高齢者施設でできる医療行為!受け入れを拒否される事例とは?
年齢が高齢になるほど自分で動ける範囲が少なくなり、自立した生活ができなくなることがあります。家族が近くに住んでいるようなケースだと、家族が介護することもあるようですが全員が家族の介護を受けられるわけではありません。そのような方は高齢者向け施設に入居して生活することが多いです。しかし、そこで問題となるのが病気ではないでしょうか。高齢者は若い世代と比較して感染しやすく重症化しやすいのが特徴です。そこで、今回は高齢者施設のなかでできる医療行為や持病を抱えている方でも受け入れしてくれるのかなどを紹介していこうと思います。
- 高齢者と医療行為
高齢者という言葉だけでは具体性がないので、ここでは具体的に何歳以上を高齢者と位置付けるのか決めていきます。世界保健機関(WHO)が65歳以上の人を高齢者と定義づけていますので、ここでも高齢者は65歳以上の方を指します。また、この高齢者という定義の中でも65歳〜74歳までを前期高齢者・75歳以上を後期高齢者としていますので合わせて覚えておきましょう。
日本では高齢化社会が問題となっていますね。高齢者の割合が年々増加していることを高齢化社会と呼びます。2000年には約2200万人だった高齢者の人口が2018年には約3550万人と約1.5倍にまで増えています。2018年現在でも高齢化社会といわれていましたが、2025年には超高齢化社会になるといわれており、高齢者の数は増加の一途を辿っていることが分かりますね。そんな高齢者の方は病気と切っても切れない関係にあります。若い世代(現役世代)と異なり高齢の方は何が違うのか解説していきます。
▲体の変化
人間は高齢になればなるほど体が変化していきます。一言で言ってしまえば老化になりますが、具体的にどのような変化があるのでしょうか。まずは肺です。肺は体内の酸素と二酸化炭素の交換をしていますが、高齢になればこの交換がうまくいかなくなります。その理由は肺の膨らむ大きさが関係しています。肺は空気を吸い込むときに大きく膨らみ、たくさんの酸素を体内へ入れます。そして、肺の中にある肺胞と呼ばれる小さな袋状の組織で体内の二酸化炭素と酸素を交換するのです。高齢になると肺の柔軟性が落ちてしまい、空気をたくさん吸おうとしても肺が膨らまないため酸素を取り入れることができません。また、肺胞で交換した二酸化炭素を吐き出すときには肺が萎むことで体外へ排出しますが、肺の柔軟性が落ちている場合は二酸化炭素を吐き出す力も低下してしまうのです。肺がこのように柔軟性を失ってしまうと体内に残る空気(残気量)が増えてしまい、酸欠になりやすくなることもあります。
他にも高齢になると血圧が上がりやすくなります。血圧をイメージするときはホースから水を出しているところを想像してください。ホースを持っているだけでは水の勢いは普通ですが、ホースの口を押すとどうでしょうか。水は勢いよく出ますよね。血圧とはこのホースの柔軟性を意味します。高血圧の方は血管の柔軟性がなく、勢いよく血液が流れている状態。つまりホースの口を押しながら水を流しているような状態を指します。一方、血圧が高くない人はホースの口を押していない状態なので、血管内を穏やかに血液が流れています。高齢になればなるほど血管の柔軟性が落ちてしまい、血圧が高くなる傾向があります。血圧の高さは生活習慣病だけ気をつけていれば良いと思っている方がいますが、加齢によっても血圧は高くなることを覚えておきましょう。
そして、免疫力の低下です。免疫力は基礎体力や食事から摂る栄養も重要ですが、体内で産生される免疫細胞の働きが重要です。代表的なものは白血球やリンパ球です。リンパ球の中には近年、がん治療への応用も期待されているナチュラルキラー細胞(NK細胞)やキラーT細胞、ヘルパーT細胞などもいます。これらは骨髄や胸腺といった臓器で産生されていますが、加齢とともに臓器の働きも弱くなるため産生される細胞数も減少します。免疫を司っている細胞数が減少するため、身体の免疫力が落ちてしまうのです。
▲高齢者に対する医療行為
