防ぐための重要なポイントです。
例えば、転倒が怖くて外出ができない場合、そのままだと引きこもりになってしまう可能性がありますが、歩行器などの歩行補助具を利用することで、比較的安全に屋外の歩行ができるようになるかもしれません。
また、手すりを設置したり、段差をなくしたりすることで、動きやすい環境を作り、自分でできる範囲の活動を増やすことができます。
まとめ
ここまで、廃用症候群の症状や原因、予防法についてお伝えしてきました。
特に高齢者は、些細なことがきっかけで廃用症候群に陥りやすく、筋力や心肺機能の低下だけでなく、精神的な不調や認知機能の衰えが進むことがあります。そのため、早期の対策が非常に重要です。
この記事で紹介した予防法を日常生活に取り入れることで、廃用症候群を未然に防ぎ、健康で充実した生活を続けていきましょう。
自分や大切な人の健康を守るために、ぜひ意識してみてください。
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