地域で広がる医療格差と経済格差
地域ごとに特徴があると思います。観光地や人口・人柄など各地で異なるものは多いです。医療においていえば地域差はなく、全国で均一な医療を受けられるとされています。しかし、実際はどうでしょう。医療には地域差があり、それにより恩恵を受けている人と弊害を受けている人がいるのです。今回はそんな医療における地域格差について紹介していこうと思います。
●厚生労働省における地域医療についての見解
医療に関する国内の決定機関は厚生労働省です。厚生労働省の資料によると日本における医療提供体制は「国民皆保険下でフリーアクセスによりどの医療機関でも世界の中でも高井保健医療水準を受けられ、世界最長の平均寿命を達成している。」としています。フリーアクセス制度とは、全国どこの医療機関でも受診できるという意味で、地域や役職により制限されません。実際に医療を受けられる医療機関数は病院で8493施設・診療所で100461施設となっています。
日本の医療制度で悩みの種となっているのが社会保障給付費です。年金・医療費・福祉関連の費用の総額が社会保障給付費と呼ばれています。昭和25年から右肩上がりで増加し続けており、2017年には一人当たり120万円を超えています。社会保障給付費が右肩上がりになった原因に少子高齢化があります。特に2025年には「2025年問題」という問題が浮き彫りになっています。2025年問題とは、団塊の世代が全員75歳を超えることを意味しています。これに伴い、厚生労働省では2025年の社会保障費で医療・介護の給付費が大幅に増加すると予想しているのです。そこで厚生労働省は平成26年度に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」というものを公表します。その中には次のように書かれていました。「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保 険法等の関係法律について所要の整備等を行う。」
つまり、日本の社会保証制度を継続させるための法律という意味です。具体的には次のことが書かれていました。
▲新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、 消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置します。医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定します。
▲地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等を報告し、都道府県は、それをもとに地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定します。医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付けます。
▲地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化させます(※地域支援事業:介護保険財源で市町村が取り組む事業)。特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化します。低所得者の保険料軽減を拡充します。一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ(ただし、一般の世帯の月額上限は据え置き)します。低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加します。
▲その他
診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設します。医療事故に係る調査の仕組みを位置づけます。医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行促進策を措置します。介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を27年度から28年度に延期) します。
●各地で広がる「格差」について
今の日本では様々な格差が問題となっています。経済格差や教育格差・所得格差に地域格差など我々を取り囲む格差は様々です。特に医療と密に関係するのは地域格差です。高卒の有効求人倍率は東京都が最も高く、4.4でした。次いで愛知県が2.54、大阪が2.25と大都市圏で求人倍率が高い傾向があります。一方、求人倍率の低い地域があるのも現状です。青森0.17、沖縄0.21、高知0.24と東京都と比較すれば20倍以上の格差が生まれています。他にも土地の公示価格を見ても東京都内の一強は否めないです。求人倍率が高ければ高いほど、仕事の種類が多く、仕事を選べます。地方は仕事が少なく求職者が仕事を選べません。結果として、「良い仕事」は首都圏に集中してしまうのです。良い仕事の中には労働条件が良い職場もあれば給与が高い職場もあります。
給与の格差が首都圏と地方で生まれた結果、経済格差や所得格差へつながるのです。内閣府によると1990年以降、各地域別で見た県民所得の全国平均値との乖離をみると、関東・中部・近畿地方は平均よりも高い水準をキープしているものの、北海道・東北・中国・四国・九州では低い水準となっています。中でも一人当たりの所得が最も高い東京都と、最も低い沖縄県では2001年の段階で2倍以上の差があるため問題視されていました。こうした地域間の経済格差は失業率を上げるだけでなく、働き手の流出を招きます。また、所得に比例して生活の質にも変化が起きるのです。
▲統計学的にみた健康と所得
大和総研の資料をみると所得と健康の関係が面白く解説されています。まず、前提として所得と健康の相関性があるのかという点に着目して資料を作成しているのです。実際に見てみましょう。まず、20歳以上の世帯年間収入と肥満度の関係があります。世帯年間収入が200万円未満の世帯では男性で約40%、女性で約25%が肥満です。一方、世帯年間収入600万円以上の世帯では男性で約25%、女性で約20%が肥満だったのです。この結果に大和総研は「相対的に所得が低い層では、低コストで高カロリーの食事を摂る傾向が高く、栄養バランスが偏った結果、健康が阻害されているのではないか」とコメントしています。
次に同じく世帯年間収入別の健康診断未受診者の割合をみていきます。世帯年間収入が200万円未満の世帯では男女ともに約40%強の人が健康診断を受診していません。一方、世帯年間収入600万円以上の世帯では男性で約15%、女性で約30%の人が健康診断を受診していませんでした。また、医療機関に「健康でなかったのにいかなかった」人へ理由を聞くと「自己負担の割合が高い」「仕事が忙しい」など経済的な理由を上げる人が多かったです。このことから自身や家族の生活が優先となり、健康への意識や関心が低くなっていることがわかります。
●地域医療格差をなくすために…
地域医療格差は患者の健康への関心度や経済力なども関係してきます。また僻地と呼ばれる地方では、医師がいない・歯科医師がいない地域も珍しくありません。大型病院や地方の医学部では地域医療へ貢献する医師育成の枠を用意しているところもありますが、まだまだ地域医療格差が縮小しているとは実感できない現状です。自治体が中心となり、健康診断を受けられる助成制度の導入や、地方で医師・歯科医師・看護師など医療従事者が働きたいと思える環境作りをすることが望まれます。地域医療格差をなくし、日本全国どこでも同様の医療が受けられる日が来ることを願っています。
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