身体的にも大きな特徴がある高齢者の方には医療行為が必須となることが分かりました。では、ここでいう医療行為とはどのようなことをいうのでしょうか。医療行為には医療資格者でなければできない行為と素人でもできる行為があります。厚生労働省は平成17年に「医師法・歯科医師法・看護師法の解釈について」という通知書を出しました。この中で「医療行為とは当該行為を行うにあたり、医師の医学的判断および技術を持ってするのでなければ人体に害を及ぼし、または及ぼす恐れのある行為を反復継続する意思を持って行うこと」と明記されています。医師法や歯科医師法がなんのためにあるのかというと職業の保証という意味合いもありますが、メスで切開する・縫合するなどを無資格者が行うと傷害罪になりますがそれを打ち消すための根拠法となるからです。では、高齢者施設で行う全てのことが医療行為となり全て医師や歯科医師・看護師が処置をしなければいけないのでしょうか。
- 高齢者向け施設における医療行為
前述の「医師法・歯科医師法・看護師法の解釈について」の中で厚生労働省は医療行為に当たらない行為というのを具体的に列挙しています。
・水温体温計・電子体温計にて腋下の体温を測定すること
・自動血圧計にて血圧測定をすること
・入院治療の必要がないものに対して動脈血酸素飽和度を測定すること
・軽微な切り傷や擦り傷などに対して専門的な判断や技術を必要としない処置をすること
・爪に化膿や炎症がない場合の爪切り
・耳垢除去
・パウチに溜まった排泄物を捨てること
・カテーテルの準備や体位の保持
・市販の浣腸で浣腸をすること
これら列挙したものは入居者やその家族へ事前に無資格者が実施することを承諾してもらうことが前提となりますが、基本的には医療行為に当たらないという判断をしています。つまり、高齢者向け施設などで一般業務として行っていることもほとんどが医療行為ではないということになりますね。
▲高齢者向け施設における医療従事者
高齢者向け施設では施設基準の一つで医療従事者の人員配置数が法律で決められています。例えば特別養護老人ホーム(以下:特養)では入居者100人に対して看護師3名が義務となり、任意で医師1名の配置が求められます。介護老人保健施設では医師1名・看護師10名の配置が決められています。特養も介護老人保健施設も介護施設であり、医療機関ではないですが介護老人保健施設の方が医療従事者の人数が多いことが分かりますね。人員配置数に義務はありませんが、近年では医療体制拡充のニーズが高まっていることもあり医師や看護師を配置している施設も多くなっています。
▲受け入れを断られるケース
医師や看護師を配置している施設は増えていますが、医療機関ではないためできる医療行為には限界があります。入居希望者が人工透析の必要がある・がん治療の真っ只中など高度な医療行為が必要であると判断されると医療設備が整っていない施設では入居を断られるケースがあります。
高度な医療を求めている場合や、持病により身体的な不安を抱えている場合は介護老人保健施設を検討するようにしましょう。また、介護療養型医療施設という施設もあります。どちらも特養や有料老人ホームと比べて医療設備が整っているため高度な医療が必要というケースでも相談できるのではないでしょうか。
- 高齢者施設は病院ではない
特養や有料老人ホームなどの高齢者施設は病院ではありません。必要な医療行為があれば病院へ救急車で運ばれることもあります。高齢者施設でできる医療行為とできない医療行為について理解してから施設選びをすると入居してから「違った」というギャップを感じずに済むのではないでしょうか。
その一方で、喀痰吸引や経管栄養の交換などは看護師でなければ処置ができなかったことですが、近年は法改正により講習を受けた介護職員でもできるようになりました。このように医療の門戸が広くなることもあります。
近年は、入院しながら治療することが難しくなってきています。
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