高齢化社会における医療の課題と問題点を挙げてみます
2020年現在、高齢化の勢いが止まらない日本では高齢化に伴い様々な問題が起きるとされています。年金問題や介護スタッフ不足もありますが今回はこの中でも医療に関する問題点を紹介していこうと思います。
- 高齢者の増加からみる日本の医療問題
総務省統計局によると2020年現在の日本の総人口は1億2642万人でした。そのうち高齢者(65歳以上)の数は3557万人と、割合にしておよそ28%となっています。高齢者の数は前年比較で44万人増加したことになります。総人口は2008年に過去最大となって以降、減少傾向が続いています。その一方で高齢者人口は年々増加傾向を続けています。高齢者人口は1950年以降増加し続けており、2040年には高齢者の割合が35%を超えるともいわれています。では、このように高齢者の増加で医療にどのような問題があるのでしょうか。
▲医療費の上昇
日本の国民医療費は年々増加しています。最近のデータでは年間約42兆円ともいわれており、過去最大を更新しています。高齢者が増加すると医療費がさらに上がるともいわれています。この詳細については次項で紹介します。
▲医療従事者の不足
日本は高齢化と一緒に少子化も進行しています。患者さんとなりうる高齢者の人数は増えますが、医療従事者が安定して確保できるとは限りません。2020年でさえ、看護師不足を訴えている地域はあります。そして何より医師数が足らなく困っている地域があります。
■無医村の存在
医師による診療が受けられない・受けることが難しい村を無医村と呼びましたが、僻地医療への改革がおこなわれ現代では医療を受けることが大変なエリアというのが存在しています。当法人がある茨城県内でも県北部を中心に無医村エリアが存在しています。医師による往診などが行われていますが、都内と比較すると十分な医療環境があるとはいえません。医師数の不足に拍車がかかれば医療従事者不足問題はさらに深刻化します。
▲病院の不足
患者さんとして高齢の方が増えてしまうと、入院病床が不足します。前述の医療従事者数減少と相まって、病院で受け入れられる人数が限られます。さらに、日本では良質な医療を提供するために医療機関において看護師1人あたり受け入れられる患者数が決まっています。看護師をはじめとする医療従事者が確保できない病院では、ベッドの空きはあるけれど入院できないという事例が発生する可能性も拭えません。
- 高齢者と医療費の関係
日本は高齢者の増加と出生数の減少により医療崩壊に向かったカウントダウンが始まっているといっても過言ではありません。では、なぜ高齢者の増加と医療費の増加が関係しているのでしょうか。
▲医療費の割合
高齢者はそうでない方と比べて国民医療費で占める割合が高いです。国民医療費は年間42兆円ですが、このうち65歳未満の人は約17兆円ですが65歳以上の人は約25兆円です。およそ1.5倍の開きがあるだけでなく、65歳未満と65歳以上では人口が異なるため高齢者が増えれば医療費も増えることが想像できるのではないでしょうか。
▲高齢者の特徴
高齢者の特徴として2つの側面から話を進めていきます。1つ目は身体的な特徴です。高齢者は病気が重篤化しやすいです。若い年齢層の方と比べて免疫力や体力がないからです。重篤化すると通院ではなく入院下で治療を進めることになります。高齢者の医療費の多くは入院費です。およそ50%を占めるともいわれており、入院費を少なくできれば医療費の削減へつながります。
入院とまではいかなくても糖尿病や高血圧など生活習慣病を抱えている人は高齢になるほど多くなります。このような方々は通院しながら薬を飲んでいることが多く、通院費と毎月の薬代がかかるのです。
もう一つの側面は心理的な特徴です。若い世代と比較して高齢者の方は「自分の身体への意識」が高いです。少しでも身体に不調があれば医療機関を受診します。これは決していけないことではなく、健康を意識して保つためには重要なことです。しかし、通院回数が増えればそれだけ医療機関が加算する点数が高くなり、結果的に医療費が増加していきます。
▲負担金が違う
