訪問診療を利用するタイミングとは?実際の事例を紹介
皆さんは訪問診療をご存知でしょうか。訪問診療は自宅で長く生活する上では欠かせないものです。
利用するにはハードルが高いと思われがちですが、簡単に利用することができます。利用をしたくても利用方法がわからなかったり、どういったタイミングで利用すれば良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は訪問診療の利用方法やタイミング、また実際に利用した事例について紹介します。通院が大変になっている方や自宅での看取りを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
訪問診療とは?
訪問診療は、医師が定期的に自宅を訪問し診察をすることです。事前に訪問する曜日や時間を決めます。基本は2週間に1回訪問し、病状によって1週間に1回の訪問に切り替わることがあります。自宅だけでなく、介護施設でも訪問診療を利用することは可能です。
自宅で病状が悪化した場合、連携している病院と連絡を取ってくれ、受診相談・入院相談をしてくれます。入院し自宅へ退院する際は、再び訪問診療を再開できます。
病院・クリニックによっては、休日・夜間含め24時間対応で訪問してくれるところもあります。
内服薬は訪問診療の医師が処方することになります。通院時と同じく、薬局での院外処方になりますが、他のサービスを利用すれば、薬剤師にお薬を届けてもらうことができます。
その際は介護保険の利用が必要となりますので、詳細は訪問診療先やケアマネジャーへ相談しましょう。
対象者
訪問診療は原則「居宅(施設)で療養を行っている患者で、疾病、傷病のために通院による療養が困難な方」という条件があります。
しかし実際は細かな規定はなく、主治医の判断で訪問診療の利用は可能です。そのため誰でも利用できるのが訪問診療ですが、以下のような方が利用しています。
・病気により歩行が困難、また寝たきりのため通院が困難な方
・認知症で通院が困難な方
・自宅や施設で療養したい方
・がんなどの終末期で自宅でお看取りしたい方
・在宅酸素やカテーテル治療など、医療処置が必要な方
・自宅で緩和ケアを希望している方
費用
訪問診療は医療保険が適用となり、1〜3割負担で利用可能です。年齢によって医療保険の負担割合は異なります。
月2回の訪問診療で、1割負担の方は約7,000円、3割負担の方は約20,000円となります。他にも交通費や介護保険の費用が加算されることがあります。また検査内容によっては、費用が変わる場合があります。
医療保険の負担割合は、以下の通りです。
・0歳~小学校就学前:2割負担
・小学生以上70歳未満:3割負担
・70歳以上75歳未満:2割負担
・75歳以上:1割負担(現役並の所得だと3割負担)
訪問診療は高額療養費の対象になります。医療費が一定額を超えた場合、手続きをすると返金されますが、返金までには数ヶ月かかることがあります。
そのため事前に「限度額適用認定証」の申請をおすすめします。事前に限度額適用認定証を申請しておけば、所得に応じた上限金額までの支払いになります。訪問診療だけでなく、外来・入院でも適応できるため、申請しておいて損はないです。
70歳以上の方は、住民税課税世帯であれば申請は不要です。詳しくは訪問診療先やお住まいの市町村へ確認することをおすすめします。
具体的な診療内容
訪問診療はどんな方でも利用可能ですが、実際にどのようなことを対応してもらえるのでしょうか。具体的な内容は以下の通りです。
・血圧・血糖測定や体温測定などの健康管理
・褥瘡の処置
・在宅酸素療法の管理
・点滴、注射の実施
・胃ろうなどの経管栄養法
・尿道カテーテルなどの交換
・麻薬等の癌性疼痛のコントール など
訪問診療で対応してもらえる内容は様々です。どんなことを対応してもらえば良いかわからない方は、主治医へ相談してみましょう。
病状悪化があった場合、臨時で訪問してくれる場合があります。ただし状況によっては、すぐに訪問できず、待ち時間が発生することもあるため、事前に確認しておきましょう。
往診との違いは?
訪問診療と似たような言葉で「往診」という言葉を聞いたことはありませんか?同じような言葉に聞こえますが、どのような違いがあるのでしょうか。
先程述べたように、訪問診療は事前に診療内容を計画し、曜日や時間を指定し定期的に訪問します。
一方往診は、定期的な訪問ではありません。自宅で急変した際、患者・家族から連絡を受けて、その都度自宅に訪問することです。24時間対応しているわけではないため、時間によっては訪問できないことも考えられます。あくまでも臨時訪問とイメージしておきましょう。
訪問診療を利用するタイミングとは?
実際に訪問診療を利用したいとなった場合、どのようなタイミングで利用を検討したら良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今まで通院していた方が、訪問診療へ切り替えるタイミングとして、以下が挙げられます。
①入院先から退院した時
病気や骨折などで入院すると、入院前に比べて身体機能が低下することがあります。今まではご自身で通院できていた方も、通院が難しくなった際に訪問診療へ切り替えることが可能です。入院先の看護師・ソーシャルワーカーが、訪問診療へ依頼をしてくれます。
退院前にカンファレンスを行い、訪問診療先へ引き継ぎをしてくれ、退院後から訪問診療へ切り替えることができます。
②病気により通院が困難になった時
自宅で生活している中で体力が落ちてきたり、認知症が進むことによって、通院が困難になることがあります。
訪問診療を利用するにあたり、現在のかかりつけ医から診療情報提供書が必要になるため、必ずかかりつけ医に相談しましょう。
③終末期で在宅看取りを行う時
がん末期など自宅で看取りを希望する場合、訪問診療は必須です。訪問診療を利用せずに自宅で亡くなってしまうと、警察を呼ばなければならない事態になる可能性があります。
また訪問診療だけでなく、訪問看護も利用することをおすすめします。訪問看護は主治医からの指示書に応じて、点滴や注射などを実施してくれます。中には訪問診療と訪問看護がセットになっている事業所もあります。
看取りや緩和ケアを対応している訪問診療へ依頼しましょう。
実際の事例を紹介
それでは実際に訪問診療を利用することになった方のケースを紹介します。 Aさん(80代男性)はご家族と同居していました。肝臓癌がありましたが、通院はできる状態。入退院を繰り返しながら、抗がん剤治療を行っていました。
抗がん剤治療の入院をした際、血液検査の結果が悪く、どんどん病状が悪化していきました。意思疎通も難しくなってきた中でも、本人は「自宅に帰りたい」という思いがあり、家族も本人の意向を叶えたいと、自宅での看取りを希望しました。
入院先の病院で訪問診療先を調整、退院前カンファレンスを実施し、2日後に退院。その2日後に自宅でお看取りをしました。家族も「最期に良い時間を過ごせた」と満足感で溢れていました。
このように病状が厳しい中でも、新規で訪問診療を利用することができます。自宅で生活する時間が残りわずかだとしても、訪問診療を利用しても問題ありません。
訪問診療は自宅で生活を続ける上で欠かせないものです。
メドアグリケアグループでは、在宅医療に力を入れており、訪問診療や訪問看護を実施しています。小児から看取りまで幅広く対応し、患者・家族の意思に寄り添うことを大切にしています。
「病院に通院するのが大変」「これからどんな風に生活していけばいいかわからない」など些細なことでも構いません。お気軽にお問い合わせください。