高齢者の方と若い世代で大きく異なるのは医療費の窓口支払い時における自己負担金です。一般的には3割負担の方が多いですが、高齢者の方はさらに少ない割合を支払うことで医療を受けられます。小学生〜69歳までの方は原則3割負担ですが、70歳〜74歳の方は2割負担になります。さらに、75歳以上の方は1割負担となります。3割負担と1割負担では大きく違ってきますよね。高齢者の方は年金だけで生活している方が多いため、自己負担金のハードルを下げて医療を受けてもらいやすい制度ができています。
- 今後の課題とその対応方法を紹介
少子高齢化が進む中、政府は指をくわえてこの状況を傍観しているわけではありません。高齢化が進む前にどのような課題があり、それをどのように対処していけば良いか考えていきましょう。
▲生活習慣病患者の増加→健康指導
生活習慣病とは、糖尿病や脂質異常症・脳梗塞や肺がんなどです。日常生活が起因となり発症する病気の総称ですが、逆の意味は「予防できる」病気ということです。生活習慣病のリスク判定の一つにメタボリックシンドローム検診(特定検診)があります。
生活習慣病に対する対処法は生活改善です。喫煙をしている方は肺がんリスクや動脈硬化リスクが高いため禁煙指導を受けると良いでしょう。また、肥満の方は糖尿病や高血圧などの基礎疾患のリスクが高いためこちらも注意が必要です。食生活改善だけでなく運動療法を併用して適切体重を保つようにしましょう。生活習慣病ではなくても加齢とともに高血圧や動脈硬化が見られることがあります。このような場合でも食事療法や運動療法である程度対応できることが多いです。主治医の先生からの指導に従うようにしましょう。
▲在宅医療へのシフト
国は高齢者の増加や医療従事者の確保が困難にならないように、在宅医療へのシフトチェンジをしようとしています。在宅医療とは患者さんの自宅や患者さんが入所している施設などへ医療関係者が訪問して医療を提供します。
このようにすれば病院で24時間体制の医療を提供しなくてもよく、医療費の削減へつながります。しかし、在宅医療は家族の人の協力が必要になります。在宅医療は、在宅看護や在宅介護など様々な職種と協力しながら進めていかなければいけません。当法人は医療だけでなく訪問看護にも力を入れているため連携をとりながら在宅医療を進めることができます。実際に在宅医療と聞くとあまり馴染みがないように聞こえますが、近年では在宅医療を希望される方の数が増加傾向にあります。
■在宅医療の割合が増加
厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室「在宅医療の最近の動向」を見ると国民のニーズとして「自宅で療養」を希望する人の割合が高くなっていることがわかります。また、自分の最期をどこで迎えたいかというアンケートの結果も病院ではなく自宅で家族と穏やかに過ごしたいと考えている人が多いようです。
2009年現在、死亡場所の推移は病院が78%程度で自宅が12%となっています。2000年ごろから見ると横ばい程度で収まっており、自宅で最期を迎えることを希望する方のニーズに応えていることがわかりますね。
ただし、前述でも触れましたが在宅医療をするには家族へ負担がかかるほか、症状が急変したときにどのような対応をしてくれるのか心配だという声も聞こえます。当法人では患者様だけでなく、ご家族のみなさんにも安心していただけるようなサポートをしております。
- 高齢者の問題ではなく社会の問題
誰でも年齢を重ねて「高齢者」と呼ばれる区分へと入ります。高齢者の方が持病を抱えているのも、入院してしまうのも仕方がないことです。誰も悪くありません。しかし、これからの世代の方は出来るだけ健康を保てるように自分の身体に少しでも興味を持つようにしましょう。そしてこれからは在宅医療へとシフトチェンジすることが多くなります。その際はぜひ私たちにお手伝いさせてください。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
そこで私たちは、住み慣れたお住いに、24時間365日いつでも、どこでも、誰にでも医療をお届けするサービスを提供しております。もちろん緊急事態にも24時間体制で医師と看護師が対応いたします。好きな地元でゆっくり落ち着いて、お一人お一人その人らしく療養できるよう、患者様やご家族様に寄り添った医療を提供いたします。地域を愛し地域に根付き地域に愛される強い信念でお手伝いさせていただきますので、最期までお付き合いさせてください。